タビについて考えたこと

話は少しさかのぼる。
先月yeeのお洋服受け取りの時、コーディネートのアドバイスを杉崎さんがしてくれた。「このお洋服にはシルバーの靴を合わせるのもオススメですよ😊」と。
ご一緒してくれたJJGが「シルバーのタビですかね💓」と言ってくれた。

それからタビについて、ぼんやり考え始めた。
実は一年ほど前に黒を試着したことがあったのだが、サイズが緩かったよなぁ、と。
以前試着した時の手書きメモを見返す。
「サイズ緩い。ときめきなし。」と書かれていた。
私の足は小さめで、35サイズだと緩いことが多い。
マルジェラは35からの作りなのだ。

以前の私は、黒を試着し、トキメキはなかったらしい。
シルバーならどうだろう。サイズの問題はあるが、試してみたい。

ネットでシルバータビの画像を見る。
あぁ…。なんか…。すごい。とりあえず試着、行こう。

そう思い、マルジェラに向かった。
シルバータビは、私調べによると
タビブーツ8センチ、3センチ。
タビバレエ
タビレースアップ
のラインナップのようだ。

この中で、ブーツ3センチとレースアップを試着したいと思って店舗に行った。
しかし、その二つは国内の店舗では扱いがなく、オンラインショップのみとのことだった。オンラインショップで購入して、受け取りを銀座シックスか表参道店のどちらかにすれば、店舗で着用してみて、万が一足に合わなかった場合などはキャンセルできると教えてくれた。だいたい一週間ほどで入荷するらしい。でも、一度購入しないと試して見ることが出来ないって、結構ハードル高いな…。と思った。

仕方ない。今この店舗で履けるものを試着してみよう。

まずタビブーツ8センチを試着。
コハゼ、全部止めるの意外と面倒だな…と思いながら、一つ一つ止める。
鏡までは距離があったので、歩いて向かう。
8センチヒールなのに安定感がある。
太いしっかりしたヒールで、驚くほど歩きやすい。

鏡を見た瞬間、驚いた。

わぁ…。すごい…。
こんな自分になれるのか…！
こんな自分は初めてみた…！
ぐぅぅぅ…！と胸が熱くなる。気づくと涙が込み上げていた。

なんてかっこいいんだろう。
なんて美しいんだろう。
なんて輝いているんだろう。

鏡には、間違いなく自分の人生の主役を生きる、輝く自分の姿が映っていた。

しばらく胸がいっぱいで、何も話せなかった。
店員さんの「いかがですか？」の問いに、「あ、歩きやすいですね…。」と声を絞り出した。

今まで、靴の試着で、こんなに感激したことはなかった。
今までの靴試着は、ほとんどが黒い靴だった。
もしかしたら、黒ではなかったのかもしれない。
シルバーを履いて、こんな気持ちになれるなんて。
もしかしてシルバーだったのかもしれない。
もしかして、この靴だったのかもしれない。

あぁ、ずっと履いていたいな…と名残惜しく思いながら足を抜いた。
なかなか足が抜けなくて、ちょっと焦ったけど。
とてもとても、信じられないくらい、素敵な靴だった。

それから
在庫にある、シルバーのタビバレエも試着。
かっこよくて、可愛かった。
強さ100%のシルバータビブーツに比べると、可愛さがプラスされていた。
小動物の足みたい。
サイズ的にはやや緩いが、たぶんこれなら履いて歩けると思った。

オンラインで購入する事も視野に入れ、他の色ではあるが、タビブーツ3センチとタビレースアップも試着して着用感やサイズ感を確認した。確かこれらは以前に試着したことがあった。

タビブーツ3センチはやや緩いものの中敷を入れて調節すれば、履けないことはない。ヒールの高さもちょうどいい。これでシルバーだったらどうだろう。先ほどの8センチヒールの感激とは、少しは違ってしまうのかもしれない…
試しに履いてみた他の色では、心を動かされなかったが、サイズは大丈夫そうだったことに安堵した。

