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楽しかった夜のことは、次の日にはもう思い出せない

もう何か月も前のことなのだが、中国人の女の子に恋をした。
この絵はその時ことを描いた絵だ。彼女は日本語が話せない子なので自分の文章なんて読んでるわけないと思い、この絵のことについて書こうと思う。

その子と出会ったのはバーの喫煙所。すごい美人な人がいるなーと思って話しかけたら、向こうも自分に興味を持ってくれて、そのままSNSを交換した。

とはいえ冒頭でも言ったように彼女は英語と中国語を話す子で日本語が話せない。自分の英語はそこまで流暢ではないので、めちゃくちゃ話が盛り上がったわけでもない。ただ互いがどんなことやっててどんな人か会話したくらいだ。

なので、きっとまた会おうともならずに、ただSNSを知っている仲くらいの関係になるんだろうなーと思っていた。
そうしてその日の午前2時過ぎくらい。
もう寝ようと思ってスマホを閉じようとしたときに、彼女からDMが来た。

”I wanna ask if u wanna hang out sometime”
”Seriously teach me skate"

ええええ!?

眠気でほとんど開いてなかった目が見開いて、なんなら起き上がった。

たしかにスケートボードの話はしたが、まさかホントにやってみたいと思っているとは思わなかった。

んで、後日スケボーに行く約束をした。楽しみだった。

遊びに行くまでは特に連絡は取らず、彼女のストーリーを見るくらいだった。

彼女はDJをやっているので、彼女のInstagramにはクラブにいる様子がストーリーにあがることが多かった。彼女のストーリーに毎日映る人たちはマジでイケていた。

え??エイサップロッキー??とガチで勘違いしてしまうくらいイケてる外国人との2ショットがあがった時は「勝てるわけねえ…」と思った。

そんな感じで、彼女の周りには自分より爆発的にイケてる男がたくさんいるので、おれと遊ぶ必要なんかないだろと思った。

そもそも考えてみたら彼女が自分を遊びに誘った意味も分からない。あの日、別に話が盛り上がったわけでもない。気合いの英語をしゃべっていただけだ。バーの数時間だからなんとかなったが、2人で遊ぶとなると盛り上がるかどうか以前に、会話が続くのかどうかすら不安だった。楽しい時間になるはずないだろと思っていた。

そして対戦当日。午後から会う予定だった。

自分は楽しみな気持ちよりも盛り上がるか不安な気持ちの方がかなり大きかった。なので、会う前に友達を呼んで昼飲みをしてから彼女と会うことにした。飲まなきゃ乗り切れない。

直前まで飲んでたので、顔が真っ赤な状態で会った。

会って早々”Have you been drinking?”と聴かれ、飲んできたことが余裕でバレた。
なぜか謎にテンパった自分は"It's too hot hahaha"とかいうホントに意味わからんし大して面白くもない返答をカマした。彼女苦笑い。初手から終了である。

だが実際には、思ったよりも楽しかった。
彼女も自分の話を理解しようとしてくれるし、彼女も日本語を勉強しようと「これは日本語でなんていうの?」とたくさん聞いてきたので、教えてあげたりした。

結局その日はスケボーしたあとに、彼女の友達も合流したりして夜中まで飲みに行った。
なんでおれをデートに誘ったのかがずっと気になっていたので、バーで飲んでいる時に聴いてみた。
彼女に「なんでおれをデートに誘ったの?英語も別に上手く話せるわけじゃないのに」といったら、「前に会ったときに、キミの日本語の発音がSo sexyだと思ったから」と言っていた。

またもや、えええええ!?と思った。てかなんなら、ええええ!?と実際に言った。
そんな感じで、その日は夜中までバーで飲んだりクラブに行ったりした。楽しかった。

でも結局その子とはそれっきりで、その後遊びに行っていない。

自分もその後にロンドンの展示があってしばらく日本に居なかったのと、彼女もちょうど同じころに中国に帰ったので、タイミングが合わず、そのまま関係性も自然消滅した。
自分ももう彼女に対しての気持ちなど全く無いので、今こうやって文章にすることが出来ている。


冒頭で載せた作品は、彼女と遊んだ翌日の気持ちを描いたものだ。

本当に楽しかった夜のことを翌日になってから振り返ると、あれは夢だったんじゃないだろうかと思うことがある。記憶を辿るとすごく朧げで、輪郭がはっきりしていない。彼女がどんな表情をしていたか、全く思い出せない。そしてもう同じような楽しい日は来ないんじゃないかと思う。何か喪失感に似たようなものを感じる。分からない。

この時も翌日、彼女の顔を思い出せなくて、心にぽっかりと穴が開いたような気持になった。なのでその時、この感覚を絵にしようと思った。

再び作品を載せよう。

作品では、パソコンのエラー画面がちりばめられ、彼女の顔がだんだんモザイクがかかっていく。楽しかった日の翌日は、パソコンのエラーように脳内の記憶がショートして、彼女の顔を思い出せなくなる。そんな様子を描いている。

最近ネットの記事か何かで観たんだけど、実際に脳科学的にも、恋をした時の人間の脳はそうなっているらしい。
恋をしている時というのは「その子が好きだ、可愛い(またはカッコイイ)」という気持ちが脳内を埋め尽くして、実際の視覚情報を捻じ曲げて解釈しようとする。そして断片的な視覚的記憶しか残らず、可愛いという感情で、過去の記憶を埋め合わせてしまうらしい。


最近、自分の友達もこんなことを言っていた。
「昔めちゃくちゃ好きだった元カレの写真をSNSでたまたま最近見たんだけど、ひさびさに見たら全然カッコよくないなって思ったんだよね。なんでこの人カッコいいと思ってたんだろと思うわ。付き合ってる時って、麻酔にかけられたんかってくらい現実見れなくなる。」

恋している時は、相手の顔を実はあんまり見ていないのかもしれない。もしくは記憶が感情で上書きされちゃうのかもしれない。恋は盲目だとはこういうことなのかもしれない。



でも、好きな人には言える時に好きって言っといた方がいい。急にいなくなったりするから。

今日はここまで。最後まで読んでくれてありがとう。

(そいえばキャップ買ってくれた人たちありがとう!次のモノもう作ってあるのでお楽しみに。)

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