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KOC2024感想と審査員寸評

1.優勝はラブレターズ

加工最高の大接戦を繰り広げたキングオブコント2024
混戦を制た新王者はラブレターズに決まりました。
第一回大会から都合17度の挑戦での戴冠。
喜劇も悲劇も全てに笑いと魂を詰め込んだ、王者に相応しいコントで競り勝ったと言えるでしょう。本当におめでとうございます。

2.不在の審査委員長

件の事件から、今大会は松本人志審査員長が審査員席に並ぶことはなかった。
代わりにその位置には東京03飯塚が座ることとなったが、員長という肩書きはつかなかった。歴代王者が並ぶ姿は収まりが良く特に違和感も無かったが、やっぱり松本人志という存在がない事実が寂しい。

ダウンタウンの引退もそう遠くない未来だろう。だから世代交代自体は行なっていくべきではあるのだろうけどれど、こういう形でフェードアウトしていくことは寂しい以外の言葉が見つからない。M-1には間に合うのか、勇退を受け入れるべきなのだろうか。

3.止まらぬ高得点化の是非

「いくらなんでも」といったところだろうか。
そんなに80点台をつけることが悪なのだろうかと言いたい審査レンジであった。
私は審査員の評価に関して批判するつもりはないし、ラブレターズの優勝にケチをつける気も全くない。ただただ1組目から95点などとつけるものではないと言いたい。

審査員たちは口を揃えて「高くつけざるを得ない」と言うのだが、何が理由でそうなるのか?前回大会までとの比較なのか。自分の中での絶対評価なのか。

比べるべきは今大会だけの総体的評価ではないのか?厳正な審査をするのであれば「96点をつけたいくらい面白いが、トップバッターなので90点にしました。」という審査があるべき姿ではないのか。


結果的にトップと最下位の点差はわずかに18点同じ各審査員同点が異常に多く、視聴者の批判を受けても仕方がない。

余談ではあるが、昨年のM-1では令和ロマンに90点をつけた松本人志は、トップ通過のさや香には89点とし、「令和ロマンを超えてはいなかった」と冷静に裁定。

抑えて採点して結果的にロングコートダディが一番面白く、80点台が乱立したとて、レベルが低い大会だったね。とはなりようもない。

4.審査員の好みとルールの縛り

ネットでは審査員の好みというワードが物議を醸したが、個人的には好み以外の何者でもないと思っている。逆に何かしらの基準が設けられているのであればそれこそ五人も審査員はいらないし、大会自体が無価値なものとなってしまう。点数レンジにこそ不満はあるが、実際ファイナリストのレベルは上昇する一方で、最高得点と最低得点が混ざるコンビがいても不思議とはならない域に達しているとまで言える。

話は変わり昨年のM-1グランプリ。優勝した令和ロマンはネタを4つ準備していたそうな。
トップバッターならバカなネタやって大会を盛り上げよう。コント漫才の後ならしゃべくり。逆ならコント漫才。今までのファイナリストとは一線を画す作戦の練り方で、優勝したというよりも攻略したという方が似つかわしいような気さえしてくる。

一方でKOCはどうかというと、準決勝で行った2本を決勝で行うことになる。
セットや音響もあるので仕方のないことではあるが、出順でネタを変えることは出来ないところがM-1との大きな違いと言える。

審査員にアジャストさせる戦略はどうかと言うと、入れ替えの可能性は無さそうとはいえ0ではない。また今年のメンバーの好みもバラバラ故にあまり意味を持たないと見える。M-1のように小手先に頼る戦術は難しく、今後も純にネタの完成度で戦うことになりそうだ。

5.各ネタの感想&審査員寸評

1.ロングコートダディ 花束 

2人のやり取りはらしさがあったが構成自体はらしくないというか、もっとコントコントが見たかった思った。コント漫才でも成立しそうだなと思ってしまった。

飯塚:トップで96を出すのは相当勇気いるが、出さざるを得ないくらい好きだった。兎の子憎たらしさが5分に凝縮されていた。
じろう:トップだからと抑えめにするのが失礼なくらい良かった。二人のやりとりが1個も外していなかったし、兎のモンスターカスタマーっぷりに堂前が突っ込んでしまえば簡単だが、とりあえず接客して花言葉で返していくリアルさがよかった。
山内:短時間で客と店員のキャラがわかったうえで感情変化が面白くなってきた。花自体は変にボケた花はなく、それに対して兎がなんていうのかという部分の面白さで魅せてきて非常に良かった
秋山:紹介VTRであんなにかます奴あんまいない。それに関係ないくらい受けているし、花ボケって見たことない。
小峠:セットが組まれていない。非常にシンプル。だいたいこの手は飽きちゃうが飽きなかったし、最後に一発ギミックがあった。


