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砂漠雑感#060 パキスタン シアルコート
パキスタン北東部のにあるシアルコートは、パキスタン随一の産業クラスター地区である。医療器具をはじめ、皮革製品や繊維製品が有名。医療機器では、特に金属製の外科手術用器具、歯科用の棒物等を得意としている。革製品では、サッカーボールやベルト、また、繊維関係では、欧米ブランドのススポーツウェアのOEM生産を引き受けている。
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さて、同地が、斯様に一大産業クラスターとなっている背景は何か。関係者によると、もともと同地には、鍛冶屋が集まり、各種武器を製造していたとう。1885年頃、既にインドを植民地にしていた(1858~)イギリスが、軍の医療器具の修理を同地の鍛冶屋に依頼したのが始まりであったという。その後、イギリス本国から、5人の専門家がシアルコートにやって来て、ここで徹底した技術指導を実施し、本格的な生産が開始されたとの由。結果、見事、ここが、パキスタンのゾーリンゲン(ドイツの刃物センター)になった。
さらにサッカーボールもイギリス人が使っていたボールの修理から始まり、その流れで、各種スポーツウェア等も生産するようになったらしい。
修理業務で技術を磨くところからスタート、ということか。
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但し、流石に自動車になると話は別だ。ドバイでも修理工場やパーツセンターが犇めいているが、自動車産業が来ることは永遠にないだろう。それは高性能の部品を作ることができないからだ。自動車産業は結局、サプライヤー群の技術力、供給力、そして素材産業(金属、樹脂製品)が鍵を握っている。さらに、安全性試験等の膨大なデータとノウハウだ。
その意味で、今後、中東やアフリカ大陸が注目されたとしても、将来、イラン以西に本格的な自動車産業が勃興するとは思えない。(準欧州のモロッコ、南アは別として)部品輸入による組み立てのレベルに永遠にとどまると思われる。