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「インヘリタンス」と辺野古

僕は昔からラジオ好き。
東京で暮らしていたころからTBSラジオをメインに聴いていた。
今はradikoプレミアムで、タイムフリーやエリアフリーを楽しんでいる。

1年以上前(2023年12月)に、北丸雄二氏がゲストで登場した際の、荻上チキの番組がとても印象に残っていて忘れられない。
タイムフリーではもう聴けないので、検索したらYoutubeに公式を発見。
「ポストスクリプト」というコーナーで、北丸氏が「インヘリタンス」という舞台を紹介している回だ。

インヘリタンス、とは、継承という意味。
この舞台は、なんと前篇後篇あわせて6時間越えという超大作。

今やアメリカの若い人たちの間では、エイズ禍が過去のものとなり、あの時代にゲイ・コミュニティがいかに活躍し、社会を変えて来たのか、という実感が薄れているという。
エイズ禍だけではない。
アメリカにおける長年にわたるゲイの人権運動は、どのようなもので、どうやって世間の意識改革を行ってきたのか。
そういった歴史の継承が失われつつある現在、世代間の分断を3世代にわたって描いた群像劇、とのこと。

僕は、エイズ禍の頃は20代だった。
東京で隠れゲイとして暮らしていた僕は、当時アメリカで起きていることは全く知らなかった。
エイズは怖かったけれど、日本では色物的な扱いだったので、下手に話題にすると「お前ホモなの?」と言われそうで、人前では心配を口に出せなかった記憶がある。
このレベルであるから、性的マイノリティの人権運動、なんてことも全く知らないで生きて来た。
なんとなく欧米って進んでるんだなぁみたいな感じで。

10年ぐらい前に、エイズ禍を描いたアメリカのテレビドラマ「ノーマルハート」を見た時、日本とのあまりの違いに驚いた。

いや、当時日本でも頑張って活動していた人たちはいたと思う。
ただ、それが、僕の生活までは情報として届いていなかった。
アメリカでこのようなドラマが作られたのは、届いていなかった人たちに届けるためなんだろうと思う。

凄いのは、そういう企画が通って、予算が出て、作品がきちんと公開される、ということだ。

上記で述べた荻上チキ氏の番組で、北丸雄二氏は、日本でも翻訳上演される舞台「インヘリタンス」を紹介しつつ、アメリカにおけるゲイ・コミュニティの活動の歴史について詳しく解説してくれた。
未来のために、こういったことは「継承」していくことが大切なのである、と。
非常に興味深く、面白く聴いたのだが…。

最後の最後(37分20秒ぐらい)で、少々「むむむ?」と思ってしまう発言があった。

「エイズの話だけじゃなくて、戦争の話をずっと語り継いでこなかったことによって、沖縄の現在の辺野古の話になってくるわけでしょう? 語り継いでいれば、こんな、地方の自治を無視するようなことはできないし、国と地方とが上下関係ではないということもキチンと押さえなくてはいけないし。継承って、歴史って、社会を見る上で絶対に必要なことだと思うんですよね。そうやって見た方が、文脈が分かるとね、色んな事が納得できるし、色んな事が面白いし、そういう意味でも、継承、インヘリットすることを考え直す機会に、アップデートしていかないといけないと思うんですよね。

はて?
沖縄は戦争の話を語り継いでこなかったとでも?

僕は沖縄で暮らして9年になるけれど、ローカル放送や地方紙では、定期的に語り継ぐ特集が組まれてるんだけど?

問題なのは、そういった継承運動が、沖縄県以外に全く拡散されていなかったことだろう。

地方の自治は、「最初から無視」されていたんじゃないだろうか?

国と地方の「上下関係」は、継承とか関係なく「元からある」んじゃない?

僕は、沖縄に移住するにあたり、ざっくりだけど、歴史の本を何冊か読んだし、移住してからは、ローカルの報道番組は必ず見るようにしている。
知れば知るほど今までの自分の無知が恥ずかしくなる。

でも、それって、僕が不勉強だっただけ?

沖縄以外の都道府県で普通に暮らしている人に全く情報が届いていないのはなぜ?

沖縄の人たちの継承の努力が足りないせい?

違うよね。

沖縄の人たちの継承の努力を、上から押さえつけて無視させる力が働いているからじゃないかなぁ。

とかいうと陰謀論に染まった老人みたいに思われるからこれぐらいにしとこう。

ちょっと社会的な意見を言うと「意識高いねぇ」とか「思想強め」と揶揄され、冷笑の対象にされる日本の文化って、いつどこで誰が始めたんだろう。

今年、アメリカはトランプ政権がパワーアップして再開する。

アメリカのゲイ・コミュニティが長年頑張って手に入れたマイノリティの人権は、果たして維持できるのだろうか?

日本は何でもアメリカに右にならえの国だから…。
僕は透明人間として静観しようと思う。



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