データ分析における”難問”② ー カスタマーがサービスと接触する前後が知りたい
前回の続き:
さて、順番が前後するが、今日は「カスタマーがサービスと接触する前後について知りたい」という問題について説明したい。
[現状] 既存のカスタマーについてはデータ分析が行える
例えば、スマホアプリやWebをタッチポイントとするようなサービスを考えた時、既存のカスターがサービスをどう使っているかという情報については様々な分析を行う事ができる。
例えば、
そのサービスが目指しているUXがあるとして、
・目指しているUXを体感できているカスタマーがどのくらい居るのか?
・そのUXを体感する事が事業としてのKPIに繋がっているか?
・ある機能改修を行った事でカスタマーの行動はどう変わったのか?
等の、現在、カスタマーがサービスをどう使っていて、その結果どうなっているのか? という分析を様々な観点から行う事が出来るだろう。( そこには「相関ではなく因果が知りたい」という大きな課題はあるが... )
[課題] 新規カスタマーになる以前や離脱した後の事は分からない
しかし一方で、
「そもそもサービスをまだ使い初めてない潜在顧客はなんでこのサービスを使ってくれないのか」だとか
「サービスを使うのをやめてしまったカスタマーは何故やめてしまったのか?」といった疑問に社内にあるデータから答えを出すのは相当困難だ。
というか、データが無いのだから定量的な分析は出来ないと言い切っていいかも知れない。
別の表現をすると、カスタマーの時間軸に沿って考えた時、自社内にデータがあるのは、「新規」になってから「離脱」するまでの間だけだが、ニーズとしては、(?)になっている部分も知りたい、というギャップの問題だ。
P.F.ドラッガーが似たテーマについて言及しているので引用したい。
コンピューターは定量的なデータを処理するだけである。データを非常な速さ、正確さ、精密さをもって処理する。これまで不可能だった大量のデータを提供する。
しかし大体において、速く定量化できるデータというものは、組織の内部についてのデータである。(中略)外の重要なことは、もはや手遅れという時期になるまで定量的な形では入手できない。
「ドラッカー名著集1経営者の条件」”働く者を取り巻く組織の現実”の章より
そもそも会社の中で入手できる定量的な情報という時点である種のバイアスがかかっているデータであり、会社の中で入手できる定量的な情報のみにもとづいて意思決定するのは危険だ。
[解決策] 組織の外にある情報の入手
さて、ここまでの所、以下のトピックについて話して来た。
・社内で定量的なデータが手に入るのは、既存ユーザーについてだけ
・しかし、サービスを改善するには新規になる以前や離脱した後についても分析したい。
・しかも、社内で手に入るデータのみにもとづいて意思決定することは危険
では、どうしたらこの課題を解決できるのだろうか? 正直私もよく分からない。
しかし、解決の方向性は大きく分けて以下の2種類だろう。
1. 社外にある定量的な情報を調達する。
2. 社内にある定性的な情報を意思決定に取り入れる。
まず、「社外にある定量的な情報を調達する」というアプローチについてだが、例えば、App Annieというスマートフォンアプリの市場調査サービスがある。
もちろん、自社のデータを直接分析することに比べると、出来ることには相当な制約があるが、社外の定量的なデータが少しでも手に入る手段という点で貴重である。こう言った社外の定量情報が入手できる手段を拡充していくというのは一つのアプローチかも知れない。あるいは伝統的な市場調査などもこのカテゴリに分類できるかも知れない。
そして、データが手に入らない社外の状況については定性的な情報から推測していくというアプローチもあるだろう。この場合は具体的にどういう定性的な分析を行うべきかといのが問題になるかも知れない。
もし、自身の役割を「データを分析する人」と位置付けるのであれば、このような問題からは目を背ける事も可能だろうが、私は自身の役割を「意思決定を支援する人」と位置づけたいので、こう言った問題についても引き続き考えていきたい。
まとめ
少々散漫な文章になってしまったが、今回は以下のテーマについて話した。
・社内にある定量的なデータは、既存ユーザーについてのデータだけ。
・しかし、私たちは「新規になる前」や「離脱した後」のことについても分析したい。
・その為には、社外から定量的なデータを調達するか、社外についての定性的な情報を活用していく必要がある。しかし、その具体的な方法はまだ見えていない。
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