令和の虎584人目 公衆が利用できるトイレを作り米子元町通り商店街を盛り上げたい レポート

1.動画概要

 スケートボードショップ経営・久代達也(45)による「公衆が利用できるトイレを作り、都市型スポーツイベントでたくさんのお客様で賑わう商店街を作りたい」 希望金額250万中、90万円でNOTHING。

・今回の虎

 孫 駿一郎(X CLINIC代表 医療法人社団 SUNRISE)
 ゆうじ社長/田中雄士(有限会社RANGER 代表取締役 株式会社ユージーエース 代表)
 桑田龍征(NEW GENERATION GROUP オーナー)
 トモハッピー(株式会社ハッピー商店 代表取締役社長)  
 井口 智明(株式会社ディアローグホールディングス 代表取締役)

・司会

 岩井良明(株式会社MONOLITH JAPAN 代表取締役)

2.動画考察

・志願者の経歴から見るポテンシャル

 志願者は15歳より、鳶職、養豚場、寿司屋においてアルバイトを経験し、17歳で京都の寿司屋に勤務した。19歳の時、兄が経営する自動車整備工場において、板金塗装を中心に整備および販売業務に従事。32歳の時、派遣社員として働く傍ら、副業としてスケートボードショップを開始し、33歳で同ショップを本業として開業した。昨年には、空き家管理、便利業、ストリートエンターテイメントの企画提案を行う事業を開始している。
 34歳の時、特発性血小板減少性紫斑病と診断されたが、3か月で寛解。37歳の時、スケートボードで転倒し、頭蓋骨および顔面を骨折し、脳挫傷を負った。手術により前頭葉右側の一部が欠損、顔面麻痺が後遺症として残っている。

・志願内容と、その評価

 本プランは「自分の事業を広げるために、商店街を活性化させる」という内容で、希望出資形態は融資、希望金額は250万円。資金は、商店街に誰でも入れるトイレの設置費にあてる。
 志願者は、商店街における空き物件の再活用を目的に、トイレ改修事業を計画している。この商店街はかつて商人の町として栄えたものの、現在は多くの店舗が閉店し、商店街全体が衰退している。一方で、若者による新規出店の動きも見られ、コーヒー店や古着屋などが開業している。しかし、空き物件の老朽化が進んでおり、特に汲み取り式トイレが物件を借りる際の大きな障壁となっている。これに着目した志願者は、空き物件のトイレを水洗式に改修し、より入居しやすい環境を整えることを考えついた。
 下水道への接続工事は専門業者に依頼するが、それ以外の作業は志願者自身がDIYで行い、コストを抑える。この改修によって物件の魅力を高め、賃貸収入の一部を改修費用として回収する。
 なお、このトイレ改修事業は単なる収益目的ではなく、商店街の活性化を目指す戦略の一環である。トイレの整備をきっかけに、人の流れを生み出すことで、商店街の賑わいを取り戻すことを目指している。最終的には、志願者が展開するスケートボードショップや便利業、板金業などの事業成長につなげる意向である。
 本プランは、志願者のプレゼンテーション能力と経営者としての資質という二つの観点から否定的な評価を受けた。
 志願者は、事業計画の説明において、冒頭から分かりにくい説明を続けた。このため、トモハッピー氏より「何も知らない人向けに、簡単に丁寧に説明してほしい」との要請を受けたものの、その後も質疑応答が噛み合わず、事業の全容や目的を理解するために放送時間が大幅に費やされた。前頭葉の一部が欠損していることが思考に影響しているのではないかとも懸念されたが、志願者自身は「もともとこのような性格である」と説明したため、ゆうじ氏からは「説明が下手すぎる」と批判された。
 また、志願者は、スケートボードショップを本業としていたが、本プランに注力するようになってから売上が低迷している。かつて年間売上1,000万円を超えていたものの、現在では利益がほぼ出ていない状況である。トイレ改修事業に多くの時間を費やしており、その結果、スケートボードショップの運営が疎かになっているのが理由であるが、この点について岩井氏からは「経営者として、本業が厳しくなれば本業に注力するべきであり、今の状況は適切とはいえない」との批判を受けた。収益の柱である本業を立て直さないままでは、融資返済の見通しが立たず、虎からも「現在の状況では返済能力に懸念がある」と厳しい評価を受けた。さらに、志願者は年利と金利の違いを理解しておらず、融資条件について誤った認識を持っていたことが明らかとなった。この点は、資金管理能力の欠如を示すものであり、虎たちの不安を助長する要因となった。

・志願者の人間性

 志願者は現在もスケートボードに乗り、小学生から高校生までを対象に、毎週スケートボードの体験会を実施している。話し方はフランクであり、収録の2週間前には「若い人にいいところを見せようと思い、スケボーで階段ジャンプに挑戦したものの失敗して頭を打った」というエピソードを披露し、虎たちの笑いを誘うとともに、親しみやすい印象を与えていた。受け答えには問題が見られるものの、その人柄について桑田氏は「自分が子どもだったら、街に一人はいてほしい人物。人気者だと思う」と評価している。

3.まとめ

 本プランに対しては、街で親しみやすい志願者の人間性に共感したゆうじ氏が10万円、桑田氏が80万円を提示した。しかし、返済能力に対する懸念が払拭できず、他の虎たちは出資を見送り、最終的に結果はNOTHINGとなった。
 志願者は、返済能力に対する不安を認識したうえで「この商店街を再び賑わいのある場所にしたい」というビジョンを示すべきだった。商店街を「若者のチャレンジの場」としてのポテンシャルを強調し、地域経済への貢献を具体的に示すことで、虎たちの社会貢献心に訴えれば、結果も異なっていたかもしれない。

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