ECサイトの売上を確実に向上させるマーケティング施策とは?
Repro(株)CMOの中澤です。このNoteはECサイト売上向上に取り組み始めた方を対象に書いています。なので、既に取り組みが非常に進んでいる方にとっては当たり前の内容かもしれません。売上向上を実現できているECサイトが鉄板で取り組んでいる、本当に成果が上がる方法とは何なのか?自分の20年に渡りECサイトに携わってきた経験を元に書いていきます。
2020年EC市場は大きく成長したが・・・
2020年感染症の広がりに伴い巣ごもり消費が加速し、結果EC市場は大きく成長する事となりました。
これに伴い小売業全体の商業販売額においても、感染症の第一波の際には一時大幅に落ち込んだものの、各社がEC強化等によるネットシフトを急いだ結果、第二波以降はむしろ前年を上回る形で推移しています。
小売業全体で見れば、ネットシフトを上手く推進できた企業やネット専業企業にとっては、むしろ追い風となった可能性があり、ネットシフトの推進が遅れた企業との間で優勝劣敗が明確に分かれた1年かもしれません。
では、全てのEC事業やネットサービスがこの成長の果実を得る事ができたのでしょうか?
下記の図は弊社(Repro株式会社)が2021年11月に実施した、BtoCサービスの役職者以上に対するアンケート調査の結果です。
このアンケート結果からもわかる通り、ECを含む全てのネットサービスが等しく成長を実現したわけでなく、成長したサービスもあれば、むしろ減退したサービスも存在するようです。
巣ごもり消費の加速、消費のネットシフトという市場全体の追い風があった中にもおい、このように成長率に差が発生するのは何故なのでしょう?
中澤としては、デジタルマーケティングにおける基本的な取り組み、鉄板とも言えるメソッドを着実に行ったか否かという点でこのような成長率の差が出たのでは無いかと考えています。
この仮説は同アンケート調査の結果からもある程度裏付けられたのかなと思っています。今回のアンケート調査では中澤が考案した「デジタルマーケティング組織スキル診断」の問診票をベースに、各5問づつの設問項目を6分野において質問する全30問質問を質問しています。
下記のレーダーチャートが、この6分野の平均スコアと先のグラフの前年成長率を掛け合わせた図です。
気持ち悪いくらいわかりやすい結果となっています。(捏造していません。)
30問の質問は6つの領域毎に、デジタルマーケティングにおける鉄板的施策の取り組み状況を聞いており、成長率が伸びるごとに綺麗に全ての項目の平均スコアが上がり面積が大きくなっていく事がわかります。
つまり成長率の高いサービスほど、デジタルマーケティングにおける鉄板施策を全領域においてバランス良く取り組んだ結果、高い成長率を実現できたと考えられます。
リソース不足が最大の課題。いかに選択と集中を行うべきか?
ECサイトにおける売上向上施策には様々な戦略領域があります。品揃え戦略、価格戦略、サービス向上戦略、マーケティング戦略。どの戦略領域も重要ですが、ここではマーケティング戦略に絞って記載させてもらいます。
マーケティング戦略一つとっても、やるべき施策は沢山あります。しかもマーケティングを取り巻くテクノロジーや施策は日々進化しており、トレンドもどんどんと変化しています。
このような中、多くの企業がマーケターの人材不足・リソース不足に悩んでいるのが現状です。限られたリソースの中で果たして一体どこに資源を集中していけば良いのか、どこまで手を広げなければいけないのかと悩んでいる方も多いのでは無いでしょうか?
実際にReproが行った調査でも実に60%近い企業がこの人材不足を課題にあげています。
このような状況の中で最も大事なのは、やみくもに手を広げるのでは無く、売上に最もインパクトがありかつ着実に効果が見込めるマーケティング施策にリソースと投資を集中する事です。
ではどのような分野に資源を集中すれば良いのでしょう?
