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Kちゃんはどこにもいないのに

旅をしていると
日本中のいろんなところ

とくに都会の
駅とかショッピングモールで

わたしはちょっとあたまがおかしいんか?ってくらい

Kちゃんを見つけてしまう。

あの日、お線香をあげに行ったのに。

なんども見返したLINEも、facebookも、
何年かまえに消えてしまったのに。

全国のKちゃんみたいな人は

デキる女風に大きな封筒を抱えて颯爽と歩いていったりする。

靴を試し履きする恋人の足元を無言で見つめていたりする。

マスクをした涼しい目の美人がほとんどKちゃんに見えるのは
わたしがおかしいのはわかっているんだけど

ひょっとして、
どれかは本物だったかもしれない。と思う。

お線香はあげたんだけど

お線香しかあげてないし

それってどういうことなんだっけ?とボンヤリしてしまう。


車をもってないKちゃんとわたしはよく自転車で温泉に行った。しかも夜中に。
露天風呂で月を見ながら、これから私たちってどうなっちゃうんだろうねえ〜って、話してた。


わたしの1人暮らしのマンションとKちゃんの家のあいだには川があって
たまには運動しようかと早朝に待ち合わせたわたしたちは河川敷を遠くまで歩いた。

またある日は美術館に行った。
マリーアントワネット展や、ベネチア展

まだ暑くなる前だった。
カフェのオープンテラスで、つぎは京都に企画展でゴッホが来るから行こうよ、バスで。て、言った。

わたしが外国からひとりで帰ってきたときは、車持ってないくせにタクシーで空港に迎えに来てくれた。
真冬の日本にうっかり半袖Tシャツで帰って来ちゃったわたしを見て、おどろきながら笑ってる顔。

そんなわたししか覚えていないいろいろは、わたしが忘れたら無かったことになるんでしょうか。

それはなんだかまずい気がする。
だから頭のなかでまた再生する。

けど、近年だんだん細部があやふやになってきて、かたじけない。

だからnoteに書いちゃった。

これってズルかなあ。

Kちゃん。

世の中にはあなたによく似た人がたくさんいるようなんです

ですが

あなたによく似たともだちは
わたしにはずっとできません

マリーアントワネット展の看板


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