2.ダンビラムーチョ 冨安四発太鼓

今大会1番笑った。タイトルから笑いの取り方から、ロバートの系譜といっても良いくらいに憑依されてたと思う。細部こそという評価があったが、「PS2でながしてるの?」「そういうとこじゃい?1人になったの」「変わる時が、来たのか?」など、根幹のバカバカしさに負けない緻密さが光っていた。

秋山:まず富安四発太鼓という名前に引き込まれた。ワクワクしたし小ボケも良かったし好きなコントだった。
じろう:大原が緊張しているとのことだったが、ノリでやっている感じがした。本当におじさんが好き放題やっているところが良かった。
山内:紹介VTRで細部は終わってると言っていたが、細部こそ切れ渡っているように見えた。音響に強く当たりそうな嫌な腕時計とか。完璧なディテール。
小峠:一発目出てきた時、ベストな奴が出てきたと思った。四発がどこで来るかも面白かった
飯塚:四発のアイデアは良かった。個人的には最初の四発がピークで後半そこを超えてこなかった。

3.シティホテル3号室 テレビショッピング

もともといぶし銀な精密なコントが売りではあるが、ダンビラの弾け方に割りを食って地味に見えてしまった印象。出順が終盤ならひょっとしたかもしれない。

飯塚:最初の裏切りにめちゃくちゃびっくりした。そこから分かった上での小芝居はずっと見てられるし、最後の終わり方が潔過ぎた。
小峠:最初に2段階展開するのが面白かった。
秋山:前半に驚いたが後半もっと欲しかった。
山内:二人ともワークショップ通ってるくらい演技が上手い。個人的には全部に理由があり過ぎて、意味のわからなさがもう少し欲しかった。完璧すぎた。


4.や団

ダンビラに次いで笑った。トリオである意味がしっかりしていて、漫才くらいボケ数もあり5分の密度が凄かった。

じろう:三人のコントで5分無駄なくびっちり役割が詰まっていて、作務衣の妙な説得力を感じた。伊藤が無茶苦茶なのに友達でいないといけない切なさそ想像。
小峠:前の3組が綺麗なコントが続く中、男臭いゴリッとした笑。ボケもツッコミも外していなかった。
秋山:や団にしかない泥臭さにハマった。尻の穴に指を入れるなんて普通は引く。

5.コットン 人形劇

初っ端のきょんの「演技うまいなぁ」から吹き出してしまい、どのタイミングで2人の掛け合いが始まるのかワクワクしたが、最後まで人形劇に終始してしまってかなりガッカリした。2人のコントが見たかった。

飯塚:設定が人形劇という王道設定なので、新しい要素はないように感じた。
小峠:人形ショーに終始。二人の絡みに期待した。
じろう:もったいないと思った。きょんはいるだけで面白いので、二人の掛け合いが見たかった。


6.ニッポンの社長 野球

同じことの繰り返しなのに、結構早い段階で「声小さい」への怒りからシフトしていったので、飽きずにずっと面白かった。殴られるSEの掛け方もコミカルでバイオレンスさが抜けてたと思う。バットの残数を数えてしまい、あとボケ数こんくらいだなー。とちょっと気が散ってしまった。

小峠:つかみの笑いでいうと一番大きかった。全バット面白かった。
秋山:またこのスタイルきたという部分ではまりこんだ、終盤の語りで叩きまくるのがやばかった。
飯塚:ボケは好きだが個人的にはセットを破壊するのは同じ面白さならない方が好み。
小峠(2周目):飯塚とは逆の嗜好でどんどんエスカレートするのが好きだった。


7.ファイヤーサンダー 毒舌刑事

1番応援していたコンビなので一位通過で感無量。毎度最初のフリに時間を割くのは相当な胆力だし、裏切らない笑いの量が担保されてる。
自分はネタを見過ぎでおおよその展開が読めてしまったが、それでも笑ってしまうくらい2人のコントが好き。