その答えは、「とにかくPDCAの量さえ回せば着実に成果が上がり」かつ「対象ユーザーが多くインパクトが大きい」領域であると中澤は思います。
この領域にあるマーケティング施策とはどのようなものでしょうか?様々なご意見はあるかと思いますが、中澤自身の経験、また多くのトップマーケターとの情報交換の中から導いた4つの施策を紹介したいと思います。
この4つの施策は高い成長率を実現しているマーケターにとっては当たり前の施策なので、既に取り組まれている方はスルッと読み飛ばして頂けますと幸いです。またこのNOTEをお読みの方も「なんだ、そんなの既にやってるよー」と言う方も多いかもしれません。
ただ一度振り返ってみて欲しいのですが、これから書く施策に果たしてどこまで本気で取り組んでいるでしょうか?
重要なのは選択と集中です。逆に言えば、他の施策にいっさい手を広げることなく、これから書く内容だけに徹底的に集中して取り組んだ方が、中澤はむしろ売上が上がると思っています。
ECサイトの売上を確実に向上させるマーケティング施策とは?
中澤の考える「最も集中すべき4つの施策」は以下の通りとなります。
集客においては「リスティングとLPO」CVR向上においては「ポップアップメッセージの徹底的なABテスト」リテンション活動では「メールよりLINE」、そして全領域共通して「Webサイト表示速度の徹底的向上」です。
他の活動をいっさい止めてでも、この4つの活動に集中し徹底的に磨き上げる事ができればECサイトの売上は向上すると思っています。
まずは徹底的にWebサイトの表示速度を向上させる
前回のNOTEでも書きましたが、ECサイトにおいて全てのユーザーに等しくインパクトを与えるのがWebサイトの表示速度です。そしてWebサイトの表示速度はかなり高い確率でCVRと強い相関関係を持ちます。
そしてWebサイトの表示速度は、基本的な取り組みを行えば確実に向上します。つまり「やるべき事の答えがわかっている」施策なのです。数あるマーケティング施策の中で答えがわかっている非常に稀有な取り組みがこのWebサイト表示速度の向上です。
よってECサイトの売上を本当に向上させたいのであれば真っ先に取り組むべき施策です。その詳しい理由はコチラの記事を参考にしてください。
徹底的にリスティングとLPOを強化する
次は集客の領域です。
既にCDP等を導入し、流入経路毎のLTVそしてROIを計測している方であれば恐らく同じ結論に達していると思いますが、特に新規集客を目的とした活動の中で最もLTV・ROI共に高い流入経路はリスティングになるはずです。
SEOという声ももちろんあるでしょう。ただSEOには非常に多くの労力と高いスキルが要求されます。そしてコントロールしにくいのが現状です。よって「確実性」という意味ではリスティングに軍配が上がると思います。
リスティングが他の広告施策と比べて圧倒的に高いROIを実現できる理由は以下のとおりです。
そしてリスティングはクリックによってコストが発生するため、その効率(CPA)を良くするためにはその行き先、ランディングページのCVRを如何に改善するかというのが鍵になります。
ここで重要になる取り組みが「LPO」です。このLPOの領域は古くから様々な企業が徹底的に取り組んできた領域でもあり、既に業界には多くの成功方程式が導かれています。
なので不確実性が高い取り組みよりも、圧倒的に業界ナレッジが蓄積されており、改善に向けた答えを得やすい領域と言えます。そして何よりもPDCAの量に応じて着実に成果(CVR)が向上する取り組みでもあります。
マーケティングで確実に売上を伸ばしたいのであれば、何も先駆者になる必要はありません。むしろ業界ナレッジが蓄積されており答えに辿り着きやすい施策ほど成果は出やすいです。
ポップアップメッセージの徹底的なABテストをしまくる
CVR向上領域においても大事なのはPDCAの量です。量は質を凌駕します。不思議なモノでとにかく量さえ回していけば、一歩づつ着実に成果は向上していきます。
Webサイトの表示要素を「CMS」等を用いたり、ECパッケージの管理画面やHTMLそのものを書き換えて行なっていく事はとても大変です。
大変というより問題は「実行までに時間がかかってしまう」事にあります。これでは「量」を稼げません。
よってサイトに来訪するユーザーとのコミュニケーションを最適化しCVRを向上させていくいは、ノーコードでトライアンドエラーを手軽にマーケターの手元で行えるWeb接客ツール等の道入が必須になります。
