令和の虎581人目 少年院上がりの医師が自伝的小説を出版し全国の少年院に届けたい レポート
1.動画概要
少年院あがりの医師・水野宅郎(46)による「少年院あがりの医師が自伝的小説を自費出版し、同じ境遇の人の道標になりたい 」 希望金額300万中、 50万円でNOTHING。
・今回の虎
青笹 寛史/あお(アズール株式会社 代表 動画編集CAMP 主催)
平出心(プロ競馬予想屋 『予想屋マスター』)
トモハッピー(株式会社ハッピー商店 代表取締役社長)
竹内亢一(株式会社Suneight 代表取締役)
林尚弘(株式会社癒し~ぷ 代表 株式会社FCチャンネル 代表取締役)
・司会
バン仲村(YouTuber 経営者 ケンカバトルロワイアル代表)
2.動画考察
・志願者の経歴から見るポテンシャル
志願者は、18歳の時に自動販売機荒らしで逮捕され、その際に覚醒剤の使用が発覚し、少年院に収容された。出院後、3年間の浪人生活を経て金沢医科大学に入学、29歳で医師免許を取得。2017年に実家が経営する水野クリニックを継承した。
・志願内容と、その評価
本プランは「幻冬舎メディアコンサルティングから、自費出版で本を出す」という内容で、希望出資形態は投資、希望金額は300万円。自費出版には総額で1,000万円を必要とし、内500万円は自己資金、200万円はクラウドファンディングでまかなっている。虎からの資金は出版費用の残額にあてる。
志願者は自己資金を有しているものの、少年院にいる若者たちにこの本を届ける方法を模索していた。そうした中「受験生版TF」を目にし、そこで東大を目指す少年院出身者が的確なアドバイスを受けている様子を知った。この取り組みに可能性を感じ、より多くの若者に本を届けるためには、影響力のある虎と共に進めることが必要だと考え、志願に至った。
本プランでは、8万部を売り上げなければ費用を回収できないという大きな問題がある。全国の少年院は80箇所、収容人数は約6,000人であり、仮に全員が購入したとしても8万部には到底届かない。また、志願者が知名度のある人物ではないこともあり、ターゲット層以外への到達も困難である。そして、ディスカッションの中でその解決策を見つけることができなかった。さらに竹内氏は、志願者が掲げる販売目標の20万部が仮に達成できたとしても、設定された印税の2.5%(上限付き)というリターン条件では、収益は約450万円にとどまり、投資対効果が極めて低いことも問題視した。
これらの状況を踏まえ、志願者が十分な自己資金を有していることを考慮し、本プランは自己資金のみで事業を進めるべきと結論づけられた。
・志願者の人間性
志願者が非行に走った原因は家庭環境ではなく、成績低下により逃避する形で悪い友人と関わるようになったことにある。高校は希望と異なる学校に入学したが、半年で無期停学となり、最終的に退学した。少年院収容中に読んだ本から影響を受けたため、講演会よりも本を通じて心を開いてもらいたいと考えている。
志願者は高校中退後、少年院および鑑別所に2度収容された。収容中に医師になる夢を思い出し、卒院後、3年間の努力の末に補欠合格で医学部に入学した。医師になってからも自信は持てなかったが、コロナ禍で年間6,000人の患者を診療し、社会に認められたと感じたことから、自費出版を決意した。
しかし虎は、志願者の更生支援に対する熱意を感じとることは出来ず、志願者の自己顕示欲が強いとみなした。トモハッピー氏は「虎を自身の踏み台として利用しようとしている」と批判し、林氏は「虎の支援を安価に活用しようとしている」とみなした。総じて、虎からは志願者の人間性について共感を得ることができなかった。
これらの指摘を受け、志願者自身も自分本位の考え方になっていたことを認識し、反省の意を示した。
3.まとめ
本プランは、費用の回収が困難であること、また志願者が少年院にいる子どもたちにメッセージを届ける手段として、出版以外の方法があるとの判断から支持は得られなかった。あお氏が温情的に50万円を出したものの、他の虎は全員0円と表明し、NOTHINGとなった。
志願者は、虎も自身と同様に、ビジネスよりも少年院出身の子どもたちの支援に強い関心を持っていると考えていた可能性がある。その認識のずれがプランの評価に影響を及ぼしたと考えられる。志願者は事前に「受験生版TF」と「本編」の違いを十分に分析し「令和の虎」の特性をより深く理解するべきであった。
また、提案を投資ではなく融資として「自己資金があるため必ず返済できる」と明確に伝え、社会的意義のあるプランであることを示し、マーケティングへの協力を求めるなど、虎に対して具体的な関与の方法を提案していれば、より前向きな議論につながったと考えられる。