令和の虎524人目「スタンダップコメディアンとしてコメディ界のメジャーリーガーになりたい」レポート

1.動画概要:

 Forbesの30UNDER30(※1)に選出されたスタンダップコメディアン(※2)・Saku Yanagawa(31)による「アメリカでスタンダップコメディアンとして、日本人初のコメディ界のメジャーリーガーになる」希望金額1,000万円中、1,800万円でEXCEED。

 今回参加の虎たち
 ・安藤功一郎(GA technologies (Thailand) RENOSY (Thailand) 代表取締役CEO)
 ・竹内亢一(株式会社Suneight 代表取締役)
 ・桑田龍征(NEW GENERATION GROUP オーナー)
 ・林尚弘(株式会社癒し~ぷ代表 株式会社FCチャンネル 代表取締役)
 ・岩井良明(株式会社MONOLITH JAPAN 代表取締役)
 ・司会:バン中村(YouTuber 経営者 ケンカバトルロワイアル代表)

※1…30UNDER30とは、Forbesが発表するランキングで、30歳未満で顕著な成功や影響力を持つ人物を選出したリスト。その業界での評価や知名度を大きく向上させるだけでなく、次世代のリーダーとして広く認知されるステータスとなる。
※2…スタンダップコメディアンとは、観客の前で主に一人で立ち、話術を使って笑いを提供するエンターテイナー。

2.動画考察

・志願者の経歴から見るポテンシャル

 志願者は、アメリカ・シカゴを拠点に活動するスタンダップコメディアンである。現在は結婚しており、4歳の娘がいる。家族は日本に住んでいるが、志願者はアメリカで単身生活を送っている。
 幼少期からメジャーリーガーを目指していたが、怪我によりその夢を断念する。大学生時代に「笑ってコラえて!」で日本人のスタンダップコメディアンがニューヨークで活躍する様子を見て、翌日にはニューヨークへ飛び、コメディアンとして活動を始めた。
 現在はキャリア11年目で、シアトル、ボストン、カリフォルニアの大会でファイナリストとなるなど、その実績を重ねている。また、Forbesの「30UNDER30」にも選出されている。日本ではフジロックの司会を務めたこともある。 
 志願者は、岩井氏がFUMI氏(※3)からの紹介を受け、今回の志願に参加した。FUMI氏と志願者は、アメリカでの知人のつながりから関係を持っているが、資本関係はない。また志願者は、株元氏(※4)の後輩でもある。
 デーブ・スペクター氏も志願者を推薦している。デーブ氏は、志願者に毎日10通ほどメールを送り、新しいダジャレについて意見を求めているが、志願者は「それらはだいたい面白くない」とした。

※3…FUMI氏は、アメリカで抹茶ビジネスを展開する企業「Terra Matcha」の代表取締役。
※4…WEBコンサルティング業を中心に事情を展開するStockSun株式会社の創立者。

・志願内容と、その評価

 本プランは「Just For Laughs(以下、JFL)で勝ち上がるために必要となる、ライブアルバムを作る」という内容で、希望形態は投資、希望金額は400万円。資金はライブアルバムの制作費用のほか、2025年夏に行われる北米最大のコメディフェスティバル「JFL」に出場するまでの活動費にあてる。
 JFLに出場するにあたり、出場条件の一つである「SNSや動画配信プラットフォームなどでの人気」をクリアするためにライブアルバムを作成する。これは、観客の前でパフォーマンスした音源を収録したもので、SpotifyやApple Musicでの配信を予定している。また、グラミー賞にもアルバム部門があるように、物理的なアルバムとしてのリリースすることに意味があるため、この制作費は必須といえる。
 JFLはアメリカ版のM-1グランプリとも言える大会であり、出演が決まればコメディアンとしてのキャリアが大きく飛躍する機会となる。具体的にはNBC、CBSなどのテレビ番組への出演や、マリソンスクエアガーデンのような1000人規模の劇場での単独ショーが行えるようになる。またオスカー賞や、グラミー賞の司会はスタンダップコメディアンが採用されている。
 現時点での目標はネットフリックスとの契約であり、これが実現できれば最低5,000万円の契約金がはいるようになる。実際にデイブ・シャペル氏(※5)はネットフリックススペシャル(60分番組)1本のギャラで、35億4,700万円を得ている。
 スタンダップコメディアンの多くはフリーランスとして活動し、日本のような事務所所属という雇用形態がない。そのため、ほとんどのコメディアンは、売れるまでの間、本職を持ちながら舞台に立っている。しかし、志願者はビザの制約で副業ができず、ツアーを行ったとしても、交通費や宿泊費を自費で賄う必要があり、1回の舞台のギャラは50ドル程度である。そのため、既に両親から800万円の借金をしており、現在も経済的に活動が難しい状況になっている。
 志願者は日本人の視点でアメリカ社会の矛盾をユーモアとして取り上げる芸風で、コロナ禍ではアジアに対するヘイト感情が大きくなった中、それを笑いに変えることでステージ上でのスタンディングオベーションを獲得した経験がある。
 また、志願者はすでに6年連続でJFLの最終オーディションに進出しており、これはアメリカ全土のコメディアン4万人の中から上位40人に選ばれていることになる。このような実績から、コメディアンの質は高く評価され、本プランにおけるアルバム制作費の必要性も認められた。

