#ゴルフ 上田のゴルフ物語 No87 さあ!始まりますよ!
◉さあ!続きですよ!
最終日も大詰めを迎えていた。ゴルフショップの叔父さんは、賑わいの中、店内にある大きなTVモニターを見ていた。来店のお客も手を止め、トーナメントの行方を見守った。
もちろん、2画面で男子と女子の両方を見ていた。
お客も時間があるらしく、モニターの椅子に着座し15名程度がTVを見入っていた。店内にいた他のお客も買物を暫く止め、モニターの周りに来た。店内は、いつの間にかお客で一杯になっていた。
きららは、いつものピンクで可愛くあしらったウェア、みるは、薄いグリーンのデザインあるウェア、くるみは、イエローで統一され華麗な演出をしていた。
他に目立つ事と言えば、3人とも胸が大きい。ウェアは、ピッタリとした身体のラインが出る、ストレッチ素材の物だ。おまけに、何時もより1つ、胸のボタンを多く外し開いていた。当然、谷間はくっきりと見える。他には、3人とも、可愛いい、短かめのスカートを履いていた。もちろんアンダーウェアを付けている。
この様に女子ツアーは、優勝争いとは別に、盛り上がっていた。
・ 一方、男子ツアーはと言うと。最終日、残すところ3ホールとなっていた。16番ショート、17番ミドル、18番ロングの設定。
昴達が16番ショートに来た。この昴チームを立ち上げた、本人である。昴の凄さを伝えておこう。
幾つもの、技を生み出した、その研究と開発を進める本人。一体どう言う人物なのか?
まずは、この16番ショートの攻め方を見てみよう。
距離、175ヤード、谷越え。グリーン手前は左右バンカーが構えるスツェーション。ピンは最終日とあって、左奥、3段グリーンの一番上。
昴にとっては、ピンが何処に立っていようと関係無かった。絶対的自信がるショットができるからである。
彼が編み出した、「30センチダウンブローショット」の進化版。
「元に戻るよショット!」だ。
昴がティーグランドに立った。2〜3回かるく素振りをした。
「30センチダウンブローショート」を打つつもりだ。昴チームのショットと彼のは少し違う。どう違うかと言うと、普通の「30センチダウンブローショート」は落ちてその場に止まるが、彼のショットは、落ちて転がり、落下マークの所へ戻ってくるのだ。落下マークは、グリーンが少し凹む。その凹んだ所にハマるイメージだ。それが、グリーンがどう傾斜しとろうが、戻ってくるのだ。例えば、手前から上りで左傾斜だとしよう。ボールは、落ちて左へ曲がりながら転ぶが、その転んだ様に戻ってくるのだ。なので傾斜と逆のサイドバックスピンを掛けなければならないのだ。
理解できるだろうか?
しかも、出だし角度が、低ければ、転ぶ距離多くなる分、バックスピン量も鋭いということ。元の位置迄戻ってくるのだから。
怖いショットである。
ボールを打った。
「パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!」
乾いた音であった。ボールは高く、高く舞い上がった。ピンが左奥である為、飛距離を+10ヤードで打った。3段グリーンも関係なかった。ピン左横10センチに落ちた。2バウンドした。勢いがあり、右へ傾斜している為、右へ転がった。2.5ヤードほど転がった。エッジに掛かった。そこからである。鋭いバックスピンが掛かった。そのバックスピンは、真っ直ぐにでは無く、転がった時と真逆のカーブを描きグリーンへ戻って来た。そしてその勢いは次第に弱まり、トロトロ転がり落下マークの穴の中にすっぽりと入った。
ピン横、10センチで止まったのだ。落ちて止まるボールも凄いが、元の所まで戻ってくるボールは見たことが無い。
楽々バディー、11アンダーとなった。
次は、ミドルホール。498ヤード。フラットなホール。フェアウェイも広い。左右OBも無い。
最近は、あの「ボー球」に磨きをかけた。スピン量を極力抑えて、飛距離にこだわっている。
ティーを高くした。
振るつもりだ。
「ヴアシッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
音がいつもと違った。乾いた音だった。スイングが見えない。バックスイングに入り、トップからのフィニッシュまでが早すぎて何をどうやっているのか分からない。音だけが後からついてきた。ゴルフ場の木々にこだました、
ボールはロケットの様に勢い良く放たれ、出だし角度は意外と低かった。ただ、そこからが違った。50ヤード過ぎた付近から、急上昇し始め、ジェットコースターの急な坂を登る様に4段階伸びをみせた。大きな、大きな放物線が弧を描いた。まるでロケットが、白い煙を吐いて、線を大きなキャンバスに描く様にボールは空を切った。そしてそよそよ吹く風と遊んでいるかのように飛距離を伸ばして行く。暫くして左へ曲がりながら落ち始めた。ボールが煙のような線で描いた空のキャバスは、皆の心の中に強烈なインパクト与えた。
