令和の虎570人目 インバウンド向けの観光予約システムの認知を高めたい レポート

1.動画概要

 IT企業代表・平野哲也(61)による「インバウンド向け観光予約システムの認知を高め、福岡と佐賀の活性化に貢献したい」 希望金額250万中、0円でNOTHING。

・今回の虎

 ゆうじ社長/田中雄士(有限会社RANGER 代表取締役 株式会社ユージーエース 代表)
 山澤礼明(株式会社FIT PLACE 代表取締役社長 株式会社REYS代表取締役社長)
 遠藤悠記(株式会社えん 代表)
 井口智明(株式会社ディアローグホールディングス 代表取締役)
 林尚弘(株式会社癒し~ぷ 代表 株式会社FCチャンネル 代表取締役)

・司会

 バン仲村(YouTuber 経営者 ケンカバトルロワイアル代表)

2.動画考察

・志願者の経歴から見るポテンシャル

 志願者は九州産業大学を卒業後、薬品会社に就職。その後、IT会社を経営するに至り、35年間コンピュータ関係の営業を行っている。また、福岡や大阪を中心に民泊事業も手掛けた経験がある。民泊運営では、福岡、大阪、長崎で合計24件の施設を管理した実績があるものの、市場変化により5年前に終了している。

・志願内容と、その評価

 本プランは「自社で開発した民泊施設を予約するシステムを普及させる」という内容で、希望出資形態は投資、希望金額は250万円。
 このシステムは民泊施設に設置されるパンフレットに掲載されているQRコードを介して予約を受け付ける形式で、収益は予約成立時に発生する手数料から得る仕組みとなっている。開発はおおよそ8割まで進んでいる。
 しかしながら、このプランには多くの課題があり、志願者がこれに対する明確な回答を持たなかったことから、浅いプランという評価を受けた。
 まず、外国人観光客の多くは事前にオンラインで情報収集を行うため、現地の民泊施設でパンフレットを用いた予約が広く利用されるかには疑問が残る。
 また、SNSを活用して認知度を高めるという計画があるが、志願者自身がSNSの運用経験を持たない点がリスクと捉えられた。特に、志願者は福岡の観光地域に関する知識が不足しているとみられたこともあり、SNSに頼った集客は効果が見込めないと考えられた。
 志願者は、このシステムを200件の民泊施設に設置し、1日あたり40組の利用を想定している。しかし、これは理想的な条件下での試算に過ぎず、仮に達成したとしても、虎に対する月間リターンは約10万円程度にとどまると見込まれる。この収益規模では投資価値が十分にあるとは評価されなかった。

・志願者の人間性

 志願者の言動には、他責思考や主体性の不足、経営者としての能力不足が見られ、それが虎からの信頼を損なう結果に繋がった。
 まず、現在の会社では、社員への給与未払いや、納品後の未入金といった深刻な問題が発生している。特に納品後の未入金問題について、志願者は「担当者に任せていたので見えなかった」と説明したが、この発言は問題の責任を担当者に転嫁しているようにも受け取られる上、経営者として自ら状況を把握し、迅速に対処する姿勢が欠如している印象を与えた。さらに、この問題が会社の経済状況を悪化させていることも明らかとなり、志願者の経営手腕や責任感に対して虎が強い不安を抱く結果となった。
 さらに事業計画に関連して「福岡の観光地については社内の人材に任せる」と述べた点も問題視された。一見すると合理的な分業のように思えるが、提案の中心人物である志願者自身が観光市場に精通していないことが明らかになったため、虎からは「自らが事業を牽引する姿勢に欠けている」と見られ、志願者自身の事業に対する主体性や熱意に疑問を抱かせた。
 また、質疑応答の終盤における「今回の出演は水上イベントの集客提案を目的としていたが、協議の中で方向性が変わった」という発言が、志願者の人間性に対して最も深刻な疑念を呼び起こすものとなった。この発言は本プランが急ごしらえであることを示唆し、真剣に議論を重ねてきた虎に対して不誠実な印象を与えた。この場面では、虎から「バカにされた気分だ」「卑怯だ」といった厳しい批判が寄せられた。
 これらの点から、志願者の人間性については、責任感や主体性、誠実さに欠ける部分が目立ち、虎からの信頼を得るには至らなかった。

・出資する意義、メリット

 本プランは、現代の観光客の行動様式に適しておらず、計画の内容や収益モデルから見ても成功の可能性が極めて低い。また、投資という形態にもかかわらず、リターンが低いだけでなく、志願者の他責的な姿勢や主体性の欠如、計画の浅さが志願者への信頼を損なっている。これらの理由から、出資するメリットは見いだせないものと考えられる。 

3.まとめ

 本プランは最終ジャッジ前に、虎の全員が出資意思を見せなかったため、NOTHINGとなった。
 今回は、事前の準備不足が提案の説得力を欠く大きな要因となり、さらに質疑応答の終盤での発言が決定的な信頼喪失を招いたことが明らかである。特に注目すべきは、志願者が当初考えていた計画が頓挫した後の対応である。志願者は「もともとのプランが変更された」と明かしたが、この状況下で、出演を辞退する選択肢は検討されなかったのだろうか。準備不足の状態で出演した背景には、志願者が抱える経営状況の厳しさや、プラン成功への切迫感が影響していた可能性が考えられる。
 経営者にとって事業資金の調達は重要な課題であり、出演という選択肢に賭けざるを得ない状況に追い込まれることもあることがわかる内容だった。

いいなと思ったら応援しよう!