鷹匠壽 予約への挑戦 5日目
今岩松は、とある事情から新潟行きの列車に揺られながら、この日記を書いている。
理由は最後に述べることにしよう。
昨日の尾行の成果で、鷹匠寿の鴨や鶏の仕入れ先はわかった。
4日間、鷹匠寿で土下座までして、あげく警察を呼ばれかける事態に発展したため
今日は、周りから攻めるべく、肉のとりせんに聞き取り調査をすることにした。
手ぶらでは、得られるものも得られない可能性があるので、
途中、渋谷の東急で手土産の 日本酒を購入し、今日も一人浅草へ向かった。
とりせんに着くと、扉を開けて中へ入った。
入るとすぐに、大量の鶏たちが解体されている現場が目に入ってきた。
すると鷹匠寿とは、正反対の優しそうなおばあちゃんが出てきて、岩松が鴨をほしいことを伝えると
すぐに社長を呼んでくれた。
岩松:鷹匠寿と同じ鴨がほしいんですが。
この社長は見るからに優しそうだ。
社長:あぁ、昨日電話くれたかたね。鷹匠寿さんと同じ天然の鴨は貴重で、とても手に入らないよ。うちは預かっているだけだから。
預かっているだけとのことである。つまり鷹匠寿が、どこかから50羽ほど自力で調達していて、それを保管しているのが、とりせんということのようだ。
岩松:難しいとは思うんですが、鷹匠寿さんに一羽分けてと交渉して頂けませんか?3倍の値段を出します。
優しそうな社長を前に、図々しいお願いをしてみた。
社長:いやぁ、分けてあげたいけど、無理言わないでくれよ。鷹匠寿さんは、お金儲けのためにやってないよ。
ディ●ニーランドの社長とか、松●奈々子さんとか、超有名人がくる店なんだよ。
今の予約は確か5ヶ月先までとか言ってたかな。今預かっている鴨だけでも足りないぐらいなんだよ。
それを交渉なんてできないよ。値段の問題じゃない。お互いの信頼の上で成り立っているからね。ごめんね。
社長は申し訳なさそうに言った。それはそうだ。
岩松:わかります。ありがとうございます。とりせんさん以外から鴨を仕入れることはできるんでしょうか?なんとしても手に入れたいんです。
社長:ちょっと待ってね。
すると優しそうな社長は、携帯を取り出し、2件ほど知り合いの会社にその場で電話をかけてくれた。
〜5分後〜
社長:ごめんねぇ。やっぱりダメだったわ。どこも天然は持ってないよ。
鴨はね、11月15日から3月までの期間しか猟ができないって法律で決まっているんだよ。
今の時期はちょうど悪い時期だよ。たとえ持ってても、売ってはくれないよ。
岩松:なるほど。そもそも鷹匠寿さんの鴨ってどこで獲れるんですか?
社長:詳しくは知らないねぇ。ただ、鴨はね。シベリアなどの寒いところにいてね。
シベリアが寒くなりすぎたら、日本まで渡ってくるんだよ。そしてまた日本が暖かくなると、シベリアに帰っていくんだよ。
岩松:鴨は日本のどこに飛んで来るんですか?
社長:新潟あたりかな。私は鳥博士だからなんでも聞いてよ。鴨が手に入ったら捌き方教えてあげるよ。
とりあえず、これから他の鶏も解体するから、捌きかた見て帰りなよ。
岩松:ありがとうございます!!!
こうして、岩松には、とりせんの社長という強い味方が加わったのだった。
そして、着の身着のまま、浅草から新潟にこのまま向かうことにした。
ちなみに、この件のために 急遽 すき家 渋谷店でのバイトを今日は 休ませてもらったのは、申し訳ないと思っている。
6日目に続く。