せんせい。
著者:重松清
文庫版は2008年に刊行された「気をつけ、礼」を改題したもの
前に読んだ「ロング・ロング・アゴー」のあとがきに著者が本作とあわせて、兄妹のような作品と書かれていた。気になったのでこれも読んでみました。
あらすじ
感想
本作はタイトルの通り先生とその生徒との物語が中心であり「ロング・ロング・アゴー」にも先生は出てきたので、多少リンクしているのかな?
「ロング・ロング・アゴー」は子供の視点から見ているが、本作はおとなの視点や先生という立場から子供を見ている点が面白かった。
こどもの頃は無邪気なので誰とでも仲良くなれるが、おとなになると今まで
見えなかった視点で物事が見えるようになる。
勉強のできる子供、要領が悪くてうまくいかない子供、クラスの中心にいる子供、あまり目立たない子供、そんな子供たちを大人のシビアな目線で見ることはかなり残酷なことだ。
本作の「にんじん」では若手の教師が嫌っていた生徒の事を回想する話で、こんな一文がある。
嫌っている生徒なため、辛辣な言い方ではあるが的を射ている。
誰もが集団をまとめることはできない。
それが勉強やスポーツ、どんなスキルに由来するかは分からないけど、明確な線引きがある。同じ学年であっても……。
それでも先生という職業はデキる子もダメな子も教え導いていかなければならない職業である。その辺りの難しさや葛藤を描いていて、”子供も学校で苦労しているけど先生も大変”という当たり前なんだけど軽視されがちなことに気付けた。
6つの短編のうち、好きだったのは「白髪のニール」。
先生が生徒にギターを教わる話なのだが、生徒が先生に弾き方を教え、先生が生徒にロックンロール、特に「ロール」の何たるかを教える。
ロックンロールを人生と重ね合わせる部分がなんだか大事なことを教わったような気分になる。中年教師が下手くそでもギターを練習する姿には、自分も頑張ろうという気にさせてくれる。
おわりに
読んだ後、ふと昔を思い出して先生と話してみたくなった。
良ければ読んでみてください。