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「嘘聖地へ移住」増加、謎の動向...移住者「ここがどこだかわからない」自治体困惑


昨今、アニメファンの間で「聖地巡礼」から「移住」へと発展する新しい動きが広がりつつある。アニメの舞台となった地域を訪れるだけでなく、そこに根を下ろし、実際に移住する人々が増えているというデータも散見されるようになってきた。

嘘聖地という潮流

一方、この兆候とは無関係に起きている「うねり」がある。それが「嘘聖地巡礼」である。アニメ『アイドルマスターシャイニーカラーズ』(以下、「シャニマス」)のファンである石田洋樹さん(26歳)は、本作とは全く関係のない場所を「嘘聖地」だと言い張り、まるで「聖地巡礼」かのようにそれらの地域に赴き、写真に収めるという活動を続けている。


SNSにおいて、嘘聖地への巡礼活動を行っているアカウントは複数存在しており、元々は一部の盛り上がりであった流れが徐々にムーブメントとなりつつある中で、「嘘聖地」への巡礼にとどまらず、嘘の聖地へ移住する人が増えてきたようだ。

石田さんは、地元である宮城県の大学を卒業後、そのまま県内の企業へ就職した。しかし、嘘聖地への羨望が抑えきれなくなり、まだ見ぬ嘘聖地を求め、山梨県へと移住したという。

山梨県には、現在『シャニマス』の聖地として特定されている場所はない。しかし、石田さんは語る。 「『シャニマス』の聖地ではないってことは、ここ(山梨県)は嘘聖地の宝庫なんです」。

石田さんのSNSアカウントでは、「嘘聖地に移住を決めるのはファンの鑑だ」「自分もいずれ嘘聖地へ移住したい」「京都を狙っています」など、たくさんの反応が寄せられた。

「山梨に移住してからは、移動はもっぱら自転車になった」と石田さん。

移住者を掴めるか

石田さんを筆頭に、こういった現象は、特に自然豊かな地方都市や歴史的な街並みを持つ地域で顕著に見られる。観光地として名高く、移住者を受け入れる体制が整っている自治体への移住希望者が徐々に声を上げている状況だ。

一方、この件について各自治体へ問い合わせたところ、「特に聖地ではないため、アピールしていく予定はない」とのことで、移住希望者と自治体の間にミスマッチが起きている様子。石田さんに続けとばかりに嘘の聖地へ移住したあるファンは、「単純に住みやすそうな街を選んだ。聖地でない場所ならいいと思って勘で移住したため、ここがどこだかわからない。特に聖地キャンペーンもしていないし」と述べる。

アニメの聖地巡礼や移住に詳しい専門家の橋部康作氏によると、「アニメをきっかけにした移住は、地方創生の新たな形として注目されている。一方で、嘘聖地となると自治体は何をしていいかわからないし、まとまった移住者が見込めるわけでもない。万が一、移住者が増えたとしても各自治体へ散ってしまうのではないか」と指摘。嘘聖地巡礼を通じて、その土地の文化や人々との交流が深まることはなく、最終的には移住を通じてこれまでとはまったく違った暮らしをすることになるようだ。

今後、嘘聖地への移住という流れが大きくなるかどうかは、嘘聖地への移住を促進するためのプログラムを積極的に展開できる自治体が生まれるか次第。地域に根付いた企業への就職補助や起業支援、地域コミュニティとの連携を実施し、移住者の定着をサポートしていけるかが鍵となる。

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