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物語:お嬢様と執事様⑥ -屋敷にて-

「お嬢様、ちょっと宜しいですか」
「あら、どうしました?」
 午後のティータイムを楽しんでいるお嬢様に執事様が声をかけた。
「実は報告したいことが2つありまして、まず1つは・・・」
「ちょっと待ちなさい。執事様が報告したいことを私が当ててみせます」
 饒舌に話していた執事様の言葉を遮ってお嬢様が言葉を発した。こう言われると執事様は次の言葉を待つしかなく、いろいろ考えている様子のお嬢様を黙って見つめている。
「わかりました。最近寒くなって来たので私の衣替えに関する話では無いですか」
「違います」
 自信満々に答えたお嬢様であったが、執事様は端的に否定してみせる。その言葉を聞いて少し不満げな表情を浮かべたお嬢様は再度熟考に入る。
「まさかとは思いますが、衆議院議員選挙の期日前投票に行こうとかでも」
「違います」
 今のタイミングで執事様が報告する内容で考えられる事象を考えたお嬢様の意見に執事様はまた軽く否定した。これによって普段はあまりイラついたりしないお嬢様も少しイラついたような表情を浮かべてしまう。
「執事様。何かヒントが欲しいです」
「ヒントですか。では・・・シンデレラですね」
「シンデレラ・・・」
 執事様が出したヒントについてお嬢様は思考能力をフル回転させる。今までもこのようなことは数回起こっており、執事様のヒントは今までも何度も聞いている。それでわかっていることであるが、執事のヒントは少し捻りが入っており、少し深く考えないと答えが見つからないのだ。
「シンデレラ、ガラスの靴、王子様、12時・・・」
「うーん、もう少し前です」
 ヒントに関するキーワードを口にしているお嬢様に執事様はヒントを与える。するとお嬢様はまた考え始める。
「意地悪なママはは、義理姉、魔法使い、カボチャの馬車・・・カボチャ・・・ハロウィン?」
「ビンゴです、お嬢様。最近屋敷にたくさんお友達がやって来ているのでハロウィンパーティーはいかがでしょうか」
 正解のキーワードが出て来たので安心した執事様が笑顔を浮かべて言葉を発する。これを聞いてお嬢様も満足気な表情を浮かべる。
「良いですね!ハロウィンパーティ。盛大にやりたいです」
「わかりました。私にお任せを」
 ハロウィンパーティについてお嬢様の承諾を得た執事様は深く頭を下げた。そして満足気な表情を浮かべた執事様が話が終わった雰囲気を醸し出したが、お嬢様は怪訝な表情を浮かべて口を開く。
「あの、執事様、報告は2つではなかったですか?」
 これを聞いて執事様は少し焦った表情を浮かべながらも平静を装って返事を返す。
「す、すいません。話の途中で失念してしまいまいた。もう1つの報告というのは、以前話していた100年クエストをようやく最新話まで見ましたという報告です」
「あ、そうなんですね。わかりました」
 笑顔を浮かべながらお嬢様が返事を返して、報告はこれで終わり、お嬢様はティータイムを再度楽しみなおすのであった。ちなみに100年クエストとは現在放映されているアニメ“フェアリーテイル”の今シリーズの副題であり、お嬢様が大好きだと聞いていた執事様が見始めたアニメなのである。


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