アップライトピアノ小咄
アップライトピアノを迎える。それは、人生でかなり重要な場所に位置するイベントではないだろうか?
少なくとも私には、入学式や卒業式、下手したら結婚よりも重要度が高いかもしれない。
まず、アップライトピアノを迎えることになった経緯から。
私は小学校2年生からピアノを習っていた。
習い始めた理由は、「クラスの女の子たちがみんな習っていたから」という、地に足のついていないもの。
習い始めるとともに必要になるのがピアノである。
「本当に続けるか分からないのに、本物のピアノはちょっと…」という理由から、最初は電子ピアノを購入。小学校にも自由に弾けるアップライトピアノがあったし、自然な選択だった。
小学校6年生で合唱の伴奏をした私は、すっかり合唱が好きになる。歌う方も、弾く方も。
もう、クラスの女の子たちはピアノ教室をやめていた。続けているのは私だけだった。
中学に入学後も、合唱曲を引き続けた。
そして中学3年生になると、電子ピアノは壊れる。7〜8年、それなりに弾いた電子ピアノは、鍵盤を叩いても音が出ない箇所がではじめた。
ピアノを弾くことは、既に私をかたちづくるもののひとつになっていたし、ピアノを買い換えることはほとんど決定事項だった。
電子ピアノの故障。それが、我が家のアップライトピアノ購入経緯だ。
ここからが小咄本題である。
私が試し弾きし、好みの会社はYAMAHAであることが分かった。
次いで、2000年代以降に製作されたピアノより、1980年代〜1990年代に製作されたピアノの音の方が、私にしっくりくる音が出るということだった。
必然的に、中古ピアノを購入することになる。
購入店は、楽譜やエレキギターの弦張替えでお世話になっている島村楽器さん。
いくつか店舗を回ったが、YAMAHA製作かつ、1980年代〜1990年代のもの、重ねてアップライトピアノとなると、そう数はなかった。その中でも、私は最高のピアノを選ぶことができたと思っている。
ピアノを迎えて、最初に調律師さんが来てくれたときのこと。
私は出かけていたので、直接話すことはなかった。
母が対応したのだが、アップライトピアノについての話になり、
「娘は、80年代〜90年代の音色が好きなようで、このピアノを選んだ」
と話をしたらしい。すると、なんとも興味深いお話を聞けた。
調律師さんによると、どうやら、90年代の少しあとに(正確な時期は不明だが、2000年初頭頃ではないだろうか。)、ピアノ職人の大量解雇があったらしい。それで、ピアノの音色が変わっているのかもしれない、と教えてくれたそうだ。
確かなことは何も分からないが、私の感じる音色の違いの裏付けになるようなお話を聞けたのは、とても嬉しかった。
ピアノ職人の方々の技術は、日進月歩高まっていく。我が家にあるピアノの音色は、もう生まれない可能性の方が高いと思う。
改めて、我が家のピアノを大事に、大事に扱いたいと思った。
(画像引用元↓)