落ちた場所は、フェアウェイのど真ん中、348ヤード地点だった。その後ほかの選手もティーショットを放ったが、50ヤード以上差があった。
見えないスイング。これが、昴の代名詞だった。
しかし、ちゃんと「ボー球」を打っていた。苦労して会得した技術。毎日毎日それに磨きを掛け誰にも真似出来ないように、またできない様に工夫をこらしていたのだ。上田や城田もこの事を、近くで学び、それぞれに独自のオリジナリティーを出していた。
昴の残り距離、150ヤード。PWを持った。「30センチダウンブローショート」か「スーパーミラクルカップインショット」を考えていた。
ピンは左奥、平らな部分は、1m四方ほどてあった。グリーンの傾斜や形状から考えると、やはりダウンブローを選んだ。
「パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!」
ボールは放たれた。高く、高く舞い上がり、その高さは100ヤード程もあがった。それは、S Wのロフトとも思える高さであった。ボールは、ピン真っ直ぐに向かった。
高く舞い上がった事により、落下速度も半端なく、いきおいを増した。
「ボテッ!」グリーンへ埋まった。ピン左横20センチであった。
12アンダーとなった。
最終ホール、ロング584ヤード。しかし、ティーショットがドライバーを持てないホールである。何故ならば、300〜350ヤード地点は狭くなっており左からクリーク(池)が張り出して来ている。3〜ヤード地点がギリギリで、残りが、285ヤードとなるのだ。
昴は、4番ウッドを手にした。
「ヴアシッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!」
これも、高〜〜く舞い上がった。真っ直ぐにな綺麗な球筋だった。丁度300ヤードへ落ちた。
他の選手も、ここ300ヤード地点を狙った。
ここからが違った。昴は何故か「3アイアン」を手にした。285ヤードもある。他のものは3ウッドを持ち、グリーンへ挑んだ。それでも届かなかった。
さあ、3アイアンを手にした昴。どう攻めるのか、誰もが固唾を呑んで見守った。ウェアショップのパブリックビューイングの皆もTVを見入った。
素振りを2〜3回した。昴チームはこの「軽い素振り」がスーパーショットを生む。
昴の目が鋭くキラリと輝いた。
「パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!」
正に、ピストル音だった。地を這う様なボールから、50ヤード付近でホップし始め高く、高く舞い上がった。ボールは更に上昇し続け、風に乗った。
回転がドロー回転であった為、更に距離が伸びた。グリーンへ届いたのだ。恐るべし3アイアン。高さは五番アイアンである。速すぎるヘッドスピードが成しえる「技」である。
なんと、285ヤードを2オンした。
綺麗なな球筋だった。
ピンは、奥だった。2オンしたボールは、3段グリーンを駆け上がった。一番上の面の平らな所まで届いた。5メートルのイーグルパットを残した。
ラインは緩やかなフックラインである。昴がゴルフで一番拘ったのが、パターである。派手なドライバーショットな巧みなアイアンの技なども色々なものも編み出したり、磨きあげたりにも力を入れた。それもしかし、パターの拘りに勝るものは無かった。
パターは「届かなければ入らない」の言葉がある様に、ショットやアプローチは、3次元に対し、パターは、面を転がす、言わば「2次元」力加減と方向さえ合えば入る。ただ、先程言った様に、「届かなければ入らない」
他には、アマチュアラインとプロラインが有り、アマチュアラインでは、入らない。例えば、左傾斜のフックライン(右利きの場合)の場合、カップを直接狙うと、左側へ曲がる。曲がるので、その具合を考え右側を狙わなければならなくなる。傾斜が強ければ強いほど、右側をねらう。
この時、カップの手前から曲がるラインの事を、アマチュアラインと呼ぶそうだ。
これに対し、プロラインは、前事例の場合、カップの右側を狙う。このラインの事をさす。
なのでパターで言える事は、「届かなければ入らない」「アマチュアラインは、入らない」という事だ。絶対に入らない。
だから、カップは、オーバーさせる。いつもプロラインを狙う。
昴は言う。「真っ直ぐに打つことが一番難しい」
フェイス面、目線、肩、腰、ひざ、両足のラインをカップ方向に合わせる難しさ。
