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同性婚と遺言書
さっき、今年最後の記事をアップした後で思い出した。
「コロナでカミングアウト(2)」のラストで、遺言書のことを書きかけていたのだった。
中途半端に匂わせて年を越すのもアレなので、簡単に書いておこうと思う。
僕らは、僕の名義で購入した家に住んでいる。
賃貸住宅は、男二人でもオッケーな所を探すのが大変だ。
それに、契約更新の度に誰かに保証人を頼まなくてはならないし、保証人を立てても、さらに保証会社との契約を強いる大家さんもいるし、とにかく、賃貸住宅は、めんどくさい。
犬が飼える物件も少ないし…。
というわけで、僕とトナさんは付き合い始めて間もなく、家の購入を決めた。
都心から離れた不便な場所のボロ家なら、全財産をつぎ込んだらローンを組まずにギリギリ買える。
トナさんの通勤は大変になったけど、二人とも牛小屋の臭いがする田舎の方が落ち着くので、生活は超快適。
万が一、別れることになったら売却して現金化し、分ければよい。
ていうか、二人とも別れることを全く想定していないという能天気さだった。
問題は、どちらかが先に亡くなった場合だ。
僕らは透明人間。
法的には、独身。
ということは、死んだら財産は全て三親等までの法定相続人のものになってしまう。
もし、共同名義にしていた場合、残された方は、遺産の半分を遺族に払うために家を売却しなくてはならなくなる(貯金がないので)。
そんな田舎の不便な家や土地は要りません、と、遺族が相続放棄する可能性もあるけれど、放棄してくれたからと言って、その分が貰えるわけではない。
放棄された財産は、国庫に帰属するのだ。
だから、売って半分払わなくてはいけなくなるのは、同じ。
同性婚ができれば、そういう心配はないのだが…。
色々調べた結果、遺言書が全てを解決してくれそうだった。
遺言書は法定相続人より優先されるので、どちらか一方の名義にして、遺言書を書いて、死後は相手に全てを譲ることにしておけばよいのだ。
というわけで、一応年が上である僕の名義で家を買うことにしたのだ。
とはいったものの、遺言書を書くのはめんどくさくて、なかなか重い腰が上がらなかった。
そのうち書こう、と思いながら、数年経ってしまった。
そこにやって来た、コロナ禍。
マジでいつ死ぬかわからないんだから、早くしなくちゃ、と思っていたところに、ひょんなことから親にカミングアウトすることになったので、それをきっかけに遺言書作成がスタートしたのでした。
遺言書は法定相続人(三親等まで)より優先されるけれど、「遺留分」が存在する。
法的に遺留分(3分の1)の請求権を持っているのは、配偶者、子、直系尊属の場合に限られる。
だから、結婚してなくて子供がいない僕らにとって、その権利を有するのは「親」だけだ。
つまり、黒柳徹子と同い年で黒柳徹子と同じぐらい元気な僕の母親にのみ、僕の財産の遺留分の請求権利があるわけ。
母にカミングアウトする前は、僕が母親より先に死ぬ確率は低いし、と思ってたけど、コロナ禍で、僕は物凄く母親に死んでほしくないと思っている自分に気付いた。
なんなら僕より長生きして欲しい。
遺留分は、あくまで「請求権がある」という権利に過ぎないので、放棄してもらうことは可能だ。
今回、カミングアウトしてトナさんを紹介し、受け入れてもらえたことは、母親に遺留分の放棄の約束をしてもらうチャンスではないか?
早速、母に事情を話して放棄をお願いしたら、もちろん快諾してくれた。
経済的に自立している母親で良かったぁ…。
しかし、ここでもう一つ問題が。
なんと、法的には、僕の父親にも遺留分の請求権利があるのだ。
僕の母は僕が生まれてすぐ離婚したので、僕は父親の記憶がない。
僕の生物学上の父は、離婚後、慰謝料も養育費も一切支払わず、僕らの人生に一切姿を現していない存在である。
ずっと、死んだものだと思って生きてきたのに。
だけど、僕が死んだときには生物学上の父にも僕の財産を相続する権利があるなんて…納得いかない。
だって、射精しただけだよ?
一秒も世話してもらってないんだよ?
遺言書の作成をお願いした行政書士さんが、戸籍を調べて、僕の生物学上の父のその後を調べてくれた。
もし生きていたら、遺留分の放棄をお願いしなくてはならないからだ。
調査の結果、僕の生物学上の父は、僕が二十歳の時に48歳で亡くなっていたことが分かった。
住所を辿った結果…。
僕の生物学上の父は、離婚直後に上京し、代々木上原に住んでいた。
恐らく東京オリンピックの工事とかしてたんじゃないだろうか。
その後、桧原村出身の女性と再婚し、埼玉に移住して息子を二人もうけたあと、死亡。
死因は不明。
行政書士さんは、亡くなるには若すぎるし、事件に巻き込まれた可能性もあるので、当時の警察の資料を調べましょうか、と言ってくれたけど、僕は全く興味がなかったので断った。
死んでることさえわかれば、あとはどうでもよかった。
僕は、生物学上の父の人生には全く関心がなかった。
けど、もし、生物学上の父が、まだ生きてたら…てことを想像してしまった。
その想像力で書いてみたのが、固定した自己紹介ページにアップしてあるシナリオ「南の島の透明人間」だ。
お正月休みに、暇を持て余した時に、誰かに読んでもらえたら、うれしいかも。
ザクっと説明するつもりが、思いのほか長文になってしまった。
今年は本当にこれでおしまい。
読んで下さった方、本当にありがとうございます。
良いお年をお迎えください。