飯塚:完璧だった。想像もつかないような設定。途中から世にも奇妙のようになり、良質なイイものを見せていただいた。
じろう:よくできたコント、種明かしも外してなかった。
山内:毎回設定でワクワクさせられる。あの外さなさがえげつない。


8.cacao 部屋練


じろう:すごいフレッシュな三人で今しかできないよネタを見せてもらった。作りとしてはシンプルだが笑ってしまった。
飯塚:最後の最後だけ唐突に終わってしまったので少しもったいなかった。
山内:動きの面白さもあったが個人的にはもう少しストーリーが欲しかった。


9.隣人

これも爆笑した。またサル!という事で笑いはしなかったが、その後はダンビラと同じでただ馬鹿なだけじゃなくてワードやボケが相当面白かった。現場はそんなにウケてなかったから点数も低めだったのだろうか。

じろう:面白かったが、笑いのとるテンポが平坦、あまりうねりがなかった。チンパンジーの動きから受けている最中に直立に移行したので、もう少し落ち着いてから動かした方が良かった。
山内:面白かったがいつもよりも狙っているところで100受けじゃなかったように見えた。
秋山:PCの面白いこと言う大喜利がもっと欲しかった。


10.ラブレターズ

自分の周囲も絶賛の声多数であるが、自分はそこまでハマれなかった。
自分にはものすごい完成度の高いお芝居の中に、笑いのエッセンスが強く入っているように感じ、軸足がお笑いの方が好みだなぁとは再認識した。
どんぐりぶちまけるのは読めてしまったのもあり。

小峠:引きこもりはよくある設定だが、外に出すかではなくどんぐり1個で
あそこまで展開させるストーリー性。少年時代をかける意味合い。
意味のあるSEが良かった。
山内:どんぐりあれだけばら撒くからネタ順最後にされたのかな。感情がそうはならんだろと最初は思っていたが、だんだんその感情に見る側が追いついてきて新しかった。
飯塚:良いコントとは哀愁を感じるものだと思う。
じろう:意図はないと思うが舞台上を走り回る溜口が小さすぎてそれも良かった。


最終決戦1 ラブレターズ

山内:こんな大事な舞台でなんてカオスな設定のネタなんだ。
それが面白かったし絵面もバリカンハゲの後ろで魚を釣っている。一番面白い構図。
秋山:訳のわからないドラマに吸い込まれた。最初は溜口がやばいやつかと思ったらもっとやばいやつが出てきた。
じろう:個人的には1本目の方が好き。要素が多すぎる割にはお客さんには伝わり切っていなかった。(塚本:ぐちゃぐちゃにしたくて入れた)
小峠:1本目の方が好き。キャラクターは二人とも良かったがどこに向かっているのか。結局なんの話だったのか。
飯塚:ストーリーがもうちょっと欲しかったが、釣りと坊主の構図自体は30分くらい見てられる。単独ライブなら最高だがここでという凄さもある。

最終決戦2 ロングコードダディ

秋山:馬鹿馬鹿しくて良かった。最初一瞬見方に戸惑ったが慣れてくると大丈夫だった。
飯塚:テレビコントとして本当によくできているがやっぱり兎が出てきて二人のやりとりが見たかった。

最終決戦3 ファイヤーサンダー

飯塚:暗転繋ぎはハンデもあるがそれを凌駕するストーリー性があった。
小峠:暗転はあったものの短かったので気にならなかったのと、全裸マラソンをどう仕上げるか気になったが終わり方がうまかった。
秋山:シンプルに感じた。
山内:大事な舞台で一番やりたかったバカなネタをやったラブレターズが良かった。
じろう:少し綺麗すぎたのとラブレターズのニン、マンパワーでなんとかしようとしたのが見えたのが良かった。

5.おわりに

Xのタイムラインも、コットンが1番面白かったという人もいればcacaoという人もいたり、ロコディの2本目のネタだけでも賛否が大割れしたり、終わった今ではダンビラが最高という人もおり。もはや素人目から見ても好み以外の何物でもない大会だった。そのくらいレベルが高かったということの証明と言えるでしょう。

ともあれラブレターズの優勝は本当に感慨深い。17年戦い続けるって凄いことです。当時生まれた子供が高2ですから。

決まった瞬間の2人からは嬉しさありつつも終わったという安堵の表情が見えました。

出場者全員の今後の活躍を楽しみにしています。

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