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【読書感想】 これはただの夏

著者:燃え殻 2021年 7月刊行  文庫版は2024年 9月に刊行 p234

出先で見つけて面白そうなので購入。個人的に好みにドストライクな小説だったので大変満足。
夏も終わりに近づいてきている、そんなときにお勧めしたい作品です。

あらすじ

その瞬間、手にしたかったものが、僕の目の前を駆け抜けていったような気がした――。テレビ制作会社に勤める秋吉、知人の結婚式で出会った風俗嬢の優香、育児放棄気味の母親と暮らす十歳の明菜、末期癌を患う秋吉のクライアント、大関。長い人生の中でのほんの一瞬、四人は絶妙な距離を保ちながらも、ひと夏を過ごす。噓で埋めつくされた日常の中で、願いのようにチカリと光る「本当」の物語。

裏表紙より

登場人物

秋吉:テレビ局の下請け会社で美術製作をしている。

大関:テレビ局の敏腕ディレクター、百キロ越えの巨体でなにかと秋吉の面   倒を見ている。ステージ4の松。

優香:知人の結婚式で出会う。五反田で風俗嬢をしている。

明菜:育児放棄ぎみの母親と暮らす十歳の少女。アパートで秋吉と同じ階に住んでいる。

感想

ここ最近でベストの小説。ちょうど夏に読めたのもタイミングが良かった。
一言でまとめると、
        ある中年が過ごしたひと夏の物語
これだけだと地味な印象を受けるが、ノスタルジックな雰囲気や心情描写でここまで美しい物語になるのかと感じるくらいの作品に仕上がっている。

幸せでない境遇の四人が集まって夏を過ごすだけだが、そこには確かに幸せな瞬間があって、それが文章で上手く表現されている。

個人的にはプールの場面が好きで、ここが本作のピークと言ってもいいかもしれない。幸せで無いからこそ何気ない瞬間に幸福を感じる、そこのコントラストが強いためその場面が、より一層強調されている。

特別なことは起こらないけど読んだ後はさわやかな感覚がする。
大人の青春小説だと思う。


おわりに


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