令和の虎526人目「1分間ボクシングフィットネスで意味のあるジムを広めたい」レポート

1.動画概要:

 第35代日本ボクシングスーパーウェルター級王者・細川貴之(39)による「1分間ボクシングフィットネスという超手軽さを武器に、意味のあるジムを広めたい」希望金額700万円中、1,610万円で完全EXCEED。

・今回の虎

 竹内亢一(株式会社Suneight 代表取締役)
 安藤功一郎(GA technologies (Thailand) RENOSY (Thailand) 代表取締役CEO)
 桑田龍征(NEW GENERATION GROUP オーナー)
 岩井良明(株式会社MONOLITH JAPAN 代表取締役)
 林尚弘(株式会社癒し~ぷ 代表 株式会社FCチャンネル 代表取締役)

・司会

 バン仲村(YouTuber 経営者 ケンカバトルロワイアル代表)

2.動画考察

・志願者の経歴から見るポテンシャル

 志願者は「ほっそん」のあだ名で呼ばれ、ブレイキングダウンで活躍している格闘家。既婚者で、子供が1人いる。
 高校在学中にプロボクサーとなり、16年間にわたるキャリアを積み重ねた。プロボクサー時代には、西日本新人王、日本スーパーウェルター級王者、東洋太平洋スーパーウェルター級王者、IBFアジアスーパーウェルター級王者のタイトルを獲得し、世界ランキングでも第3位となる。
 引退後はスポンサーの会社に勤務し、その後独立。現在は自営業者として株式会社SORIを経営を行い、バーやパーソナルジムの運営を行う一方、YouTuberとしても活動している。バーの運営による利益は約100万円で、TikTokのライブ配信の投げ銭で毎月約30万円程度の収益を得ている。
 その場合、「冒頭から志願者は滑舌の悪さが目立つ場面があった。これについて、ブレイキングダウンを通じて彼を知るバン仲村氏は「(志願者は)どうしても滑舌が悪い。ブレイキングダウンでも何を言ってるかわからないキャラクターだが、そこが人気になっている」と志願者を後押しした。

・志願内容と、その評価

 本プランは「1分間ボクシングフィットネスジムを新しく開設する」という内容で、希望形態は投資、希望金額は700万円。自己資金の300万円と併せて、資金はジムの創設費用にあてる。
 志願者が計画するジムは、1分間を全力で取り組むトレーニングを3セット行うことを基本とする。1分という短い時間であっても、集中して動けば非常に負荷が高く、有効な運動になる。初心者や、忙しい人々がターゲットで、志願者は短時間であるがゆえに継続しやすいとしている。ジムでは、ミット打ちや自走式ランニングマシンの利用など、さまざまな方法でトレーニングを提供する予定で、一回のセッションは実際には約10分で完了する。
 集客は個人のコネに加えて、大阪青年会議所(大阪JC)を活用した広報活動が挙げられた。大阪JCは青年経済人や事業者で構成された組織であり、現在は648名の現役会員と、卒業生である名誉会員や特別会員を含めると約2,751名で構成されている。志願者は、この大きな組織のネットワークを通じて告知を行う。
 料金設定は月額1万円で通い放題となり、顧客は週に2~3回ジムに通うことが想定されており、年商は2,040万円、利益は840万円を見込んでいる。
 志願者は、自身のジムに通っているSABO10氏を呼んで、実際のトレーニングがどういうものであるのかを示すためのデモンストレーションを行った。さらに、安藤氏との1分間マッチを披露した。志願者が「殴られ役」となり、安藤氏のパンチをすべて避けるという技術を見せた。これを見た桑田氏からは、過去「令和の虎」に出演したボクサー・菅野氏(※1)の放送と比較して「動きがはやい、さすがチャンピオン」と評価した。
 しかし、本プランには大きな問題があった。
 志願者が設定したリターンは、年利益(840万円)の10%を3年間支払うことになっている。これで計算すると、3年間のリターン合計は240万円となる。つまり本プランが成功しても、投資金額700万円に対して、460万円が未回収になるのである。
 また、岩井氏からは投資額の割合について「全体の7割を虎が支援するのであれば、35%の利益配分を受けるのが妥当なバランスだ」とした上で「年間利益が800万円程度であれば、仮に35%の配分を得たとしても、十分な収益性が見込めない」との見解を示した。これらについて志願者は「間違えました! リターンは再検討するが、(虎の)皆さんで考えてほしい…」と歯切れ悪く頭を下げた。
 1分間フィットネスというキャッチーなアイディアは虎たちからは概ね評価されたものの、竹内氏は「ビジネスプランが崩壊している」とコメントした。
 
