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デジタルマーケティング年表、その歴史とこれから

今日は中澤です。株式会社Reproの取締役CMOをやっています。自己紹介はコチラ

セミナー講演で必要となり、デジタルマーケティングの歴史を年表形式でまとめたところ好評でしたので、せっかくなのでnoteにまとめる事にしました。

自分がデジタルマーケティングに関わり始めたのが、ちょうど2000年なので、それから約20年近い月日がたち、業界ではすっかり古株となってしまったわけですが、その20年の間にデジタルマーケティングを取り巻く環境は大きく変わり、新しい技術や手法がもの凄い勢いで登場してきました。

自分の歴史を振り返りながら、独断と偏見にもとづいて、デジタルマーケの歴史をまとめてみたいと思います。

黎明期 1990年代~1999年頃 

1994年、米国大手電話会社のAT&T社がオンライン雑誌「HotWired.com」に世界で初めてバナー広告を掲載。デジタルマーケティングが産声を上げた瞬間です。その翌年1995年にはAMAZONが公式サービスを開始、またPCの世界ではWindows95が発売され、PCの普及が一気に進みます。

当時はまだ個人の通信環境も「28.8kbpsモデム」という、今では信じられないような低速度の環境が主流でしたが、「128KbpsのISDN」の登場により、情報感度の高いユーザーの間でネットは急速に普及し始め、1996年、日本のネットサービスの本格展開を象徴する「Yahoo!Japan」をはじめ、様々なサービスがその産声をあげていきます。

この頃ちょうど自分は、家電量販店のソフマップで店員として働いており、Windows95が発売された時の秋葉原の熱狂的な状態をよく覚えています。まさに時代の転換が訪れるという事を、肌を持って感じた瞬間でした。

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発展と成長 2000年~2009年頃

2000年に入りGoogle、AMAZONが次々と日本市場に参入し、PCをベースにしたEC及びネットの時代が幕を明け、多くの企業が自社ECを立ち上げようと動き出します。これらの動きも一つの背景として、市場では「ITバブル」が発生。それからの10年間はPCをプラットフォームとして、ネットサービス、そしてデジタルマーケティングは急速に発展を遂げていきます。

特にデジタルマーケティングの大きな転換点となったのが、それまで主流であったディレクトリ検索から、Googleによるテキスト検索への検索市場の急速な変化です。これにより、それまでは考えた事も無かった、「SEO、LSTG」という新たなデジタルマーケティング手法が一気に市民権を得ていきます。

従来のオフラインのマーケティング手法や、考え方の延長線上である意味対応する事ができていた「ディスプレイ広告」から、完全に考え方の異なる、本格的なデジタルマーケティングが必要となった起点はこの検索革命であったかもしれません。

そして、ソーシャルネットワークサービス、動画など、通信環境の高速化に伴い、デジタルネイティブなマーケティング手法が次々と発展してき、この期間にデジタルマーケティングは大きく成長を遂げます。

ここで少し、自分の歴史も紐解きたいのですが(興味の無い方は読み飛ばして下さい!)、自分が初めてネットに直接関わったのが2000年でした。

EC市場に対し、ソフマップはかなり高い野心を抱いており、当時本気でAMAZONを超えるECサービスを立ち上げ、日本のECで圧倒的なトップの立ち位置を取るつもりでいました。

当時すでにソフマップは「360万人のカード会員」を保有しており、オフラインの顧客データに紐づいて購買データを保有している事を強みの一つと認識していました。

そして、当時まだどこも実現できていなかった「クリック&モルタル(今で言うOMO)」型のECを構築しようとプロジェクトを発足させます。自分はそのプロジェクトに抜擢され、ECサイトの「IA(サイト設計)」と、クリック&モルタルを体現する「OMOサービス」の企画・開発を担当する事になりました。

結果、完成した「Sofmap.com」は2001年に当時日本一となる年間売上86億円を売上げ、自分が企画した「持ち物帳・買い物帳」はその年の日経EC大賞を取る事ができました・

「持ち物帳・買い物帳」がどんなサービスかと言うと、ECサイトにオフラインで保有するカード会員IDでログインすると、リアルのユーザーIDとオンラインのIDが紐付き、ECとリアル店舗それぞれで購入した商品が履歴として表示されます。

また、商品JANコードか商品名で検索する事で、「ソフマップで購入していない商品も持ち物として登録」でき、結果、自分の保有するPCや家電製品を「デジタル資産」として管理できるという仕様でした。

そして「持ち物帳」に登録された資産は「自動的に査定金額(ソフマップ買取金額)が算出」され、自分の保有する資産の現在価値の把握と、オンラインでの売却を可能にするという、当時、世界でも希なサービスでした。

