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【LIENER NOTES:対談】伊崎優美 × 郁田はるき『表現って、なに?』


伊崎美優

:美術大学に通う、アイドルユニット『cleverNotes!!』のメンバーとして活動。「何をするにも積極に!」がモットー。
郁田はるき
:曲によってセンターが入れ替わるアイドルユニット『コメティック』のメンバー。楽曲とパフォーマンスが注目され、人気沸騰中。


伊崎:
本日は私からオファーをいたしまして、郁田はるきさんと対談をさせていただけることになりました。どうぞよろしくお願いします。


郁田:
はじめまして。郁田はるきです。こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。


伊崎:
早速ですがはるきちゃん、ズバリ「表現する」ってどんなことだと思いますか?


郁田:
早速、ズバリですねぇ。うーん。自分の中にある、まだ形になっていないものを形にすること・・・ですかね?


伊崎:
なるほど〜!すごく綺麗にまとめてくれてありがとうございます!郁田:そう思っていただけたならよかったです!─ 終わってしまいそうなので、もう少し深掘りさせてもらいますね(笑)。伊崎さんは、現在美大に通いながらアイドルをされていると伺っています。どういったことをされているんですか?


伊崎:
美大には通っているんですけど、よく勘違いされることで、私はアートをやっているわけではないんです。工業品や造形を学ぶ課程なんですね。子供のころからものづくりに興味があって、それこそ図工の授業も好きでしてたし、技術科・家庭科も好きだったんです。一方で、美術とか音楽は全然ダメで。表現するって言っても、形のないものをどうやって表現すればいいのか、さっぱりわらからなかったんです。でも、絵が上手い友達や作曲をしていた子とかに話を聞いてみると、頭の中にあるモヤモヤしたものを形にすればいいっていうふうに言うんですね。創作するっていう意味では近いはずなのに、どうして私にはそれができないんだろう、私は、実態のあるものじゃないと作れないのかなって。そこから、じゃあ私にできる表現って何かなって考えたときに、私自身には肉体があって、実態があるから、体を使ったパフォーマンスをやりたいなと。─ 体を使ったパフォーマンスにもいろいろなものがありますが、そのなかでアイドルを選んだ理由は?


伊崎:
すごく単純に、元からアイドルには興味があったんです。ライブも何回か見に行ったことがあって。あとはオーディションが申し込みやすい日程だったのは大きいかもしれません。すぐに動き出したかったので。─ ありがとうございます。では、続いて郁田さんにもお伺いしておきましょう。郁田さんがアイドルになったきっかけはなんですか?


郁田:
私も伊崎さんと同じようなことを感じていて、私の中にモヤモヤしたものがあっても、形にする方法がなかなかわからなかったんです。私はそのよくわからないものをなんとか音や色で表現できないかなって、いろいろやってみてたんです。


伊崎:
ということは、はるきちゃんは音楽や絵がお得意なんですか?


郁田:
実は、そこまでなんです。絵も音楽も試してはみたものの、これだって思えるほどにはならなかったんです。もしかしたら、違うかもしれないなぁって思いながらなんとなく続けていたんですけど、そんなとき、たまたまプロデューサーさんと出会って、スカウトしてもらった・・・というか、逆スカウトみたいな形になってしまったんですけど、とにかく、縁があってアイドルにさせてもらいました。─ アイドルへの興味は元からあったんですか?


郁田:
いえ。それまでアイドルという道を考えたことはなかったんです。でもだからこそ、私が想像していなかった方法なら、私の中にあるものや、私がまだ見たこともないようなものがもっとたくさん見られるような気がしたんです!


伊崎:
なるほど・・・!そういうお話が聞きたかったので、やっぱりはるきちゃんに対談をお願いしてよかったです!「私の中にあるもの」について、もっと知りたいです!どんな感じですか?


郁田:
うーん。どんなことでもいいんですけど、何かうまくいかないことがあったとしたら「うまくいかないなぁ」というふうに言葉にはできるのですが、そうやって言葉にするだけだと、言葉にならなかった部分が拾いきれない気がするんですね。たとえば、どうして私にはうまくできなかったんだろう、とか、そもそも私、本当にうまくいって欲しかったのかなぁ、とか。


伊崎:
はるきちゃんの中にあるのに、言葉として出てこなかったものが残るということですね?