※1…菅野氏とは、2019年に「令和の虎」に出演した志願者で、ボクシングで東京オリンピック出場を目指すプランを提示した。https://www.youtube.com/watch?v=Dce_jZfFLEY 

・志願者の人間性

 志願者は、本プランの目的を「格闘家のセカンドキャリアを支援すること」としている。本プランが成立した場合、収益面で苦しいプロボクサーをトレーナーとして雇用し、次のキャリアを提供することを目指している。
 また、虎からの数字に対しての指摘も自分の間違いや課題を素直に認める姿勢を見せた。バン仲村氏も志願者を「滑舌が悪く数字に弱いが、人に愛されるキャラ。人が困っていると、自分より相手に手を差し伸べる男である」と繰り返し、それが彼の魅力であるとした。
 デモンストレーションより同席したSABO10氏は、16歳のときに交通事故で半身麻痺や言語障害を負い、一生運動ができないと診断された。しかし、志願者のジムに2年間通い続けたことで回復を遂げ、現在では「障害を負っても頑張れる」というメッセージを前面に押し出しながら活動するアーティストとして、動画SNSで総再生回数5,000万回を達成するほどの影響力を持つまでになっている。SABO10氏は、自分をここまで回復させてくれた志願者を「偉大な存在」と称し、深い尊敬と感謝の気持ちを抱いていることを述べた。
 桑田氏は「パーソナルジムは人柄で成り立つ」として、SABO10氏の指導実績や周囲からの信頼が志願者の大きな強みとなるとした。

・虎が出資する意義、メリット

 リターン設定については再検討が必要であるが、プロスポーツ選手のセカンドキャリアを支援するという本プランは、社会的意義が高いといえる。
 また、SABO10氏のようにSNSで大きな影響力を持つ人物と関われることや、同様の人材を育成できる可能性があるという点で、志願者への期待は非常に高い。こうした実績を再び生み出せるという期待感は、支援する虎たちにとっても宣伝効果を含む多大なメリットをもたらすと考えられる。

3.まとめ

 本プランは、具体的な収益性について、誰かをパートナーをつけたほうがいいとされた。しかし、アイディアを評価した竹内氏から100万円、桑田氏はビジネスをともにやるとしてお助けだるまの提示条件となる10万円、人柄を評価した林氏からは100万円が提示された。安藤氏は、格闘家のセカンドキャリアを応援するとして700万円の全額出資を提示した。また岩井氏も人間性の評価に加えて経営者としての知恵を自分が出すとして700万円を提示した。EXCEEDの権利を得た志願者は安藤氏からの全額提示を受けた。
 志願者自身は「思いだけで700万も出るんですね」と驚きを隠せなかったが、SABO10氏や仲村氏が志願者を高く評価し、志願者が持つ信頼性と魅力を後押しする重要な要因となったと考えられる。
 また、そのような人を惹きつける志願者を事業の広告塔として活用し、志願者の人間性やストーリー性を活かし、それをプロモーションの軸として展開することで、通常のビジネスプランでは不足していた部分を補い、持続的な収益を生む事業へと発展させられる可能性が高いと虎たちは見ていたと思われる。


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