【ネタバレ】セララバアドに冬に行く
↑初来店+夏の記事はこちら
2022年夏、未知の体験を与えてくれたセララバアド。夏の記事でも書いたが、私はどうしても冬に出るメニューが気になっていた。
同行者は前回と同じTwitterフォロワーのあげさん。好奇心の優先度が大体私と同じくらいなので非常に助かる方だ。今回は2人厨房の見えるカウンターに通され、調理工程にも興味があった我々にとっては僥倖であった。
※以下、冬メニューの写真等が載るため、何も知らない状態で訪れたい方は今ブラウザバック推奨
枝
そういえば私は、冬メニューに関しては一つだけネタバレを食らっていた。
「枝が出る」ということだ。
夏も枝が出た。そういえばナクヤムパンリエッタさんの記事(おそらく春メニュー)でも枝は出ていた。
枝は確定なのか…?
四季折々の枝が…出るのか?
出た。
出たというか、もはや席に着いて間も無く枝のセッティングが始まっていたので、席に運ばれてくる前に「来る!」となっていた。
皆さんは人生で「枝が来る!」となったことはあるだろうか?私は無い。
写真を見て貰えばわかると思うが、この雪のような綿のようなふわふわがあると思う。この内食べられるふわふわと食べられないふわふわがあるのだ。シェフがどれが食べられるふわふわか教えてくれるのだが、自信がなくて2回確認した。他の席でも2回確認していた。わかる。
ちなみに厨房では大きなふわふわの雲のようなものをちぎってはコンパクトに丸め、枝に挿すという、とってもメルヘンな作業が行われていた。おそらのケーキ屋さんだ!
あと手前に枝型のスナックも挿してあり、これはまるごと食べられるのだが、巻いてあるものが何かわからない。おいしい。何?夏は生ハムだとわかったが、今回はわからない。なんか「背脂のなんちゃら」みたいなことを言っていたと思う。風味は肉、肉の脂だ。だが肉にしては色が薄いし、イカにしては食感が肉だし、
………いや、肉の食感とはなんだ?肉…とは?おいしい。何?おいしい…肉?肉の気配のする、とてもやわらかい、イカ…?
取り止めがなくなってきた。次に行こう。
彼の声を聞け
話はコースから脱線するが、セララバアドはメニューが出てくるたびにシェフが内容やコンセプトを説明してくれる。しかしシェフは毎食説明するからだろう。大変に口がこなれており、聞き取れない箇所がまあある。英語の成績60点の奴が聞く英語のリスニング試験と同じくらいの難度だと思う。リピートは求めてはいけない。私が60点なのが悪いのだ。
厨房では、料理を一斉に出すため、5、6人のシェフ達が押し合い圧し合い上げたり下げたり盛ったりかけたり拭いたりとても忙しくしている。その中で茶色いモコモコが溢れているカップをしまったり、丸太を出したり、石を並べたり、肌色のチューブが繋がった長い筒を一心不乱にシェイクしている。
調理…?
紅に染まったその毛玉
通された席からは厨房がよく見えるのは前述の通りだが、「そう見えたがそのまま出てくるとは思わなかった」と思うこともままあった。代表的なのはこれだ。
「毛玉のようなものにとても赤い粉をふるっているように見えるな」とは思っていたが、毛玉のようなものにとても赤い粉をふるっているものが出てくるとは思わなかった。これは私の油断だ。夏で何を学んだのか。近いのだからそりゃ見たまま来るとは頭じゃ分かっていたのに、近くで見たら知ってる形の料理であれと願っていたのだ。
なぁにこれ?と思ってポップアップカード状のメニューで見てみると「毛玉」らしかった。
「毛玉」でいいのか。
早く食べるようにと伝えられ、一気に口に放り込む。
美味しいことはまず大前提に置いて欲しい。
冷た しょっぱ すっぱ 甘 すっぱ?甘み?ベビースターラーメン…? すっぱ クシャッ は?
