【COVID-19考③ 医療のカバー範囲は?】
首都圏に緊急事態宣言が出た。 この件については、そこここに書かれているように、そして多くの人が思うように昨年4月の緊急事態宣言とは様々な意味で異なっているので、実効性については私も疑問を持っています。 西村さんが昨日(1/7)言ったような「東京500に戻す」というような基準にしちゃうと、意味のない長丁場になる恐れもあります。
さて、 本稿は、ちょっと別の観点で、医療のカバー範囲について書きます。
現在、重症者は全国で796人(1/7 17:00現在、各種報道)。これに対して、全国のコロナ対応病床数は54,194床(1/7 21:00現在、https://www.stopcovid19.jp/)。 単純な比率は、1.34%です。
医療崩壊なんてしてないでしょ。
では、なぜ医療崩壊と叫ばれ続けるのか。
それは、重症者でなくても入院しているからです。もちろん、重症でなくても治療の必要がある人はたくさん居るし、それが逼迫に関係するのは確かです。 でも、医療は常に、理想と最善の間の妥協を旨としてきたのです。全員に対して、理想的な医療を提供することは、もともとできないのです。
しかし、制度医療保険の特徴であるところの「国民皆保険」「フリーアクセス」は、あたかも、理想的な医療が全員に提供されるかのように見せてしまう。そこのところを今一度考えないといけないのです。 このことは、最初からわかっていることです。だからこそ、医学・医療が完成期にある21世紀固有の問題であると私は思っています。
「医療に完璧を求めるあまり、コロナごときで自分は死なないはずである」 ということです。
ある程度以上の年齢の人にはこの状況が当てはまると思います。翻って、多くの若い人にとっては不顕性感染(症状なし)が多いので、自分ごととしては「コロナはまずい」とは思えない。私の回りに居る医学生や若い医師でも、そのように捉えている人は実のところ少なくありません。 (医学生にしては拙いと思いますけど)。
大まかに言って、この二つの層が混然と社会を成していることが世の状況を複雑化させている、という構造です。
「全員を治療対象とするのか」 もう一度考える時期に来ています。
2021/1/8 朝 Die革命グループ主宰 医師・医学博士 奥 真也