そしてやるべきことは、とにかく思ったことをすぐに試してみて、徹底的にポップアップメッセージのABテストを行うことです。
実際にアンケート調査を行なってみると、最低でも行うべき「月に5回以上の施策のPDCA」、「ABテストによる効果検証」について、実に半分近くのマーケターが「実施していない」と回答している事に驚かされます。
PDCAはとにかく量、ABテストは顧客との対話です。顧客との対話を積み重ねなければ成果の出るコミュニケーションは行えません。
この基本的な取り組みにいかにリソースと時間を投資できるか、集中して取り組めるかがCVRの向上を左右します。
メールよりLINEに力を入れる
最後にリテンションの領域です。
ここはおそらく賛否がわかれやすい領域だと思います。
しかし多くのトップマーケターとの情報交換、メールとLINEの実績値の比較を見るに、現在においては圧倒的にメールよりもLINEの効果・効率が高いと言えると思います。
BtoBの世界においては未だメールは最重要なコミュニケーション手段です。しかし皆さんは普段の生活の中で、どの程度個人のメールを確認しているでしょう?(中澤自身はどっちも見ないんですけどね・・FBメッセンジャーしか見ていない・・)
仲の良いマーケターに実績数値をコッソリ見せて貰ったのですが、やはり、クリック率、CVR共にメールよりもLINEの方が成果が高いようです。
ただ間違って欲しく無いのは、メールが不要というわけではなく両方取り組むべきという点です。ただ、売上を向上させるための「販売促進型のコミュニケーション」や「機会損失削減アプローチ」には、メールよりもLINEの方が優れていると思います。
メールに対するLINEの優位性はいくつかありますが、その中でもCVRに結びつきやすい代表的な要素として以下があげられると思います。
まとめると、メールよりもLINEの方が「テンポ良くやりとりができて、かつコミュニケーションにおける表現力が高い」ということかと思います。このことから販売促進型コミュニケーションや機会損失削減アプローチにより向いていると考えられます。
よくLINEは友達ブロックされやすく、メールはLINEほどオプトアウトされにくいという話を聞きます。
ただそれはあくまでも「メールの方がオプトアウトが面倒くさいから」に他なりません。実際にクリックを元に導線のアクティブ率を分析することをおすすめします。クリックすなわちアクティブという観点で言えば、LINEの方が高くなる可能性があります。
最後に・・
ECサイトの売上を確実に向上させたいのであれば、トレンドや他社事例に惑わされることなく、とにかく徹底的に基本的な鉄板施策を行うことです。
そして限られたリソースと投資資金を分散させることなく、「ノウハウ関係なくとにかくPDCAの量さえ回せば着実に成果が上がり」かつ「対象ユーザーが多くインパクトが大きい」領域に集中すべきだと思います。
時代の先駆者になる必要も、奇をてらった施策も行う必要は全くありません。何よりも「着実」である事が重要なのです。
カンファレンスやイベント、そしてマーケティング系のメディアサイトを見ると、様々な先進事例が発表され、ベンダーは新しいソリューションをこれでもかとばかりに提案してきます(Reproもそのベンダーの一つではありますが・・)。
中澤も事業会社側の経験が長かったこともあり、これらの取り組みや事例をみると自然と心が焦り、つい新しい取り組みに目が奪われがちになったりしてました。
しかし実際に高い成長率を実現しているECサイトでは、今回紹介したようなまさに基本的な取り組みをとにかく徹底的に行なっているモノです。それらをやり切った上で、それよりも更なる高みを目指し、新たな領域にチャンレジしています。
リソースやお金はいつでも十分には無いものです。本当の意味での集中と選択を行うことで、この記事を読んで下さった皆様のECサイトが少しでも売上向上につながれば幸いです。
あ、いまさらなんですが、ECサイトにおいて最も売上向上にインパクトがあるのは、実はマーケティング施策以上に「マーチャンダイジング」だったりするので、この辺のことは後日またNOTEに書きたいと思います。
それでは最後までお読みいただきありがとうございました!内容が気に入った方はぜひフォロー、またTwitterなどで拡散してもらえると助かります。