レースアップも試着。デザイン的には、ソールが革の周りにしっかりあり、革の部分が汚れにくそうで良いなと思っていた。
しかしこちらは、明らかにサイズがブカブカで難しそうだった。
同じブランドの同じサイズでも、形や革の種類によってこんなに違うのか…と思った。

現実的に考えると、私に履けるタビシルバーは、タビブーツ3センチかタビバレエだなと思った。
タビブーツ8センチは、これ以上ないくらい素敵だったが、サイズも少し緩いので前滑りしてしまい、長時間履くことは厳しいだろう。

タビブーツ3センチなら、同じくやや緩いが、8センチ程の前滑りはしないだろうし、中敷を入れればなんとかなるような気がする。実物を試せていないところがやや心配ではあるが…

タビバレエは、とても可愛いし、サイズ的にもやや緩いことには変わらないが、おそらく履けるだろう。

だが…。
私はタビブーツシルバーの大きな衝撃にすっかり心を奪われていた。足の甲全体を多い、さらに足首までシルバーで覆う圧倒的な輝きの虜になっていた。

シルバーのタビは、元々ひび割れたデザインで、履き込むうちにひび割れが深くなり、いずれシルバー部分がポロポロと剥がれてくるらしい。経年変化を楽しむ靴なのだそう。剥がれてきたらどんな姿になるのか見てみたい気もする。（防水スプレーはNGらしい）

もし、いつかタビを買うのなら、シルバーのタビブーツ3センチにしよう。
密かに心に決めた。


でも…。
私は、一年の97%はスニーカーなのだ。
タビブーツを購入しても、おそらく出番は少ないだろう。

高価なタビブーツを購入しても、出番が少なければ勿体無い。
スニーカー以外の日に履く靴は、すでに気に入ったものを持っている。
私のライフスタイルには、スニーカーが最適なのだ。

それに…。
靴にここまでの金額をかけることが、とても怖い。
靴は、履いて長時間歩いてみないと、わからないから。
服ならば、合わなかったら、泣く泣く手放せば良いと思えるのだが、靴は、私のサイズだと、買い手が少なく高値はつかないだろう。そうを思うと、やっぱり怖い。

この価格で、コートやバッグだったら、気持ちの面でGOを出せる（実際買うかどうかは別として）。
でも、どうしても、どうしても、靴は…。
少なくても今は。
今は、この価格の靴を、それも出番が滅多にないだろう靴を、自分で自分に買ってあげることは、出来ない。
なんか、怖い。

もしかして、これが、「靴は自己評価」ということなのだろうか。
そう思うと、泣けてくるけど…。

いや、感傷的にならないで考えてみよう。
97%スニーカー生活。
3%用のレースアップシューズとブーツを所持している。
年に数回しか出番がないが、気に入っているし思い入れもある靴だ。
これ以上3%用の靴を増やしたくない気持ちもある。
今靴に困っていない。



うん。たぶん、今じゃない。

すごくすごく素敵な靴だった。
こんなにも素敵な靴に出会えて、とても嬉しい。
足を入れてみることが出来て、その姿を鏡で見ることが出来て、よかった。

夢を見れたような気がする。
ここまで心に響いた靴は、これまでなかった。

タビブーツシルバーよ、ありがとう。
多分今じゃない。
またいつか、履いてみることが出来たら、嬉しいなと思う。

まだまだ人生これから！ゆっくり考えてみよう。
何も考えずに「えーい！！」と元気に買ってしまえたらどんなにいいか…！と思う気持ちもあるが、お金は大事だからね。

自問自答ファッションを始めて、たくさんの素敵なものに出会えた。
また一つ、魂を揺さぶられるものに出会えたことを、とても嬉しく幸せに思う。
ファッションって、楽しいなぁ。
そんなふうに思えるようになったことも、とても嬉しい。

今回はタビブーツシルバーとの出会いの記録として。
おしまい。

なかまち