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LTVを高めるたった一つの方法 Part4

今回は、ECをモデルとした場合に、LTVを向上させる為に、どのような戦術を取っていく必要があるのか、その優先度も含め、毎度ながら独断と偏見に基づいて考えていきたいとおもいます。


Part1のおさらい

Part1の投稿で、LTVを高めるには「本質的価値」を上げ、「取引コスト」を下げる事で、「総和としての競争力」を高め、ユーザーから選択される確率を上げる必要がある、という趣旨の説明をさせて頂きました。

【本質的価値】
ユーザーが解決したいと考えている課題に、直接的に応える価値。ECをモデルに考えると以下の通り。
・品揃えの豊富さ(そのユーザーの感じる品揃えの充実度)
・商品価格の相対的お得さ(他店と比べた価格競争力)
【取引コスト】
・探索コスト
商品検索の容易さ、レコメンド等のマッチング精度、購入判断のしやすさ(レビューとか)など
・交渉コスト
クーポン、ポイント制度、決済手段、配送日数、受け取り手段、チャット相談など
・監視コスト
ブランディング(信頼性)、出品者評価、EC事業者自体に対する口コミや評判など

なお、ユーザーがそのECを何度も繰り返し利用している場合には、「慣れ」という「スイッチングコスト」が高まり、上記、取引コスト全てが下がっていきます。

ただし、ユーザーを囲い込む事は基本的に難しく、ECサイトに対するブランドロイヤルティなどは、あまり期待できないため、総合力が競合他社より相対的に劣った場合には、常に「スイッチ」される可能性がある事を肝に命じておく必要があります。

まずは本質的価値を高める必要がある

ECサイトの「品揃え」や「価格」をコントロールできる立場にあるのであれば、真っ先にやるべきは、顧客戦略に基づいた品揃えや価格の調整です。単品通販等の場合や、メーカー直販の場合には、コントロールの制限が大きいため、この戦術は取りにくく、「取引コスト引き下げ戦術」に注力する事になります。

通常、リアル店舗の収益計画を「価格と品揃え」(マーチャンダイジング)の観点から考える場合、粗利高をKGIとして、GMROIや粗利プロフィットミックスの軸で設計する事が多いかと思いますが、物理的な制約が少ないECの場合には、顧客戦略の観点からの設計が比較的容易であると考えられます。

顧客戦略の観点から「価格と品揃え」を考える場合、重要な事が、「ユーザーが、どのような商品カテゴリーを購入する際に、自社のECを優先候補として選んでもらうのか」を決める事です。

「ヘッドフォン買うならまずあそこだな」とか、「おもちゃを買うならまずあそこだな」といった具合に、ある商品カテゴリーの購入を検討する際に、できれば第一優先、少なくとも「選択肢に必ず入る」事が必要になります。

そして、「そのカテゴリーにおける顧客選択の優先位置の特等席」を確立した上で、そのカテゴリーを軸として、周辺カテゴリーの品揃えの充実と価格優位性を構築していき、「カテゴリーの抽象度を上げる」戦略を取ります。

上記の例であれば、ヘッドフォンというカテゴリーで第一選択肢に入るポジションを確立し、その周辺となるスピーカーやDVD等の再生装置といった周辺カテゴリーを攻略し、「オーディオと言えばあそこだな」という風に、カテゴリーの抽象度を上げ、より広い顧客選択を捉えるようになる、というイメージです。

何のカテゴリーで「ディスティネーション・ストア」を目指すのか

このような、ユーザーがどこかのお店に行く時の動機や目的となる商品カテゴリーを、「ディスティネーション・カテゴリー」と呼び、「この商品カテゴリーを買うなら、まずあのお店だな」という風に、まず最初に思い描く店のことを「ディスティネーションストア」と呼びます。

LTVの向上においては、あるカテゴリーにおいて「ディスティネーションストア」のポジションを確立する事が最も重要です。では、どのようなカテゴリーをその対象とすれば良いのでしょうか?

