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エクストリーム帰寮2024~そこを歩くという狂気~

エクストリーム帰寮とは?

エクストリーム帰寮は、京都大学熊野寮の「熊野寮祭」で行われる企画です。
参加者は目隠しをされ、車で遠くの地に連れて行かれた後、徒歩のみで寮へ戻ることを目指します。GPSマップとお金は使用禁止。距離は自由に選べ長い人だと150kmとかです。
山奥に降ろされることも多く、歩く楽しさを体感できます。
今回私は100kmで参加してきたのでその体験を書こうと思います。
想像してみてください目隠しされて知らない場所に飛ばされる。
空を見上げるときれいな星、町明かりははるかかなた。
なんてすばらしい体験でしょうか


熊野寮へ

金曜の24時近く11月末の冷えた空気の中、僕は熊野寮に向かっていた。
道中の京大前の並木道は黄色く色づいていた。
しばらく歩き、熊野寮に到着した。

熊野寮の入り口のエクストリーム帰寮の看板

熊野寮の入り口には去年200kmを達成した人が書いた看板が飾ってあった。
夕焼けか朝焼けの高速道路はどこか見たことのある風景のように感じる。
ロビーで受付を済まして自分を運んでくださるドライバーの方に会った。
その後、一緒の車に乗る人が集まり、目隠し(黒のマスク)を受け取り車に乗り込んだ。

目隠しをされて運ばれて

車に乗り込んでから自己紹介をした。
どうやら同乗者は100kmと150kmの人らしい。
なにこの人たち怖い…
車内では目隠しをつけた状態で目的地を当てる会話が楽しかったです。
Geogesser視覚なし、聴覚と加速度のみバージョンみたいな感じです。
ちなみに150kmの人は落とされる場所を当てていた。
その後、走っているとナビから兵庫県道というアナウンスが流れた。
この時私は兵庫の土地勘がないので途方に暮れた。
下図が私の脳内の兵庫県地図である。

明らかに知識不足
現地民と淡路島の民ごめんなさい

多分自分は???のところに飛ばされるんだと思いつつ過ごしていると、
峠道をしばらく走った後、車が停車しおろされた。

落とされた先

目隠しをとるとそこには古いトンネルであった。
写真撮影のために入ってみると地下水が漏れ出しているのか中は少し湿っぽい感じがした。
トンネルは車一台がギリギリ通れるぐらいの大きさだった。
狭くはあるが明かりがしっかりついていて、ある程度整備されていて車もちょくちょく通ってそうだったのであんま怖くはなかった。

トンネルにてドライバーの方に取ってもらった写真

このトンネルに降ろされた僕には2つの選択肢がある。
1つ目このトンネルを抜けてその先に向かう、2つ目はトンネルを通らず逆側へ行くだ。ちなみに乗ってきた車は引き返していった。
トンネルを通る車がいたこと、方角を見るとトンネルの向こうが東向きだったこと、通ったほうが面白そうという理由でトンネルを越えることにした。
トンネルの中で現在地が判明した。

トンネル内には情報が

姫路であることに少し違和感を感じた。
なぜなら、姫路城から熊野寮までは125kmほどあった気がするからだ。
もっとこの違和感を大切にできていたらよかったかもしれない…

ちなみにこのトンネルは相坂トンネルという場所だった。
調べてみたら心霊スポットとか言われてた。
世の中には古いトンネルを見ると無条件で心霊スポットと言わないと気が済まないタイプの人がいるらしい。

歩き始め

トンネルを越えて、しばらく歩くと集落に出た。
しばらく歩くと大きめの交差点に出た。
なんとなくこの交差点での選択は重要な気がした。
3分ぐらい悩んだのち僕は東向きか南向きかの2択で都市の明かりが見える南に行くことにした。
暗闇の山奥に落とされたらよくわかるが人間にも虫と同じで光に吸い寄せられる習性があるらしい。
僕は吸い寄せられるように南西の姫路市街へ向かった。
道中で国道2号線の標識を見つけて大喜び!
国道2号を歩いていれば道に迷うこともないし、起伏も小さいぞと思い
勝った気分でこんなツイートまでしていた。

タグも間違ってるしもう救えない…

どうやらこいつは去年のエクストリーム帰寮で、国道1号に固執したせいで痛い目を見たことを覚えてないらしい…
南西に歩き続けスタートから2時間半無事に国道2号線まで到着し
とりあえず神戸を目指すことにして、安心安定の一桁国道歩き旅が始まった。

ここまでの進捗!

        _人人人人人人人人人人人人_
        > 京都から遠ざかってる <
         ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

あと実はそもそも最短距離で行こうと思ったら神戸を目指すこと自体が間違いである…

国道2号線ウォーク

国道2号線に入ってからしばらく歩いていたら都市までの距離を示す青看板があった。

絶望を与えるには十分な距離である

私の記憶の限りでは神戸から京都までは70kmであるここまで15kmほど歩いる。
神戸まであと58km神戸から京都は70kmつまりこのままいくと合計150km以上歩くことになる…
明らかに軌道修正が必要な状況であるが当時は、正常性バイアスがちゃんと仕事をして一桁国道の誘惑には抗えないままズルズル歩き続けた。

スタートから3時間半高砂市に

足取りは快調、日が昇って暖かくなってきて気分は上々である。
しかし、2号線を歩き始めてから4時間半ほど、明石市に入ったぐらいで愛しの2号線とさよならをすることを決めた。
なぜなら、兵庫の土地勘がない僕でも明石が少し南にでているのを知っていいたのと、Xを見たら同じ車に乗っている人が明石を回避して神戸市に入っていたからである。
2号線を少し恨みながら進路を北東方面に変更しこれで軌道修正ができた。
そう思っていたが…

