いよいよアパートを借り、車購入へ
英国に来てから1か月くらい経過して、僕はようやく自分自身のアパートをハイスに借りることができた。アパートといっても、家賃は月10万円で、日本のマンションのようなものだった。2LDKで70㎥はあった。内部は改装されていて、築10年以上は経っていたが、浴室や洗面台、フロアの絨毯は新品で、壁も新たにペンキが綺麗に塗られていた。そんなふうに綺麗に改装されていたので、まるで新築であるかのような匂いがした。この物件はイギリスでは立派でおしゃれなアパートで、若い人が気に入りそうだったが、実際の住人はお年寄りが多かった。上の階に住む老人のニックというおじいちゃんとはすぐによく挨拶をしたり、ちょっとした話などをしたりする仲になった。白髪で多少ふらついていたが、身なりはしっかりして、品の良さが漂う老人だった。
僕はその部屋に住むにあたって、ベッドとソファが必要だった。日本のように、床に寝転ぶという習慣はイギリスにはなかった。フロアは土足だし、寝る時はベッドが当たり前だった。そこで、僕はジョージと近くの家具屋にそれらを購入しに行った。日本のニトリのような大型店舗ではなく、こじんまりした個人経営のお店だった。ショーウインドウにはヴィクトリア調の、皮ではなくファブリックのベージュカラーの2人掛けソファが飾られていた。僕はそれがとても気に入り、ジョージに、
「どう思う、このソファ?」と聞くと、
「僕もいいと思うよ。いいデザインだよ」と、ジョージはにこやかに言ってくれた。僕はそれを聞き、即決してそのソファを購入した。特に僕が気に入ったのは、ファブリックがまるで洋菓子のブッセの表面生地のようで、触り心地が滑らかで気持ち良かったからだった。きっと日本で購入すると、30万円はしそうなくらいの素敵なソファだった。気に入ったので1人用の同じ生地のものも一緒に購入した。ベッドもキングサイズのものをその店で購入した。こちらは至って普通なものに思えた。
取り敢えず、それでなんとかこのアパートに住む手はずが整った。このアパートに決める際には、ジョージの道場生であるガリーという男性がちょうど不動産屋を経営していて彼の助けを借りたのだった。ジョージの心遣いもあって、ガリーは仲介料を無料にしてくれた。僕はこの好意がとても有難かった。
ガリーは気さくで感じの良い、50過ぎくらいの男性で、細見で背が高く、頭は少し薄くなっていたが、すらっとしてハンサムだった。身長は180センチくらいあった。彼には6歳と8歳の娘が2人いて、彼の店である不動産屋に頻繁に遊びに来ていた。僕がたまに部屋のことで相談しに来たり、家賃を払いに来たりした時には彼女らによく会った。僕は当初、銀行口座を持っていなかったこともあり、毎月この事務所まで直接支払いに来ていたのだった。2人ともお人形さんのように、青い目をして金髪の可愛い女の子だった。お姉さんはジェミー、妹はサラという名前だった。
(続く~)