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企業に「価値」を提供する産業保健とは

~目標設定から実務サポートまで、フルサービス提供型産業保健の可能性~


はじめに

「産業医は法令で必要だから、置いておけばいい」――そんな認識が、いまだに根強く残っている企業も多いのではないでしょうか。しかし本来、産業医の役割は単なる“お医者さん”ではなく、企業に価値を提供することにあります。企業の健康課題や経営視点に寄り添いながら、目標設定や実務サポートまで関わることで、産業保健は組織にとって欠かせない存在になれるのです。

本記事では、「産業医がどのように企業へ価値を提供すべきか」をテーマに、よくある課題や具体的な解決策をご紹介します。健康経営銘柄やホワイト500取得を目指している企業にも、きっと参考になるはずです。


1. 産業医が“企業に価値を提供する”とは?

1-1. 法定業務だけで終わらない意義

企業によって求められるニーズは実にさまざまです。たとえば、ある企業はメンタル不調者の対応を強化したい。別の企業は健康経営銘柄の取得を目指して書類作成やデータ管理を手伝ってほしい。法定業務(職場巡視・面談など)を行うだけでは、この多様なニーズに応えられないのが現実です。

つまり、「企業が何を求めているか」をしっかりヒアリングして、ゴールを共に設定することが不可欠。そこから逆算して実務支援や新たな施策を提案し、企業に“あってよかった産業医”と思われる活動を行うことが、価値提供の本質と言えます。

1-2. 求められる“ニーズの聞き出し力”

産業医が企業の経営層や人事担当者とコミュニケーションを取り、健康課題・組織課題を上手に引き出すことは、「どんな価値を提供すべきか」を知るための起点です。しかし、以下のような残念なパターンも少なくありません。

  • 知識や経験が不足していて、企業の質問に答えられない

  • コミュニケーションスキルが低い(ニーズを聞き出すのが苦手)

  • 社会人としての常識が欠落(医師目線で指示する態度に終始)

  • 適切な報・連・相ができない(連絡が遅く、企業の業務を滞らせる)

法定業務をこなすだけなら、それでもギリギリ成立するかもしれません。しかし**“企業が本当に欲しい価値”を生み出す産業医**になるためには、経営や人事担当者とのコミュニケーション力・マネジメント視点が不可欠です。


2. フルサービス型産業保健の可能性

2-1. グランドデザインを一緒に描く

企業が求めるゴールは、「健康経営銘柄を取得したい」「休職率を下げたい」「社員が気軽に相談できる環境を作りたい」など、多岐にわたります。弊社では、まず経営層とじっくり話し合い、ゴールを明確化。その上で「必要な施策は何か」「どの部署を巻き込むか」「いつまでに成果を出すか」をグランドデザインとして落とし込みます。

  • 実務上の課題を把握し、スケジュール・リソース・期待成果を可視化

  • 担当保健師やスタッフが企業側の人事部ではカバーしきれない業務を巻き取り

  • 現場の意見・運用状況をモニタリングしながら、改善を繰り返す

こうしたフルサービス型の産業保健は、法定業務を超えて企業全体の仕組みづくりに関わることになります。だからこそ企業は「頼りになるパートナー」と感じやすいのです。

2-2. 実務サポートで“価値を見える化”

たとえば、人事部が膨大な健康診断データの管理や休職復職の調整に追われているなら、そこを保健師やスタッフが巻き取り、運用を整備します。

  • データ入力や分析ツールの導入

  • メンタル不調者へのフォロー体制構築

  • 健康推進施策の企画運営

  • 経営層へのレポーティング

企業からすれば、「忙しい担当者の負荷を減らしてくれる」「健康管理が整い、業績にもプラスになる」と**“実務上のメリット”**を感じやすくなるのです。


3. 実際にどんな活動をしているのか

3-1. 企業規模に合わせたゴール設定

弊社では、中小企業から大手まで、**規模に応じた“現実的なゴール”**を設定しています。大企業であれば健康経営銘柄やホワイト500取得が分かりやすい目標ですが、中小企業は「メンタル不調者を減らして離職率を下げる」「人事担当者の負担を半減する」など、より身近な課題が優先されることも多いです。

3-2. 担当保健師・スタッフによるサポート体制

各社に担当保健師やスタッフを配置し、

  • 人事部では処理しきれない実務を巻き取る

  • 社内ルールが形骸化しないよう、運用状況をモニタリング

  • 問題が起こった際の連絡経路を整備し、迅速な対応

これらを徹底することで、産業保健活動が「ただの医師の意見」ではなく、企業全体を支える実務的なサポートとして評価されるようになります。

3-3. 経験者としての強み

理事長自ら、産業医として多くの企業を担当し、健康経営銘柄やホワイト500取得を支援した経験をもとに、“現場のリアル”と“経営視点”を両立したアドバイスが可能です。単に医療知識を押し付けるのではなく、企業が何に困っているかを踏まえた施策設計をする点が、弊社の大きな特徴となっています。


4. まとめ&次のステップ

4-1. 価値提供の鍵は「企業ニーズの理解と実務支援」

  • 法定業務+αで企業の課題解決に貢献する

  • コミュニケーション力や社会人としての常識を持ち、「ニーズを引き出す」姿勢を忘れない

  • ゴールを共に設定し、グランドデザインを作り、実務面でも巻き取りを行う

4-2. フルサービス型産業保健の意義

  • 担当保健師&スタッフが実務上のサポートと運用監視

  • 企業規模に合わせた現実的なゴール設定&ロードマップ作成

  • 産業医がリードし、健康経営のコンサルタントとして戦略的アドバイス

結果として、法令遵守にとどまらず、健康経営銘柄やホワイト500取得など大きな目標にもチャレンジできる環境が整います。企業が「産業医に頼んでよかった」と思える価値提供こそ産業保健活動の醍醐味ではないでしょうか?


次回予告

次回からは「健康経営銘柄取得のために」をテーマ複数回にわたって、実際にどのように企業と産業保健体制を整えたかを振り返りつつ、具体的な手順やポイントを解説します。ぜひお楽しみに!


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