線維筋痛症、どんな病気?


線維筋痛症はこんな病気です。線維筋痛症は身体の広範な部位に疼痛をきたす原因不明の慢性疾患です。リウマチ性疾患に分類されていますが、自己免疫の異常や炎症はみられず、機能的な(機能の働きに異常を生じる)慢性的な痛みにより、日常生活における動作や生活の質が大きく損なわれますが、器質的な組織破壊などをきたすことはなく、生命が脅かされることもありません。線維筋痛症の原因はいまだ不明です。末梢神経からの痛み刺激を脳に伝える上行性経路において中枢の興奮経路が賦活化(活性化)され、さらには脳から末梢神経へとつながる下行性の疼痛抑制(痛みを抑える)経路にも障害が起こることにより、痛みが中枢において増幅されてしまうこと(痛みの中枢性感作)が疼痛をきたす原因と考えられています。線維筋痛症は小児や高齢者にも発症しますが、成人の女性に多い病気といえます。線維筋痛症の症状線維筋痛症の主症状は慢性疼痛で、疼痛部位は右・左半身、上・下肢、体軸部など全身の広範囲に及びます。筋肉や関節、軟部組織などの自発痛が中心ですが、痛みの部位と程度は日によって変化するだけでなく、日内変動も認められます。また、気候の変動(台風や低気圧の接近、気温変化)などの外的環境要因、さらには、感冒などの感染症への罹患や激しい運動、睡眠不足、精神的ストレスなど、さまざまな要因によっても症状は悪化します。疼痛だけでなく関節リウマチに類似した朝のこわばり感もみられます。一方、線維筋痛症では多彩な身体・神経・精神症状をきたすことが知られています。疲労感や全身倦怠感、頭重感・頭痛(片頭痛、筋緊張性頭痛)、しびれ感、睡眠障害、不安感、抑うつ感などが高頻度に認められ、乾燥症状(ドライアイ、ドライマウス)や過敏性腸症候群に類似した腹部症状・便通異常、動悸、めまい感、焦燥感や集中力低下、体のほてり感や冷感、微熱、むずむず脚症状などもきたすことがあります。維筋痛症を呈する病気としては、発症早期の関節リウマチやシェーグレン症候群、血清反応陰性脊椎関節炎、リウマチ性多発筋痛症、変形性関節症、甲状腺機能低下症、うつ病などが挙げられます。線維筋痛症の検査・診断方法線維筋痛症の診断には、米国リウマチ学会(ACR)の「線維筋痛症分類基準」(1990年)や「線維筋痛症診断予備線維筋痛症の主症状が全身性の慢性疼痛であることから、以下の項目を満たすかどうかを確認することが重要です。①広範囲にわたる疼痛(疼痛の広がり)があること②触診の際に圧痛点(押すと痛みを感じる場所)が基準の18カ所のうち11カ所以上認められること③3カ月以上継続する慢性疼痛であることまた、線維筋痛症診断予備基準ではさまざまな随伴症状(主症状に伴って起こる症状)の程度を「徴候重症度」としてスコア化して評価に加えています。なお、血液検査や画像検査によって特異的な異常所見が認められることはなく、線維筋痛症の診断には有用ではありません。これらの検査は他の病気との鑑別のために行なわれます。線維筋痛症の治療法原因が不明の病気であることから、根治のための特異的な治療法は残念ながらありません。しかし、有効な薬物療法の開発が徐々に進み、保険適用された薬物もあります。プレガバリン(リリカ®)は痛みに関わる神経伝達物質の遊離を抑制する薬剤です。

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