すでに運用中のECサイトであれば、ここで、Part3で紹介したCEMの考え方が利用できます。LTVの高い顧客群をセグメントし、それらの顧客の「初回購入時の支持商品カテゴリ」と「継続利用時の支持商品カテゴリ」を分析する事で、自社の中心顧客層が、自社をどのようなカテゴリーを購入する場所として選択しているのかを、把握します。

CEMでは、顧客を獲得年度別のコーホートで把握しますので、時系列の変化も同時に把握する事で、ディスティネーションカテゴリの支持率の変化や、自社の競争力も同時に把握していきます。

その上で、クロスセルを通じて、どの「抽象度」のカテゴリーに拡大していくのか、その際に他社と競争優位なポジションを取りうるかといった、戦略的な観点を加味した上で、軸となるカテゴリーを決めていきます。

ちなみに、カテゴリー支持率は以下の数式で求められます

カテゴリー支持率=カテゴリー購入ユニーク客数÷ユニーク購買客数

ディスティネーション・カテゴリを軸にした価格戦略

主軸カテゴリーは、ユーザーがそのECサイトを選択肢に入れる「理由」そのものとなるため、「品揃え」そして「価格」両面において、他社と競争優位なポジションを取らなければ意味がありません。

よって、ある程度GMROIを犠牲としてでも、「戦略カテゴリー」として、品揃えの充実度と、価格優位を行う必要があります。

鉄板の戦術としては「ポイント」を利用し、主軸カテゴリに大きく「ポイント還元率」を設定し、価格コム等のサイトで、実質価格として「優位」なポジションを確保します。(ECサイトの信頼度との掛け合わせで取りうる場所が異なります)

そしてクロスセル対象となる周辺カテゴリの、粗利率は若干高めに設計し、ポイント消化対象としての、クロスセル購入を促し、主軸のカテゴリーにおけるポジショニングを確保しつつ、「顧客単価(1取引単価では無い)」を高め、プロモーションコストも含めたROI、LTVを高めます。

プロモーション活動との連動

今回の目的は、LTVという顧客戦略指標をゴールとして、ある商品カテゴリにおいて「ディスティネーション・ストア」としてのポジションを確立する事にありますから。当然ながら「プロモーション活動」ともリンクしていく必要があります。

まずユーザーが、その商品カテゴリの検討活動を行う際に、接触可能性の高い媒体面で「優位なポジション」を確保する必要があります。価格コムは前述の通り、確実に抑えつつも、「如何に検索面を抑えるか」が重要になります。

特に、検索面を効率良く抑える為には、Listingのみでなく、「総接触面積」を如何に広げるかが重要です。つまり、あるカテゴリを検索すると、必ずコイツいるな・・・という状態を作るという事です。

アフィリエイトや、作成するコンテンツ、価格コムでの上位表示、全てに共通しますが、「全商品カテゴリー」に力を分散するのではなく、「ディスティネーション・カテゴリ」に資源を優先配分します。アフィリエイトの報酬体系の設計等にも工夫が必要です。

【検索の総接触面積を拡大する】
直接的
・SEO
・コンテンツSEO
・Googleショッピングサーチ
間接的
・アフィリエイト
・価格コム

CRM的な活動においても、また同様と考えられます。

商品詳細ページ情報の重要性

もう一点、プロモーションの延長として重要なのが、商品詳細ページの情報充実度です。これも、全てのカテゴリーに力を分散せず、ディスティネーションカテゴリに注力します。

具体的には、差別化要素が大きく、店舗としての専門性や信頼性に寄与する「商品説明動画」「バイヤーの試用レビュー」といったモノの充実が考えられます。但し、労力がかかる為、選択と集中が重要です。

そしてクロスセルによるプロフィットミックスで、顧客粗利を高める必要がありますので、商品詳細上のレコメンドとしても、クロスセルのレコメンドが重要になってきます。アマゾンが行っている「合わせ買いだと送料無料」といったアプローチは、実質的なコスト(配送料・値引き)を伴わずに、ユーザーにとっては「実質的な値引き」として感じさせる事ができるため、非常に有効な施策だと思います。

取引コストの削減

ここまで、「本質的価値」の向上を中心に書いてきました。LTV向上策のもう一つの側面「取引コストの削減」については、次回書きたいと思います。

あくまでも、自分の経験に基づく、独断と偏見による内容となっていますので、「それは違う!」というご意見をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、あくまでも「こういう方法もあるよ」という参考として、ご理解頂けると幸いです。

なお、本稿はPart1の続きの意味合いが強いので、Part1をまだお読みで無い方は、合わせてご覧ください。(参考になったよ! という方は、ぜひ、「スキ」か「シェア」をお願いします。ぺこり)




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