令和の虎576人目 重度障がい者の社長がつくる福祉サービス「ふくはぴ愛知」を広めたい レポート
1.動画概要
重度障がい者の経営者・松元拓也(35)による「重度障がい者の社長が開発した福祉系訪問サービス 情報検索マッチングシステムの利用率100%を目指したい」希望金額500万中、500万円で完全ALL。
・今回の虎
岩崎健人(株式会社喜創産業 代表)
島やん/島田隆史(株式会社お客様みなさまおかげさま 代表取締役)
桑田龍征(NEW GENERATION GROUP オーナー)
安藤功一郎(GA technologies (Thailand) RENOSY (Thailand) 代表取締役CEO)
林尚弘(株式会社癒し~ぷ 代表 株式会社FCチャンネル 代表取締役)
・司会
岩井良明(株式会社MONOLITH JAPAN 代表取締役)
2.動画考察
・志願者の経歴から見るポテンシャル
志願者は、先天性筋萎縮症を抱えながらも、2011年にウェブデザイン制作会社を起業し、7年間経営を続けた。その後、株式会社OLDROOKIEを設立。一人暮らしを始める中で、福祉業界のアナログな体制やヘルパー不足に直面し、同社で2023年11月に訪問系福祉サービス「ふくはぴ愛知」を立ち上げた。
看護師の婚約者とは訪問サービスを通じて出会い、右手の人差し指と親指のみが動く状態ながらも、前向きに生活しながら社会貢献を続けている。
・志願内容と、その評価
本プランは「自社サービスであるふくはぴ愛知の利用者を増やすために、本サービスをアプリ化する」という内容で、希望出資形態は融資、希望金額は500万円。自己資金100万円を含めた資金は、同サービスのアプリ版開発費にあてる。
「ふくはぴ愛知」は、訪問系福祉サービスを提供する事業者とサービスを必要とする利用者をつなぐマッチングサービスである。利用者から料金は徴収せず、広告収入を主な収益源として運営されている。しかし、現状ではスポンサーがついていないため、売上も立っていない。現在、事業者への営業は主に直接訪問で行われており、地道な活動を通じてサービスの利用拡大を図っている。全国展開を見据えつつも、まずは愛知県内で成功事例を積み上げることを目標としている。
ディスカッションの中では「ふくはぴ愛知」のアプリ開発について議論が交わされた。志願者は、利用者から寄せられるアプリ開発の要望が多いことを受け、WEBサービスとして展開している本サービスをアプリ化する方針であった。一方で、林氏と桑田氏はアプリ化の必要性や利用者からの声の実態に疑問を呈した。これを受けて志願者は、当面はWEBサービスの強化を優先し、その後アプリ化するという虎の提案を受け入れた。
またリターンも議論の対象となった。当初の計画では、スポンサー1社あたり月額1万円~3万円の収益を見込み、月間利益が50万円を超えた場合、出資者へ3%のリターンを提供する仕組みを提示していた。しかし、このリターン率では、出資額500万円を回収するまでに相当な年月を要する。一般的なリターン相場に基づけば、合計600万円の出資がある場合、利益の約45%をリターンとすることが妥当であるとの岩井氏の説明を受け、志願者はリターン率の変更を受け入れる意向を示した。
本プランでは、志願者が提示された課題を受け入れる柔軟性を示したことと、志願者自身が2023年7月以降にメディア露出を増やして認知度拡大に努めていることから、積極的な姿勢が評価された。また、治療の進展により病状の進行が抑えられたことを背景に「簡単には死なない」と前向きな姿勢を示しつつ、全身介護を必要とする中でも「生きている限り全力で営業を続ける」という意志が出資の後押しとなった。
3.まとめ
本プランでは、アプリ化については後日検討する方針となったが、参加した虎全員が100万円ずつ出資を提示し、完全ALLが成立した。
志願者は病状の悪化に直面しながらも「全力で営業を続ける」と語る前向きな姿勢は出資者に強い印象を与え、出資が成立した要因の一つとなったと考えられる。ただし、障がい者という背景が議論や出資判断に影響を与えたようにも感じられ、全体的に好意的な流れで進んだ印象が残った。
障がい者が志願者として出演する回は、多様性を示す場として意義がある一方、公正性と透明性が不可欠である。志願者の背景が評価に過度に影響しているように見える場合、視聴者に公平性への疑念を抱かせるリスクがある。そのため、議論では志願者の人間性に敬意を払いながらも、事業の実現性や収益性に焦点を当て、他の回と同様に一貫した基準で評価することが求められる。