下の口が嫌だと言っている
まず足をもいだ裸体の着せ替え人形をイメージして欲しい。
そしてそれを地面に垂直に立たせようとするのをイメージして欲しい。
そうすると地面に接触する部分があると思う。
その部分を人体の「底面」と呼ぶことにしよう。
そこが腫れた。
いや、もはや腫れ渡ったと言っていい。
助けてくれ――――――!!!!!!!!!!
(お察しであろうがこの記事は「痛い×下い」なので注意だ
あと女陰の話だが別にお色気要素もない)
事の始まりは三日前、底面に違和感を感じた。
今思えばアルバイト疲れでそのまま寝落ちし、次の日が休日で夜に久々に風呂をためて洗うからいいかと思ってパンツを変えなかったのが悪かったのだろう。献血や寝不足も重なって免疫も落ちていたのだろう。しかもその晩に違和感を覚えながらも下の毛を剃ったのが、粘膜にとどめを刺したのだ。(剃るのは清潔を保つ目的だったのに本末転倒だ)
昨日の時点で病院に行けばよかったのだが、私はオロナインを過信していたがために、地獄を見ることになった。
今日一日を詳細に書くとしよう。
朝起きた瞬間から底面が激痛で、毎週の癒しのモルカーすら気もそぞろに観る羽目になった。本モル(本物のモルモット)が出てきて可愛いね…。
痛みをわかるように伝えると、女性なら割れ目に両面ガムテープが張られたかのように強く乾燥し引きつっていたといえばわかるだろうか。男性にもわかるよう単純な痛みの形だけで言えば、目の粗い紙やすりで底面を14回ほど擦られた痛みだ。激痛である。
トイレすらまともに行けない。座れば痛い、腹部に力を加えるだけでも痛い、腰が90度を超えると千切られるように痛い。そもそも外気に触れただけで引き攣れて涙が出るほど痛い始末だ。20秒と座っていられない。痛みもそうだが消化器官の末端に残る不快感も相まって非常に最悪な一日の幕開けだった。
常に痛いというか痛みを感じにくい体勢はあるのだが、立ったり座ったりするときに一気に襲ってきて轢かれたヒキガエルのように呻くことになる。
しかし今日は自転車で外出する予定があった。
自転車に乗るときの体勢は、意外と底面がダイレクトにサドルに当たるわけではないので思っていたよりは被害を受けずに済んだ。しかし、痛いのは変わりない。私の思考はどんどん痛みに侵食されていった。
腹痛をこらえているときなど、なぜ人は下半身のトラブルを抱えているときに顔が凛々しくなるのであろう。幼児や猫もそうだ。
自転車を走らせている間、私の表情はどんどん凛々しくなっていき、最終的に阿部寛くらいの面立ちになった。瞼なんか二重を通り越して三重くらいあった。ギンギンである。
当然用事の最中も90%くらい下半身のことしか考えられない。
帰りの自転車を走らす脳内は脳内メーカーだったら「痛」で埋め尽くされており、息は荒くなった。
あまりの痛さに走りながら死にかけの洗濯機のようなトーンで「ぃだだだだだだだだだだだだ…」と口に出して繰り返していた。とてもじゃないけれど声まで出さないと壊れてしまいそうなぐらい痛かった。信号待ちで止まるたびに「がああ」と言っていた。世間の目よりなにより股間が痛い。
当然そのまま婦人科に直行した。
激痛を耐え、辿り着いた婦人科で問診を受ける。そして、覚悟はしていたもののやはり向かわされた時は気持ちが揺らぐもの…
スペースキャット椅子。
未経験の人には何のことかわからないと思う。この呼称も私が勝手にそう呼んでいるだけだ。
婦人科には女性器をよく診るため、地上約70cmのところでM字開脚を固定させるための椅子があるのだ。形状はググってほしい。特殊な椅子なので、婦人科に縁がない人は見ることはなかなかないだろう。あの椅子を所持しているとすれば医者か変態、あるいは医者かつ変態だ。
患者は下半身を全て脱いだうえでこの椅子に乗り、足かっぴらき機で足をかっぴらくことになる。姿勢としてはかなり間抜けな状態だ。カーテンで医者の顔と対面しないよう配慮されているが、それはそれで怖い。おおむねこれに乗るとき、恥ずかしさ?情けなさ?不安?複雑な感情が飛来しスペースキャット顔になる。よって私はこれをスペースキャット椅子と呼んでいる。
そして腹をくくった私は医者の眼前に底面を見せつけた。
「うわーこれ痛いでしょ」若干引いている声がした。引くな!
私はしわくちゃの顔で「いだいでず」と答えた。
「点滴打とう」
点滴!!!!????
正直点滴まで行くとは思っていなかったので非常に驚いた。でも兎にも角にも死ぬほど痛かったので、してもらえるなら全部やってほしかった。スペースキャット椅子に乗った女に怖いものなど何もない。
しかし点滴を受けながら、病院の天井を見ていると、情けなさに呆然としてきた。無職で、部屋が汚くて、底面が腫れあがってて、足をかっぴらいて下半身を人前に晒し、点滴を受けながら天井を見ているこの現状…。
今日一日痛みに苛まれたからか、体を休めているうちに強い眠気に襲われた。婦人科医の薬の説明を遠い意識で聞きながら、「婦人科医は女性器のことを『お下』って言うんだなあ…お上品ね…」と思っていた。
帰るころには度重なる情けなさで完全に毒気を抜かれてしまい、ぴえん顔と(´・ω・`)の中間のような顔になっていた。
しかし帰りも自転車なのである。
帰る道をいつもと違う道にしてしまい、Googleマップで確認するため立ち止まるたびにうめき声を上げているうちに、ぴえん顔から凛々しさを取り戻し、五分も乗った頃には阿部寛nextSTAGEといった面立ちになっていた。もはや瞼は四重だった。
女性になりたがってる男性のツイートかなんかを見たことを思い出し、男性器と交換でいますぐ交換して欲しいという妄想までした。今は痛いが治れば普通に使えるのだからジャンク品の様なものだ。
そして今に至る。
若干和らいできたとは思うが当然今も激痛が続いている。
パンツを替え忘れることだけは二度としないと誓おう。
阿部寛の名誉のためにも。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?