郁田:
そんな感じです!ささいなものでも、体や心の中に何かしらが残ってるなーって思ったときに、それをどうにか言葉で表現しようとするのもいいんですけど、言葉って、知っているものの中からじゃないと言い表せなくて、もどかしいなって思うことがあるんです。だから、言葉になる前の、うまく言えないんですけど、「勘」みたいなものを、言葉じゃなくてもいいから、どうにか形にできないかなぁって。それは、音楽だったり絵だったりすることもあれば、そうでないこともあって。先ほどもお話したのですが、私は以前、音楽・・・というかベースをやっていたんですね。でも、ベースでは私の思う「勘」はうまく形にできないなぁって思っていて。えーっと、ここまでの感じって、伝わっていますかね?


伊崎:
うんうん!なるほどって思いました!


郁田:
よかったです!それで、その「私の中にあるもの」を、アイドルになったら見つかるかもしれないな〜って思ったんです。伊崎さんには、モヤモヤってした気持ちとか、衝動?っていうのかな・・・。そういうもの、ありますか?


伊崎:
あります!ただ、私ははるきちゃんと反対で、先に解決の具体を考えてしまうんですね。何か漠然としたもの、私は「課題」って呼んでいるんですけど、自分の中でまだ発見できていない何かがあるなって感じたときには、その解決策を見つけるために、この世にすでに存在するパターンとか、既存のフレームをいくつも当てはめていって、その中から、「課題」を解決するためのルートをパズルみたいにして積み上げていくと、最終的に、漠然としていたものが、造形みたいにしっかりと形を持ってくるイメージがあるんです。何かでモヤモヤっとしたら、それを組み合わせで再現しようとするんですね。でも、はるきちゃんの場合は、そういうモヤモヤをできるだけ生の状態のまま世界に生み出そうとしているのかなって。


郁田:
あぁ〜。そうかもしれませんねぇ。


伊崎:
そうやって、生の状態のままお出しするっていうことが、はるきちゃんにとって「表現する」っていうことなのかもしれないなって思いました!


郁田:
それだと、アイドルのパフォーマンスってどっちになるのでしょう?


伊崎:
そこが微妙だなぁと思っています。アイドルのお仕事にもいろいろなものがありますが、ほとんどは、たくさんレッスンしたり、リハーサルを重ねて完璧にできるようにするっていう点ではパズルみたいに積み上げていくものだなとは思うんです。さらにそこから、カメラマンさんとか、編集さんとか、演出さんとかが作品として仕上げてくれて。そういう意味では生の表現という感じではないですけど、ライブだったり、イベントやラジオの生放送だったりは、理想の形があっても、必ずしもそうはならないから、そういう点では文字通り生ですし。


郁田:
たしかに、『ライブ』っていうくらいですしね。


伊崎:
ただ、それを言うと、造形物もまったく同じように見えても同じものではないと言うことはできてしまう気がして。う〜ん、唯一無二かどうかによって価値が決まるものが「表現」なのかなぁ?


郁田:
それでいうと、伊崎さんが造形物を作るとき、作品として作るとそれは唯一無二であって、表現に近い気がするんですけど、大量生産する造形物ってなったら、唯一無二では困ってしまうので、それは表現ではなくなるのかな〜?って思いました。すぐに答えは出そうにはないですね・・・!─ おふたりは、形は違えど表現することを模索するためにアイドルになるという道を選びました。アイドル活動に対するスタンスにも違いがありそうですね。


伊崎:
アイドルって、芸能っていう意味では古くから存在するのかもしれませんが、現代のアイドルに似た芸能活動が始まってからはまだ100年経っていないと思うんです。やっぱりテレビの登場以降なのかなって。それで、メディアのあり方も変わってきている...って、私まだ20年しか生きてないので、昔のことを見てきたみたいに偉そうに言えることではないんですけど、小学生のときの私が見ていたアイドル像と、いま私がいるアイドル業界におけるアイドルのあり方ってちょっと違っている気がしていて、というか、意味が広くなってきているなって思っていて。大きくて遠いアイドルと、大きくないけど身近にいてくれるアイドルに分かれてきているように感じているんです。


郁田:
たしかに。アイドルって、もっと遠い存在というか、すごくオーラがあって近づけないくらいの方が多いと思っていたのですが、いざ自分がアイドルになってみたら、友達みたいにお話したり、一緒にお仕事するときも、横のつながりがちゃんとあって、レッスンしたり、励ましあったり、お疲れだったり。みんな、ちゃんと人間だったんだなぁって思うことがあります。


伊崎:
すごくわかります!もちろん、私には到底近づくことができないって勝手に思ってしまうくらい眩しいアイドルさんもいますけど、時代のシンボルで、国民的なアイドルっていう道以外のアイドルとしての生き方っていうのもたくさんあるなって思えるんです。その中で、私がアイドルとしてどうやって活動していくかって考えると、大道芸人さんみたいになれたらいいなって思うんです。


郁田:
大道芸人さんですか?