※5…デイブ・シャペルとは、アメリカを代表するスタンダップコメディアンで、コメディ界で最も影響力のある人物の一人。

・志願者の人間性

 志願者はアメリカで11年活動を続ける中で、日本人としてのイメージを変えたいという思いがある。世界的にイメージされている「日本人は面白くない」という認識にショックを受け、それを覆すことを目指している。
 一方で、良い舞台を作りたいというクリエイターとしてのマインドと、経済的な事情と、日本で子育てを任せきりにしている妻に対して、スタンだっぷコメディアンとして成功しなければならないというプレッシャーの中で活動を続けている。
 2023年1月に日本の週刊誌「文春」によって、志願者の不倫スキャンダルが報じられた。この報道では、志願者が4人の女性と交際していたとされた。
 彼自身は一部報道内容を否定し「事実でない部分も含まれている」と主張しているが、日米をまたにかけた不倫そのものは事実であった。報道を受けた当時、志願者は妻から「売れる前に挫けやがって。絶対売れろよ」と、批判めいた内容の裏にも「だからこそ結果を出せ」という強い期待が隠されているものとされた。
 日本ではスキャンダルが芸能活動に与える影響が大きいため、この報道は日本国内での活動にはマイナスの影響を与える可能性がある。しかし、アメリカではこうした不倫問題は夫婦間の問題として認識されることが多く、特に業界内での評判や仕事に直接影響することはなかった。
 この経験を機に、志願者はスキャンダルをコメディのネタに活用している。例えば「文春砲」を例にしたジョークとして「シカゴでは2分間に1人が撃たれる重犯罪の街。3回銃声を聞いて地面に伏せた経験があるが、最も伏せ続けたのは文春砲を受けた2週間だった」というネタを披露した。ただし、このネタについては「アメリカでは通じない」として、日本的な文脈の中でのみ受け入れられる性質のものであることをつけ加えた。
 このエピソードは、一見すると真面目にコメディに向き合う志願者の姿勢と矛盾するようにも見えるが、虎たちは「芸の肥やし」としてむしろ肯定的に捉えた。また、Forbesへの掲載やJFLでのファイナリスト実績といった華々しい成果以上に「文春に取り上げられるほど注目されている」という事実自体を、志願者の話題性や注目度の高さの証拠として評価する意見もあった。

・虎が出資する意義、メリット

 志願者が提示したリターンは、彼がスタンダップコメディアンとして大きな成功を収めた場合に、収益の一部を虎に還元する形で、毎年コメディ活動で得た収入の15%を配当として提供し、最大で5,000万円までと設定している。
 この配当について、志願者が提案した今回のリターンを「第1プラン」とし、これに参加した虎は、今後志願者が提示する新たな「第2プラン」への参加資格を得る可能性が示唆された。
 この提案は、志願者がスタンダップコメディアンとしての地位を確立することで初めて実現するため、投資にはリスクが伴うが、大きな成功を収めた場合には非常に大きいリターンが期待できる。
 また世界的に有名なスターとの繋がりが期待できる点でもメリットは大きいものと考えられる。

3.まとめ

 志願者の実績、またリターンの大きさから本プランは各虎が200万円ずつ、岩井氏は1,000万円の全出しを決定し、EXCEEDとなった。志願者は600万円を岩井氏から、100万円ずつを4人の虎から受け取った。
 文春に関する話題が評価された背景には、視聴者の関心を引きつけるための演出意図が感じられる。スキャンダルを通じて志願者の人間的な弱さや裏側を描き出し、番組のエンターテインメント性を高める狙いがあると考えられる。これらは虎の国際感覚の欠如というよりも、番組全体の盛り上がりを優先した結果と見るべきだろう。


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