妖精時代のキオク
小さな体に小さな羽二つ。
足はなくて、今で言うクリオネのような形。
たくさんの仲間と暮らしていた妖精時代。
私たちは大天使様のサポートをしていた。
私たちの大天使様は、とても優しくて偉大な方だった。
地上で人間が病気になっていると、時に癒しの力を送られ、みるみる人間が元気になっていく。
でも、死が近い人間には、力を吸い取り、早くあの世へ行けるように、これも手助けをする。
私たちもその人が辛くないように、精一杯のお手伝いをする。
しかし、この大天使様は、とても忙しい。
あっちの人間、こっちの人間とお世話をしてまわっている。
人間が困っているのをみつけると、すぐ助けてあげたいと手を差し伸べる、心の広い大天使様。
その偉大な方のサポートができて、私たちはとても幸福に感じている。
ある日、大嵐が来て、私の小さな羽では抵抗できなくて、とても遠くに飛ばされてしまった。
たくさんいた仲間ともはぐれてしまった。
小さな羽も、飛ばされた勢いで少し痛めてしまった。
一人ぼっちで木にとまり、途方に暮れていると、近くで声がする。
風にのってみる?
羽は広げるだけでいいんだよ!
風が話しかけてくれている。
森の木々の上を一緒に駆け上がってみようよ!
空高くまで一緒に行こう!
そんな風とすぐに仲良くなった。
ずっと風と遊んでいた。
羽の傷もすっかり良くなった。