令和の虎579人目 倉庫内作業を自動化し次世代スマート倉庫へ転換したい レポート
1.動画概要
日本在住のメキシコ人・マルコ トーレス(34)による「次世代スマート倉庫へ転換したい」 希望金額850万中、0円でNOTHING。
・今回の虎
ゆうじ社長/田中雄士(有限会社RANGER 代表取締役 株式会社ユージーエース 代表)
竹内亢一(株式会社Suneight 代表取締役)
トモハッピー(株式会社カードン 会長 株式会社ハッピー商店 社長)
佐々木貴史(株式会社りらいぶ 代表)
井口 智明(株式会社ディアローグホールディングス 代表取締役)
・司会
バン仲村(YouTuber 経営者 ケンカバトルロワイアル代表)
2.動画考察
・志願者の経歴から見るポテンシャル
志願者は、メキシコ出身。4歳のときに日本に移住し、その後は日本で育った。流暢な日本語を話す。大学在学中にTDCホテルミラコスタでアルバイトとして勤務し、その後、正社員に登用された。25歳で退職し、合同会社Luna Agencyを設立。その後、合同会社KAISOLを設立した。いずれも父親との共同出資により会社を運営しており、出資比率は50:50である。
・志願内容と、その評価
本プランは「LiDARセンサー(※1)を用いた倉庫管理システムを作成する」という内容で、希望出資形態は投資、希望金額は850万円。資金は会社の運転費用にあてる。
本システムは、LiDARセンサーを用いて物品の位置や移動履歴をリアルタイムで認識し、データベース化する機能を備える。これにより、移動した物品の在庫管理の手間を省くとともに、内引きや空き巣といった問題への対策も可能である。
導入対象は中小企業が中心であり、300坪程度の倉庫を保有する業者をターゲットとする。当初は導入実績を確保するため、価格を300万円に設定する。その後は600万円に引き上げる計画である。専用倉庫を建設するAmazonの方式では1,000万円を超える費用を必要とするため、既存倉庫に導入できる本システムはコスト面で優位性がある。現在、営業を開始しており、銀行から実家を抵当に入れて調達した3,000万円は、プロトタイプの開発費やセンサー購入費用にすべて消費され、会社の運転資金が不足している。志願者はこれ以上の銀行融資が困難なため、資金調達を求めている。
本システムの開発は、名古屋工業大学で電子工学の博士号を取得し、30年以上システムエンジニアとして活躍している志願者の父親が担当している。父親はソフトウェアとハードウェアの両方に精通し、特にLiDAR技術の分野では国内でも希少な専門性を持つ。現時点では父親一人に依存しているが、システムの標準化を進め、他のエンジニアが運用可能な状態に移行する計画である。
本プランについて志願者は、ニュースなどから倉庫管理システムの需要に注目したが、現場ニーズの把握が不十分なまま提案を進めている点において、佐々木氏からは「現場の声を重視すべき」、井口氏からは「現場を見ないアイディア先行は机上の空論に見える」との指摘が挙げられた。
そのため、志願者の提案が具体的な市場ニーズに基づいているのか、また受注の実現性が十分に検討されているのかが大きな疑問として残った。特に、過去の運転資金の使途を見る限り、計画が十分に精査されないまま資金を投入している印象が否めず、今回の提案も思いつきのアイディアを形にしようとしているだけではないかとの懸念を虎は持ち続けた。
また志願者が技術の有用性をアピールする一方で、現場の声を反映したリサーチが不足していたことについては、志願者自身も見込み客の具体的なニーズを把握できていないと認めており、この点がプランの信頼性を低下させた。
※1…LiDARセンサーとは、レーザー光を使って物体までの距離を計測する装置である。レーザー光を照射し、その反射光が戻ってくるまでの時間を測定することで、物体の位置や形状、距離を高精度に把握できる。主に自動運転車、ドローン、地形測量などで使用される。
3.まとめ
本プランは、全員が0円を提示したことでNOTHINGという結果に終わった。志願者の提案は、市場リサーチや現場の声を十分に反映しておらず、資金運用の不透明さや会社経営の不安定さが提案の信頼性を低下させた。父親の技術が高度な専門性を伴うものであるならば「令和の虎」出演による宣伝効果を得られたと考えられるため、虎の判断は合理的であるといえる。
「現場の声が不足している」と指摘された際に、自らの姿勢や意欲を明確に伝えることが重要だったと考えられる。例えば「現段階では、現場の具体的な声を十分に反映できていないことを自覚している。しかし、現場で働く方々が抱える課題を直接聞き、それをもとに提案内容を改善していく意志がある」と述べることで、改善に向けた積極的な姿勢をアピールできたと思われる。このように、志願者の意欲を強調することで、単なるアイディア先行ではなく、課題解決に真剣に向き合う人物であると虎に伝え、応援したいという印象を与えることが可能だったと言える。