2号線と別れるまでの軌跡

地図を見てもらったらわかる通りすでにかなり手遅れです…
実はこの時点で京都まではあと100kmである。

神戸へ

2号線と別れてからは太い道路を通るわけではなくコンパスをみて大体北東に向かってそうな道路を歩いた。
北東に歩くと案外すぐに神戸市に入り大都市にきたと一安心、しかし周りを見渡せどビルはなくひたすらに田んぼが広がっている。
どこに向かってるのかよくわからない状態で不安を感じながら秋の終わりの田園風景の中をただひたすらに北東へ歩いて行った。
その道が神戸の中心地につながっていると信じて。

100万都市のすがた

後から考えると別に京都市全域が都会ではないように神戸市にも田舎みたいな風景が広がっているとこがあるのは当然である。
しばらくすると神戸駅の文字が看板に現れた。

とうとう神戸駅の文字が…!

神戸駅という文字を見て一安心、また西神という地名を見てあと1時間ちょっととかで神戸の中心市街につく、そう思っていた。
しかし歩けば歩くほど道路沿いの人家は減っていき周りには美しい自然が広がっていった。
坂が増えアップダウンによって足へのダメージが蓄積していく。

美しい自然

しかし、ほかの道がどこに向かっているのかがよくわからない以上、青看板を信じて進み続けざるを得なかった。
スタートから13時間後、16時ごろに須磨区に入りようやく都市部に入ったそう思った矢先そこに壁のようにそびえる住宅地内の坂を見た。
迂回する道はなく登る以外の選択肢は残されていなかった。
住宅地の中にある峠を2回ほど越え新長田駅に到着。
ようやくみんながイメージするような大都市の市街地に出た。
この時点でスタートから14時間が経過し、70kmほど歩いていた。
時刻は17時ほどで日は沈みかかっていた。
足はかなり痛み、ここには書けないとある理由でメンタルもやられている状態だった。眠気も蓄積していたが寒すぎて寝付けなかった。

明石から新長田へ

近道になると思って北東に向かったが結果距離は2号線沿いを歩くよりも5km弱長くなり、獲得標高は6.5倍の650mほどになった…

ずっとBE KOBE

神戸市の中心市街地に入ってからはまあ良くも悪くも単調な道を歩き続けることになった。
神戸の市街地は広く神戸駅を越えて、三宮についたころには時刻は20時を回っており日はすっかり暮れていた。
実はこれが人生2度目の三宮である。
1度目は京阪神の三都市制覇という企画の中で80km歩いた先の到達点だった。2度目の今回は70km歩いた先にある中間地点である。
三宮はなんて厳しい町なんだろうか、つらく苦しい思いでしかない…

三宮のライトアップ


寒くなってきて体は冷え、足一歩踏み出すたびに痛む。
阪急に乗ったら600円で京都まで帰れるという悪魔の囁きに耐え、
神戸から京都までは70kmという事実をなるべく思い出さないようにしながら歩き続けた。
道中、何度か眠くてベンチでの睡眠を試みたが体が冷えるだけでうまく寝付けずに体が冷えて動きづらくなるだけであった。
歩いてる途中で帰れんくなったからお金貸してと男の人に話しかけられた。
こっちは京都まで歩くんだよなめんなよという言葉をぐっと抑えて丁重にお断りした。
神戸の市街地を歩くほど20kmほど、ようやく神戸市を抜けた。

芦屋市に突入

神戸市を歩いた時間は12時間ほど距離は50kmであった。
もう時刻は0時を回っており、スタートから20時間が経過し歩いた距離は90kmほどになっていた。

とにかく神戸市は長かった…

西宮そして終わりへ

芦屋を越えて西宮に入ったころには終電もなくなり始発までは帰れない状態になっていた。
風は冷たく足は痛い。
ベンチで休む、体が冷える、体が動かない、また休むの悪循環に陥っていた。
リタイアをすることを考えつつ、始発までは頑張ろうという考えで足を進めた。

ようやく青看板に京都が表示された。
しかしおかしい、何度眺めても京都まで50kmほどある。
あまりにも遠い、もうすでにこの時点で100kmほど歩いているのにまだ50kmもあるのである。
正直歩き切れる気が全くせず、寒さで折れかかっていた心が完全に折れてしまった。
リタイアを決心し、伊丹市に入ってしばらく歩いてから道路沿いにあったなか卯に駆け込み暖かいうどんを食べた。
あったかいうどんはおいしかった。
その後、6時ごろに阪急の電車に乗り京都へ帰った。
スタートから27時間ほど、総歩行距離は110km弱であった。

芦屋から伊丹へ

帰宅中は十三から目を閉じたら河原町についててビビった以外記憶が本当にないよく帰れたなと思う。
帰宅後はシャワーを浴びて泥のように眠った。
48時間ぶりのまともな睡眠はとても気持ちがよかった。
ちなみにこの睡眠負債が大きすぎて4日12時間睡眠した。
あと風邪ひいた。

終わりに

まず最初に、こんな長い記事をここまで読んでくださりありがとうございます。よかったら去年の記事も読んでねあといいねください(露骨な宣伝)
エクストリーム帰寮の感想としては悔しいです。
道選びや装備を中心にもっとうまくやれたでしょって点ばっかです。
そのうち反省点をまとめた記事を書こうと思っています。
いつになるかはわかりませんが…
最後になりますが、エクストリーム帰寮の運営の皆様、運んでくださったドライバーの方、本当にありがとうございました。


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