そこで必要となるのが、バックスイングの大きさである。自分の物差しが必要。
何故ならば、パターのスイングスピードはバラバラである。しかし、ここで考えてみよう。力加減で打つとしたら、もうそれは、「感」に頼るしか無いのだ。それでは、入るものも入らない。
例えば、カップが直径3mの穴ならば例え10m離れてていようがそう難しいものでは無いはず。力加減も相当強く打てる。
直径10.8cm(4.25インチ)のカップの場合そうはいかない。
仮に自分のいつもの力加減で10cmバックスイングして打ったとしよう。
平坦ならば、3m転がるとしよう。単純に20cmバックスイングしたならば、6mという風に、自分の物差しが出来るという事。
他には、バックスイングの10cmは変えずに、力加減を変え、10cmで6m打つ、力加減を覚える。これの組み合わせで、30m程まではアレンジできるだろう。
極力、バックスイングは、長く引かない方が、フェイス面が狂うリスクを減らすことが出来る。
身体のラインもだが、パターフェイス面が狂うと、最初から方向が狂うので致命的だ。それを防ぐためには、グリップに注意すると良い。
今は、大き目のグリップや上の面が平らになったグリップが多く見られる。ゴルファーが今まで苦労した証である。
パターフェイスには、色々な形が見られ数も多い。またシャフトの材質や長さの違いも多い。ただ、言える事は、目線はなるべく高い方が良いとされ、長めのシャフトを勧める。自分にあったものが一番良いのだ。だが、それがどれなのか分からない。
・選ぶ基準を幾つかあげてみよう。
クラブフェイスだが、カップのラインと合わせる大事な部分。パター自体の形では無く、「フェイスラインをカップと垂直に合わせ易い物」が良いと思われる。
グリップだか、上の平らな部分がクラブフェイス面と垂直に構え易いグリップが良い。大きさも含めて。
最後は、シャフトの長さである。パタースタイルは色々あるが、ほぼ多数の人は、やや前傾姿勢である。身長差がある為、長さは拘った方が良い。目線を高い所からカップを見れるように。
昴は元々、運動神経は良かった。しかし、パターの力加減については、一発勝負なのでやり直しが効かない。当たり前のこと。それで、その慣性と加減を磨くため、幾つかの練習方法を取り入れた。
その一つは、新聞紙を野球ボール位の大きさに丸め、その玉をアンダースローで、5m離れたチリ箱目掛けて投げる。微妙に球が軽く、加減が難しい。
他には、7mのカーペットの先端にビール瓶を置き、パットしたボールを瓶に当てる事なく、当たる寸前で止める。この微妙な感覚が神経を研ぎ澄ましていく。
そして、最後に、クラブは手で振らない。特に手首を使い力加減の調節を行わない。微妙な感覚が狂うだけで無く、クラブフェイス面が大きく狂う。ならば、どう打つか?
簡単に言うと身体の回転で打つ事だ。
グリーン上は、5メートルのフックライン。得意なパットだ。手前からと反対側から入念にラインを確認する。
昴は構えたら打つのは早い。即決断。
ラインは決まった。
「カツン!」少し強めに、フックラインを少し消した打ち方だ。プロラインを辿っている。
「カッコーン!」イーグルであった。
ぶっちぎりの14アンダー。ファンは喜んだ。お店の来店中のファンも歓声が上がり、多いに盛り上がった。
・優勝賞金を手にして、TVに大きく映った。昴チームは、鼻高々だった。
翌日のゴルフショップが賑わった事は言うまでも無い。服は、女性。クラブ販売店は、男性が多数訪れ大賑わいだった。叔父さんもおおわらわだった。嬉しい悲鳴である。
クラブは、「昴ブランド」として、服は「きららウェア、みるウェア、くるみウェア」としてゴルフグッズとして流行を呼んだ。
特に、女性はゴルフ場ではどんな派手な服装をしても許されている。規定内であれば良い。若い女性はヘソだしファッションや短めのスカートなど色も様々であった。それに合わせた、艶やかな色のゴルフクラブも飛ぶ様に売れた。
メーカーも自分の所の商品売込みに懸命だった。そうこうしている内に売場面積が手狭となり、隣の隣接地を買い、店舗と駐車場を広めた。当初の5倍の広さとした。
その頃、昴チームはトーナメントの真っ最中であった。ゴルフショップどころでは無い。ほぼ
2週間に1回の割合で出場し、ほぼチームの誰かが、優勝していた。昴チームでのプレーオフはザラであった。
会社も大きくなり、地元の応援者兼、出資者には、株式配当金も10円の配当金を支払うようになっていた。昴カンパニーである。
今回は此処まで!次回をお楽しみに!
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