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奥森皐月は結婚した。私は結婚したくない。

最近は奥森皐月のブログをよく読んでいる。彼女の文章は読みやすく、内容が詰まっていて面白い。仕事で散々文章を書いてきたからそうなったのだろうか。全く羨ましい限りである。

私が読んだ中では、彼女が書いたブログや記事の中に、2〜3回ほど結婚の話題が出た。彼女が言うことには、「結婚できてラッキー。だけど生活にそこまで変わりはない」らしい。あれだけ騒いだ世間に対して、彼女の中での比重はかなり軽い方に位置しているようだ。年齢のことを考えれば納得するし、私はそれをとてもいいことだと思っている。

私は多分結婚を重く考えすぎている。だから死ぬほど結婚したくないけど結婚する夢を寝てる間に見たりする。小中学生の頃から親に孫の顔が見たいと言われたり、友達と結婚できなさそうなのは誰かと議論したり、家にあったOL進化論を読んだり、Twitterに子育ての持論を書いたツイートが流れてきたり、そういう生活が私の中での結婚の比重を重くさせたんだろう。漠然と「結婚しなきゃ」と思ってきた。これまでは。

今は絶対に結婚したくないと思っている。理由は四つ。

一つは子供が欲しくないから。私は子育てに向いている性質じゃない。まず人との関わりがめちゃくちゃ苦手である。出会った友達にはかなりの確率で見限られ、たまに会う人からは「怖い」と言われる。田舎出身なことも災いしている。人生において出会う人が少ないというのはかなりビハインドだ。おかげで高校時代に男友達を作ることはなかった。人と関わるのが苦手だ。当然子供との関わり方もわからない。何より、私は自分の子供のことを自分の所有物だと思いそうな性格だ。私には姉がいるので奪われることには慣れている。だから自分のものに執着しがちになってしまう。それが人間も例外ではない可能性が、十二分にある。そうなってしまうのが怖い。だから人を育てる責任を持てない。

一つは全力で好きになると飽きる性格だから。おそらくイナゴ気質である。何か一つに熱中してFAを描いてきたタイプのオタクではあるが、その熱中が続いたためしはない。一つのジャンルを長く愛するタイプじゃないのだ。オタクのよく言う「殿堂入り」システムも私には存在しない。別のジャンルに移ったとき、前ジャンルへの愛情はどうしても薄れる。ほとんど無かったことになったジャンルもあれば、若干嫌いになってしまったジャンルもあるのだ。なんなら保育園の頃からずっと好きだったイラストも私の手元から無くなろうとしている。あれだけ私を興奮させていた創作ができなくなっている。一番長い付き合いですら遠くに行こうとしてるのに、人間でそうならない根拠はあるのか。結婚したらいずれバツがつく、もしくは冷めた夫婦関係になる。そう考えると結婚は避けたい。相手にも迷惑をかけることになるので。

一つは恋人から結婚の話題を出されているから。恋人は精神障害を持っていて、私は恋人の精神的支柱でありたいと思って付き合っている。しかしメンヘラはそんな軽い覚悟で付き合えるものじゃない。精神障害者保健福祉手帳1級は伊達じゃなかった。人生を全部預けてくるし、そのわりに変なところで遠慮しては抱え込んで死のうとするし、自己完結して人の話を聞かずに泣く。ついでに社会生活がドヘタクソ。そして自己肯定感が地に落ちているため、人から肯定されようとして自慢と思われる話ばかりする。恋人は自慢したくて言ってるわけではなく、ただ相手にとって価値がある存在だと証明したくてやっていることなんだろうと推測はできるが、それでも自分がすごいと思われたいだけの話をされるのはなかなか心にくる。誰に話してるんだろうと思うことが多々ある。そんな恋人から結婚しようねと言われてみてほしい。私は結婚したくない。朝から晩まで毎日関わっていたら確定でノイローゼになる。介護ノイローゼだ。まあ恋人は浪費癖があって貯金ができないので、私が貯金しない限りは幻想だと笑い飛ばせるだけまだマシなのかもしれない。

一つは自分の性的指向がわかってないから。正直ジェンダーもセクシャルもわかってない。セックスはさすがに分かる。私は女として産まれてきた。だけど来世は絶対に男がいい。これが私の性格から来るものなのか、それとも性的指向から来るものなのか一切判別がついてない。私はレースやフリルよりもパーカーやジャケットが好きで、大きくて格好いいものが好きで、これまで推したキャラクターは男が多くて、甘いものが好きで、文系で、可愛いものが好きだけどその可愛いの指標は多分ちょっとズレてて……正直どんな性別でも当てはまる嗜好だ。曖昧なことに腹が立つ。型に当てはめられるものでもないが、どうにかして当てはめたい。私はたぶん肝心なところで頭が硬い。関わる人は可哀想に、この時代錯誤と付き合っていかなくてはならないのだ。ご愁傷さま。
ついでに私は恋が苦手だ。多分、今までに恋したことはある。そう思う人の大抵は男だ。だけど、私が女だから女子相手に恋はしていないと思い込みのストッパーがかかっていた可能性がある。可能性があるだけで、本当に恋できるのかどうかが分からないので困っている。恋人がいるのにおかしな話だと思うかもしれないが、私が恋人に抱いているのは愛と執着と献身だ。恋とかいう心拍数が上がって顔の熱くなる可愛らしいもんじゃない。仕方ないな、と思って身を削れる覚悟じゃないと恋人とは付き合っていけない。熱中とかいう自分のコンディションを上げる感情ではなくて、だから長く付き合えているのかもしれない。私はきっと恋した人とは結婚できない。まあもう二度と恋はしないと決めているのですることはないだろうが。今の恋人なら恋はしてないしいいんじゃないか、と一瞬でも思った人はさっきの項目をもう一度読んできてくれ。

奥森皐月は私と全然違う。彼女は好きになったものをとんでもない熱量で長く愛せる人だ。月にお笑いライブを150本以上見ていたり、小学生のときから好きだった芸人と結婚したことが証明している。なんなら彼女は美術館や神社やカフェ、さらに仕事まで好きらしい。とっても好きなものがたくさんあるのはいいことだ。きっと彼女の周りではいろんな愛すべきものが目まぐるしく飛び交っているんだろう。結婚もそのうちの一つで、だから大々的に書くものでもないと感じているのかもしれない。すべて推測である。でも、そうだったらいいな、と思っている。大抵の場合、女性は20代後半、男性は30代以降から結婚に焦り始める。周りの人がどんどん結婚していって、親や友達も急かす空気を出してくる頃合いだ。彼女がその焦燥の中に放り込まれることがなくて良かった。まだ結婚に対しての焦りも追い立てられる感覚もない時期に結婚して、独身で社会生活を送っている限りは必ず参加する結婚レースから一抜けることができたのだ。余計なストレスを感じることなく好きなことに夢中になっていてほしい。勝手なお願いである。

歯医者代がかさんでおり……(同情を誘う文章)