相談相手の手のぬくもり
京都駅からとくに話題もなく、私はなんども地図をみながら道を間違えてないか確認していました。
迷うような行程ではないのですが、ほかに所在がなくて。
東寺につき、立体曼荼羅に圧倒され、一人で眺めていました。彼女はその時どうしていたかわからずにいました。それだけ仏像に引き込まれていました。
あとから聞いたのですが、この時に会話するでもなく、そばにいてみるでもなく、お互いがいい距離でその空間にいられたことが彼女にとって、とても思い出深かったとのことでした。たびたびこの時のことを彼女をしみじみ話してくれます。
どのくらいの時間が経ったのかまったくわからずに、暗いお堂をでたところで彼女がいました。
明るい陽の光がさしていたのですぐにはわかりませんでした。
お堂と周りの道には段差がありました。
遠回りしたら小さな階段があるのですが、そちらには行かず、ちょっと段差のあるところで降りようとしていました。
私が先におりたこともあるのですが、彼女は視線をあわせず、私に手を差し伸べてきました。
お互いに緊張していたのか、手が震えていました。
通路に移動し、もう繋いでなくてもいのに、離すのが名残惜しいのですが、ゆっくりお庭にまわってみましょうか、といいながら、手を離しました。
離す理由はなかったのです。
繋いでいる自信もなかったのです。
何かに導かれていたような感じとどうしたらよいのだろうかとい不安を感じていました。
(続く)