冷たさ、そして酸味と甘さとしょっぱみがお互いを吞み合うことなく味蕾に押し寄せ、ベビースターラーメンがその急流に呑まれていくと言う感じの味がした。
信じてください
少女の瞳
何だ。
厨房で見た石が置かれており、中心になんだこれは。
何やらイカの煎餅らしい。中心になんだこれは。
何やら少女漫画の瞳用のコンタクトみたいなのが載っている。なんだこれは。
なんだこれは。と書き連ねてるが別に解決はしない。
一口で摘んで口に放るタイプの料理だ。
おいし。クリームコロッケ…?歯応えがあるものがあって、クリームコロッケ………クリームコロッケなわけなくない?このビジュアルのものが………海鮮の気配………サクってして………
わかんないけど、おいしい。
セララバアドに来ている人間が金持ちでインテリな語彙を持っているとは限らない。学んでほしい。ここで。
【休憩】語彙を失った感想タイム
一個一個言ってったらキリがないかも!と思い始めた。
バーーッと画像と共に言ってくタイム突入!
FEVER♪┌(★∀・)┘♪└(★o☆)┐♪┌(・∀☆)┘FEVER♪
※出てきた順番ではありません
庶民の人格 ステイ!ステイ!
リゾットが美味すぎてヤバい。
このリゾット、美味すぎる。
ご覧ください。
こちら蟹の含まれたリゾットとのこと。
これがちょっと美味すぎる。
私がおすまし取り繕った庶民の人格(バレバレだった)をひと掬いごとにむしり取っていく。
スープ皿の最後のスプーンで掬い取れるギリギリまで啜ろうと、顔は澄ましたまま、手首はムキムキの格闘を試みていた。掬い取れない少しのスープが惜しかった。
今この瞬間、3秒でいい、ここが吉野家になればいいと思った。
スープ皿に口をつけて上に掲げ、一滴残らず啜りたい。
もちろん私は大人なので、少しのスープ(といっても完食したと取るに十分すぎる空き具合)を余したまま、食器を見送った。給仕の方に回収されていく器を大変名残惜しそうに見送った。(大人の振る舞いではない)
なんだあのリゾット、猫で言うちゅ〜るか?
一人一皿一畑
木片の閉じ込められたクリアな食器(信じて欲しい)が厨房のカウンターに並び、シェフが盛り付けに取り掛かった。押し合い圧し合い、シェフの脇から別シェフが手を差し入れたり、それぞれの役割をもったシェフがどんどんスライドしたりして、その工程を進めていく。
以下が目の当たりにした調理工程だ。
白くフコフコしたものを敷き
それをギュギュッと成形
つちくれをまぶし
野菜を植え
雪を降らせた
信じて欲しい
そしてお出しされたのがこちらだ。
かわい〜〜〜〜〜〜
やわらかく加熱した野菜が芋…?の土に生えるちっちゃい畑がお出しされた。
カウンター内ではシェフたちが入れ替わり立ち替わりミニミニ野菜を植えていたのだ。一斉に作るのでカウンターいっぱいにこのミニミニ畑ができていくので、隔てるアクリル板越しに子供のようにワァ〜✨してしまう。
野菜も土台もほくほくととても美味しい。
そして私の脳内に「吹雪の中、開けた広い雪原に、針葉樹の森と、森から少し離れぽつりと灯を灯す素朴な一軒の家」のイメージが浮かんだ。
幻覚ノルマ、達成!!(何しに来てるんだ)
今回は幻覚が見れないかと思っていたので個人的に一安心だ。(何しに来てるんだ)
しかし、コースは最終章、デザートに突入するのだが……冬メニューの真骨頂はここからだったと言わざるを得ない。
『カカオ 対照』~冷の章~
まず、カウンターの下から、入店し席に着いたときに見た、茶色いモコモコ※が取り出された。
※【彼の声を聞け】参照
私はこの時「冒頭に出たやつだ!」と口に出してしまった。潜在意識がナチュラルにこのディナーコースを物語と捉えている。伏線回収だ!
メニュー名は『カカオ 対照』
その中で「冷たくて大きくて・・・(聞き取れなかったすみません)」と、「あったかくて小さくて濃厚な」と題された二種の品があり、それが”対照”を指すようである。
そして、この2つのメニューが…スゴすぎたのである。
まずは茶色いモコモコ「冷たくて大きくて・・・」。
名の通り冷気を纏っている。
溶けるため、早く食べないといけないようだ。
早速スプーンでひと掬いしてみる。
感触も名の通り、やわらかい。かき氷のような感じだ。
掬ったからには、当然、口に運ぶことになる。
そこで信じられないことが起きた。
口に入る前に無くなった。
・・・夢?
何が起こった?
気のせいかな?
もう一口掬ってみる。
口に入る前に無くなった。
どうなってるんだ!!?
