鷹匠壽 予約への挑戦 12日目
前回までのあらすじ。
鷹匠壽の予約をとるべく、若旦那に土下座。しかし、首を縦に振らず肩を落として帰ろうかと思ったが、仕入先トラックを追いかけ、鴨の仕入先 肉のとりせんにたどり着き、鴨が新潟にいるという情報をもらう。そのまま新潟に向かい、福島カモ養殖場で、真鴨の肉をゲット。鴨をゲットしたことを鷹匠壽へ報告すると、天然物じゃないことをバカにされたため、大日本猟友会経由で、フランス産の天然真鴨をゲット。
七輪で焼くための玉鋼(たまはがね)の鉄板を作ってくれそうな山奥の刀匠(とうしょう)を見つける。
話しを進めたが、そもそも割れやすい玉鋼を鍛錬し鉄板にすることは技術的に難しいと言われ、一旦白紙に。
しかし、次期人間国宝とも呼ばれる刀匠の吉原氏であれば、作れるかもしれないと名前があがる。
早速、吉原氏へ電話したが断られるも、ダメ元で七輪を担いで直接会いに行ってみると話だけは聞いてくれることになった。
「実は、昔 奥さんと壽に行ったことがあり、玉鋼の鉄板を見たことがあった。さらに良い玉鋼の鉄板を作りたかったので作ってもいいが、出来るとは断言できない」と言われる。カルフォルニアのナパのワインが好きという情報を得たため、七輪を担いでナパに飛び、吉原氏の好きなワインをゲット。
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今朝、岩松の携帯が鳴った。
それは、待ちに待った電話だった。
刀匠吉原さん : もしもし、岩松さんですか? 出来ましたよ。今日来れますか? 私、今日から一ヶ月間 カリフォルニアの工房に行くので、会える時間今日しかないんですよ。
岩松 : え! 出来たんですか!! もちろんすぐ伺います。これから自宅に向かいます!
そして、すぐ会社に置いてあったマイ七輪を抱え、三軒茶屋から京成高砂に向かった。
吉原さんの家について、インターホンを押すと、優しそうで品のある奥さんが迎えてくれた。
吉原さんの奥さん:あなたが岩松さんですか。主人から話を聞いておりますよ笑。さぁどうぞこちらへ。
岩松の話を吉原さんが奥さんにもしているらしい。
吉原さんのいるリビングに通され、簡単な挨拶をすませ、ふとテーブルの上をみると、なんとそこには壽と同じような、鉄板があった。
岩松は、思わず声をあげてしまった。
岩松:すごいっす!すごいっす!かなりかっこいいです!!
刀匠吉原さん:見てのとおり2枚作りました。どちらか好きなほうを、あなたに差し上げます。
差し上げますよ!? 確かに差し上げると聞こえたが、一振り400万円の刀を作る刀匠の吉原氏自らが作った刀2本分の材料を使った鉄板である。
念のため、聞いてみた。
岩松:それで、おいくらで譲っていただけるんですか?
刀匠吉原さん:私の分と、あなたの分と二つ作ったんです。ワインもいただきましたし、いろいろお話も聞かせて頂きましたので、そのお礼です。
岩松:ほんとですか!? ありがとうございます!!
実は、この鉄板を製作していただくにあたり、簡単に吉原さんに断られないよう
前回話に上がっていたワインを買いに、ナパまで行って お土産と称して 吉原さんの自宅まで届けていたのだった。
そうでもしないと、吉原さんとコミュニケーションを取れる手段がないためである。
しかし、まさか、まさか、タダで鉄板を作っていただけるなんて。
刀匠吉原さん:また、使ってみて改善点などがあれば言ってください。8月半ばに帰ってきますのでその時にまた話をお聞きしますよ。
岩松:ありがとうございます! この鴨の件につきまして、すべてが揃いましたら再度ご連絡させていただきます!
とりあえず、最大限のお礼を言って、吉原さんの工房をあとにした。
真鴨は、鳥仙の社長、新潟の鴨養殖所の福島さん、大日本猟友会の事務局長竹田さん。
七輪、鉄板は、次期人間国宝の刀匠吉原さん。ワインは吉原さんの好きなナパのオーパスワン。
足りないパーツは、紀州備長炭、ネギ、椎茸、焼き手。
すべてのピースを埋めるため、岩松は次の旅に出たのであった。