2001年当時で既に、CDPを構築し、オフラインとオンラインの会員連携と行動データの連携を果たし、ワンツーワンのOMOサービスを実現していたわけで、今思えば、時代先取り過ぎ!でしたね。

時代が早過ぎたせいか、当時はあまり利益面には貢献できず。最近ソフマップがリリースしたアプリ「Raku-uru(ラクウル)」で、そのままの名称「持ち物帳」として機能搭載されていたのには驚きましたが、Raku-uruの成功をとても応援しています。

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多様化 2010年~2019年現在

2010年から現在までの期間のデジタルマーケティングは、まさに多様化の時代でした。

この10年で最も大きな変化は「PC」から「スマートフォン」を中心とした世界への移行です。2017年にスマートフォン保有率がPC保有率を上回り、ユーザーとネットの接触時間が増加、そして顧客接点も多様化し、デジタルマーケティングは複雑性を増します。

世界ではGAFA、日本ではLINEがプラットフォームとして不動の地位を確立し、これらのプラットフォーマーと「いかにうまくお付き合いするか」も、デジタルマーケターの主要な業務の一つとなってきました。

そして同時に、様々なマーケティング手法や、ツール、媒体が発生し、接触チャネルですらも多様化していく中で、現在デジタルマーケティングを取り巻く環境は、極めて多様なカオスな状態となっています。

そのような中で企業の組織や体制にも変化が生まれます。

常に最新の技術動向や、プラットフォームの方針変更等のトレンドを追う必要が生じ、多様化した環境に対応するために、高度に専門的な知識や技術が、それぞれの分野に応じて必要となっていきます。結果、組織体制はオウンド、ペイド、ソーシャルなど、それぞれの領域に応じて分業され、担当者も専門領域毎に細分化していきます。

組織や領域の細分化は、顧客を中心とした全体の体験設計「エクスペリエンス・ジャーニー」をコントロールしていく事を、より困難にしました。体験価値の重要性が高まる中、この状況に多くのマーケターが危機感を持った結果、最近、カスタマージャーニー等への関心が高まっているのかもしれません。

しかし、カスタマージャーニーやエクスペリエンスジャーニーを描き、戦略を描けば描くほど、オウンドメディア、ソーシャルメディア、メール、LINE、CRMといった、コミュニケーションマーケティングだけでは、顧客体験を構築しきれず、体験を実現させる「体験装置そのもの」を生み出さないといけないという事に、気付かされます。

ここら辺のところは、こちらのノート「マーケティングとは何か?」で詳しく書かせて頂いているので、ご興味があればどうぞ。

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統合化 2020年〜2030年

そしてこれからの10年・・・。5G、IOT、AIといった技術的普及を背景として、ビービットの藤井さんが著書で述べているように、まさに「アフターデジタル」の世界が到来すると考えています。

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ユーザーの求める価値は「製品価値」から「体験価値」へと移行し、オフラインがデジタルに包括される事で「OMO」による体験が通常となります。

そして、マーケティングセグメンテーションの手法は、これまでの属性や趣味志向から「状況ターゲティング」が主流となり、「顧客体験を最大価値」として企業活動を最適化する必要性から、「状況によるセグメント単位と体験提供」を実現する形に組織の在り方、バリューチェーン自体が大きく姿を変えていくと予想しています。

マーケティング組織は、オフラインとオンラインを跨ぐ「統合マーケティング」体制となり、その中に「体験装置(サービス)」を開発するチームも内包される事になると思います。(IDOMは既にその体制です)。マーケターの役割も大きく変わっていきそうですね。

企業の多くは、半ば強制的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を行う事が要求されてくるでしょう。その中でも特に重要になってくるのが、アプリの存在と体験設計です。この中には、スーパーアプリへの対応(ミニプログラム)も含まれます。

また、これまで固定資産的に捉えられていたオフライン資産を、デジタルを用いていかに流動化させ、異なる価値を持たせるのか、といった視点も必要です。具体的には「人のオムニチャネル化」や「店舗自体のデジタル化」といったテーマです。

もちろん言わずもがなですが、IOTによる顧客とのデジタル接点の増加により、データ量は膨大となり、そのデータをいかに知見に変え、AI等を活用していくのかが、重要な競争力になっていく事は当然と言えます。

ただ、どれだけデジタル技術やAIが発展していくとしても、結局はその中心にいるのは「人」であり、最も重要なのは「どのような顧客体験を実現するのか」という根本的なコンセプトになりますので、この本質を見失ったマーケティングは決して成功する事は無いと思います。

あくまでも私見なので、信じるか信じないかは、あなた次第です!(都市伝説風)

なお、アフターデジタルについては、こちらのNoteで詳しく書いていますので、よろしければご参照頂けますと幸いです。




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