限界潜水と飽和潜水

知床沖の観光船沈没現場で、「飽和潜水」が行われました。飽和潜水は、活動を行う深度で体内に取り込みうる気体を予め取り込んでおいて、その深度のままで活動する潜水方法です。急に気圧が下がると、血液中に溶けうる気体の量が減るので、気泡になってしまいますから、気泡にならず体外に排出できるよう、海面の気圧まで何時間もかけて緩やかに減圧していきます。

また、活動する深度の気圧に合わせた気体を呼吸に使用しますが、単純に空気を圧縮しただけだと酸素の分圧が高くなりすぎて「酸素酔い」の状態になってしまいますし、高圧の窒素でも「窒素酔い」するので窒素は使わず、酸素分圧に配慮したヘリウムと酸素の混合気体を使用します。

一方、一般的なスクーバダイビングは、血液中にある程度の気体が溶け込んでも、水面で気泡にならない限界の水深と時間のなかで潜水するので、「限界潜水」と呼ばれています。この場合は、通常の空気を圧縮してタンクに詰めて使用します。

どれくらいの酸素分圧で酸素酔いになるのか?
私がスクーバダイビングをやっていたのは30年ほど前で、その頃は米海軍の基準に準拠していたため、0.6気圧と教わっていました。しかし、突発性難聴で高圧酸素療法を受けたとき、2気圧の純酸素の中で何ともなかったので、不思議でした。インターネットで調べてみたら、現在は2〜3気圧を超えるとヤバいらしいです。
なお、限界潜水では、水面に浮上しても、血液中にはある程度の気体が溶けたままなので、次の潜水まで数時間のインターバルが必要だったり、飛行機に乗るには(地上より気圧が下がるので)数日のインターバルが必要だったりします。飽和潜水では気圧が変わらないので、気泡を気にするインターバルは不要なのです。

もし、限界潜水で水深や時間を超えてしまい、水面で血液中に気泡ができてしまったら…いわゆる「潜水病」というやつです。
その場合は、高圧酸素チャンバーで血液中の気泡が消えるまで気圧を高めて、そこからゆっくり気圧を下げることで、気泡にならずに気体を排出できるように治療します。
こういった高圧酸素チャンバーは、全国あちこちに設置されていて、一人用から数人同時に入れる大型のものまで、いろいろなサイズのものがあります。

潜水病ではなく高圧酸素チャンバーに入ったのは貴重な体験だと思っています。

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