口の中でとろける〜とかでは断じてない。
掬ったはずのそれは、口の中に入る前に立ち消え、かすかにカカオの香りのする残滓のような風が、口腔内を撫ぜてまた呼気と共に出ていくだけだ。
仙人の食い物、霞?
私の脳裏には、アライグマが綿菓子を渡されて洗うために水に浸けたところ溶けて無くなり呆然とする『世界のおもしろ動画』が浮かぶ。
騒つくセララバアドの客たちは、我々も含め、もはやそのアライグマそのものだった。
セララバアドにせせら笑われているのだろうか?セセラバアドか?(この言い回しが浮かんでどうしても使いたくなってしまいました。そのような事実はありません)
なんとか、必死の形相で口内に寸時囲い込むことに成功した瞬間もあったが、当然、口の裏に少し触れるのみで、カカオの香りと共に消えて行ってしまう。
その後にはナッツが残った。
幻術?
『カカオ 対照』~温の章~
『カカオ 対照』「あたたかくて小さくて濃厚な」だ。
厳密にいうと左のものだ。
右には雪の結晶型の砂糖が載った苺が置いてあり、周りにはホワイトチョコのパウダーがふられている。こんなの説明するに及ばず美味いに決まっている。美味い。
こちら調理過程で見えたのだが、雪の結晶型砂糖の入ったタッパーに「結晶」と書いてあるマステが貼られていて、あげさんは「かわいいですね」とたいそうお気に召していた。
さて、左の器(?)の中から「あたたかくて小さくて濃厚な」が出てきた。
パッと見、立方体の置物のように見えたため、厨房でこれが並んでいた時は焼き石の類かと思った。
こちらも名に違わず熱を持っており、ずっしりとしている。
一口サイズなのでザクっと刺して口に放り込んだ。
美味!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
美味すぎる…
美味すぎるという事実があまりにも強すぎて食感とか具体的な記憶が全て飛んでしまっているがめっちゃくちゃ美味い…エヘヘェ…
なんでこれ一個しかないんだろう?そう思っていると
別の席からも「あと10個食べたい…」という惜別の声が聞こえた。
わかる
畑の景色と薔薇の窓
そして最後のデザートの準備にかかる厨房。
…この記事、何度か、「食器」と呼ぶのかすら不安になることが多々ある…。
器…として使われている…ガラスケースが一人一台出された。
上蓋の向こうに小さなデザートが並んでいるのがうっすら見える。
これ、うっすらというのは、ガラスケースの蓋が曇っていたからだ。
結露かな?温度差があるのかな?
そう思っていた私はまだセララバアドを舐めていたとしか言いようがない。
シェフは言った。
「この蓋は窓です。窓を指先で拭って向こうの雪景色を見てください。」
演 出 ッ ッ … !!!
腰を抜かさざるを得ないってワケ…
スゴ…
ガラスの蓋を窓に見立てて、雪景色に見立てたデザートの配置を、部屋の中から外の景色を、窓をぬぐって眺めるように…だあ!?
しかもこれ、ただ曇らせているわけでもない。
この曇りを指先で拭うと、拭った指から薔薇の香りがするようになる。
はっはっは…
優雅すぎる…
どこからどこまで仰天させてくるのか。もはやヒザごと笑うしかない。
「吹雪の中、開けた広い雪原に、針葉樹の森と、森から少し離れぽつりと灯を灯す素朴な一軒の家」だ!!!?
※【一人一皿一畑】参照
薔薇の香りの窓の向こうに、まさか幻覚に見た景色が現われるとは思わなかった。
セララバアドが見せたかった同じ世界観を、味によって共有したということだ。すごい…。
もはや言うまでもないが一個一個とっても美味しい…。
はあ…
満足感と疲労感を伴いながら、コースは終了した。
総括
冬メニューもすごかった。
しかし、初来店ということもあったとは思うが、
単なる「何これ!」度は夏メニューの方がすごかったと感じた。
だが味の好みで言うと冬メニュー。めちゃくちゃ美味い。
当然好みの問題なので、諸氏にも是非とも自身で行ってみてほしいと思う。
あと今回二回目ということで、油断が出てしまい、
場所がわかっているため断りもなく手洗いに立つ、というような
不躾無様ムーブをしてしまい申し訳なかった。
次回は気を引き締めて上品に振舞いたいものである。
次は秋に行きたいなと考え中だ。
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