伊崎:
そうですね。路上でいろんなパフォーマンスをしてて、どれもすごいのに、仰々しくないというか、身近で親しみやすくて、街行く人たちに愛されちゃうような。本当はそうなるために、きっとすごく鍛錬を積んできたはずなんだけど、全然そんな感じがしなくて、笑って一輪のお花を出してプレゼントしてくれちゃうくらいの距離感を持っているあの感じになれたらなって。大きくて、時代の象徴みたいなアイドルになるためには、みんなで大きなテコを動かしながらアイドルとしての像を作り上げていくイメージがあるんですね。あ、もちろん、本人の絶え間ない努力や素質があってこそではありますが。でも私はそうはなれないなっていう割り切った気持ちがあって、その代わり、私のことを知ってくれている人にはちゃんと届くくらいのアイドルになりたいんです。そういうアイドルになるために、私個人の、もっと生っぽい部分を出していかなくちゃいけないって気がしています。大きな装置が扱えなかったとしても、私自身の生っぽいところでちゃんと表現が作っていけたら、私がアイドル活動をきちんと受け止めてくれる人たちにはしっかり届けられるといいなって。


郁田:
なるほどぉ。伊崎さんが求めているリアクションではないかもしれませんが、アーティスティックだなって思いました。


伊崎:
えぇ─ !でも、こういうときに「ファンのみなさんに楽しんでもらうために」って言えたらよかったな・・・!


郁田:
伊崎さんの活動のベースには自己表現がありそうなので、もっと「私に着いてこいよ」っていうくらいで良いんじゃないでしょうか?


伊崎:
そうなのかなぁ?はるきちゃんは、どういうスタンスでアイドルをされていますか?


郁田:
私は、まずはやっぱり、応援してくれるみんなのために頑張らないとっていうのは大きいですかね。あとは、私はアイドルになってまだそんなに経っていないのですが、周りには、小さい頃から歌やダンスやお芝居など、人前に立つ経験を積んできた方々がたくさんいるなっていうこともすごく感じるので、そういった方々へのリスペクトを示すためにも、一生懸命頑張らないとなって思っています!


伊崎:
はるきちゃん・・・!そうだよね。私もそういうことを言えるようにならなくちゃ・・・!


郁田:
でも、それは先立つものと言いますか、アイドルをやるからには外せないなって思っている部分の話であって、私にとってアイドルをやる理由っていうのは、また別のところにある気がします。


伊崎:
それ、ぜひ聞かせてほしいです・・・!


郁田:
先ほどお伝えしたことと似てきてしまうのですが、私はまだ見たことがないものに対する憧れがあるんです。それが見たいというはもちろんですが、それだけではなく、できれば私自身が見たことのないものを表現できたらもっといいなとも思っていて。アイドルやるって決めたときに感じたのは、見たことのない場所まで、もしかしたら行くことができるかもしれないっていうことと、その場所で、私自身もまだ知らないものが、私の手で描けるかもしれないっていうことだったんです。というより、まだまだ「楽しくやるぞ〜」って思っていられるほどの余裕がないだけかもしれないんですけど。そう思える日が来たらいいなって思って。自分本位なところでいうと、そのためにアイドルをやっているところがあります。もちろん、走った先には何もないかもしれないですんですけどね。でも、何もなかったなぁって思った頃に、案外、突然見つかったりもするかもしれないですし!


伊崎:
見つかりそうな感じはありますか?


郁田:
大きなところでいうと、まだまだかなって思うんですけど、小さなことでいうと、お散歩中にお花を見つけるみたいに、もう、日々発見の連続です!まず、事務所に所属したときに、私と同じようにアイドルを目指している同じ世代の子がたくさんいるんだってことに驚きましたし、それでいて、みんな思いの形や考えかたが違ったりして。それから、誰かの夢を叶えるために真剣に働いている人たちがいるんだってことも、すごく感じています。あとはやっぱり、ステージに立ったとき、ファンのみなさんが見させてくれる景色は、毎回すっごく新鮮で、信じられないと言いますか、いまでも全然慣れないです。ありがたいなぁって!


伊崎:
それはわかります!本当に不思議というか、こんな景色を見せてくれてありがとうって毎回思います。もう感謝で頭が上がらないです。─ 読者の方からおたよりをいただいています。『気持ちが折れそうになるときはありますか?また、そういうときはどうしていますか?』


伊崎:
私はよくあります!そういうとき、紙に書き出すようにしていますね。気持ちって、私の中にあるまだ言葉になりきれていないものなような気がするので、仮にでもいいのでそれらに言葉をあてがうようにしていくんですね。頭がぐちゃぐちゃしているときとかは、そうやってあてがった言葉を組み合わせて、文章にしていくんです。そうすると、絡まった紐みたいにぐちゃぐちゃだった気持ちが、だんだんしっかりとした形になって見えてくるんです!そうしたら、その文章を読み返して、どこが基礎になっていてどうやって建っているのか、建築物を見るみたいに要素分解して立て直して・・・っていうふうにしていくと、いつの間にかスッキリしています!


郁田:
すごい・・・!すごく伊崎さんらしいなって思いました。要素分解っていうのは、どうやってやるんですか?


伊崎:
書き出した文章はまだぐちゃぐちゃのままなので、構造を読み取って、リメイクしていくんです。といっても、最後まで立て直せないことのほうが多いんです。なんですけど、構造がわからなくても、そういう建造物が心の中に建っているんだなって思えると、不思議なことに大丈夫になってるんです。


郁田:
なるほど〜。ちょっと難しいですけど、モヤモヤがモヤモヤじゃなくなるから、とかですかねぇ?


伊崎:
あ!そうです!そんな感じです!─ 郁田さんは、気持ちが折れそうなときはありますか?


郁田:
もちろんあります。そういうとき、私はその気持ちに名前をつけるようにしています。


伊崎:
名前ですか?


郁田:
はい〜。伊崎さんがさっき仰っていたことと似ているかもしれないのですが、頭の中で、何かよくわからないな〜っていう感情が湧いてきたら、その子に名前をつけてあげるんですね。「モヤモヤっとした」とかだと、それがどんな気持ちなのかよくわからないままなので。─ どういった名前をつけるんですか?


郁田:
えぇ、それは恥ずかしいですね・・・。たとえば、私がいま感じているのは不安なのかもしれないなって思ったら・・・ごめんなさい、やっぱり恥ずかしいです〜!


伊崎:
私は気持ちを建物みたいに捉えようとしていましたが、名前をつけるっていうのもすごく良さそうですね!


郁田:
でも、いまお話ししていて気がづいたのですが、最初に私たちが言っていたことと正反対ですね〜!


伊崎:
正反対?


郁田:
伊崎さんは、形にならないものを表現することが難しいといっていて、私は形にならないものをそのまま出せないかなって言っていたのに、『気持ち』の扱い方はお互いに反対のことをやっているなぁって。


伊崎:
本当だ・・・!はるきちゃんは言葉をあてがうけど、私は心の中にそのまま建てておく。なんでだろ〜〜!


郁田:
裏腹ですねぇ。─ もう一通だけおたよりを読みますね。『将来設計について考えていることがあれば教えてください』。


郁田:
難しい質問ですね。私はアイドル歴になって短いですから、先のことっていうよりか、今のことを考えるのに精一杯です。って、答えになっていないですが・・・!伊崎さんは、将来についても設計していそうな予感がします。


伊崎:
そこまでカチッとは決めていないです・・・!いまの大学を志望していた頃は、インダストリアルデザイナーになりたいなと漠然と思っていました。


郁田:
えぇっと、インダストリアル・・・?


伊崎:
工業系のデザイナーです!今でもその気持ちはあるので、大学での勉強は続けていますが、アイドルとしての活動もすごく楽しいので、もう少し欲張って考えてみようかなって思ってます。まぁ、つまりまだ決まっていないということで(笑)。


郁田:
大学って、どういう場所なんでしょうか?


伊崎:
自分で目的意識を持っていないと置いていかれちゃうような気がします!入学当初は実感がなかったんですけど、いくつか課題をこなしているうちに、自分次第ですごく学べるってことに気がついて、それからはたくさん活用しています!アイドル活動はお仕事なので、もし自分が頑張らなかったとしたら活動ができなくなるだけだけど、大学は、行く側がお金を払っているから、頑張らなくても通えちゃうんですよね。親にお金を払ってもらってるわけだし、最大限頑張ろうって思ってます!はるきちゃんは高校2年生でしたよね?進学には興味あるんですか?


郁田:
学びたいことさえあれば学べる環境というのは、気になりますねぇ・・・。


伊崎:
大学にもよるけど、図書館が大きかったり、近いことを学んでいる子とお話しできるし、とってもいい環境だと思う!あと、その道の第一人者みたいな教授が授業をしてくれるから、すごく面白いよ!


郁田:
なるほどぉ。興味が湧いてきました!


伊崎:
特に感じたのは、私の中ではまだ言葉や形にできていなかったものが、実は先人たちによってたくさん生み出されていて、世の中に溢れていたんだって気づけたことかもしれないです。研究としても、表現としても!だから、はるきちゃんは学校通ってみるのもいいかも!


郁田:
そういう道もあるのかぁ!

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