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『「発達障害」と間違われる子どもたち』を読んで・・・

特別支援の専門家、成田奈緒子先生の著書。

 本書で何度も言われている「発達障害もどき」という言葉。私にとっては、印象的であり、今後の子どもの見方の1つとなる新たな視点だった。

 発達障害ではないが、それと同じような症候を示す子が多いことについて本書では言及してあった。

「発達障害もどき」は生活リズムの乱れ

 忙しい父母の夜型ライフスタイルに合わせて、生活リズムが乱れたり、睡眠時間が減っている子どもたちが増えているそうだ。そして、そのような子に発達障害と同じような行動が現れることが多い。
 しかし、発達障害とは、「脳の先天的な機能障害」である。診断するにも細かな診断基準があり、生育歴なども関係してくる。診断基準に合わなかったり、生育歴に全く問題がなかったりするにも関わらず、発達障害と同じ行動が起こってしまうのには、「脳の育ち」が関係しているという。そして、その「脳の育ち」には、睡眠などの生活習慣が大きくかかわっている。
 生活習慣の見直し、改善が、子ども達や親にとっても幸せになる一歩だと感じた。

「脳の育ち」と生活習慣

  「脳の育ち」には順番がある。人間の脳には3つの部分がある。「①からだの脳」「②おりこうさんの脳」「③こころの脳」である。①は、呼吸するとか、食べる、寝る、起きるといった人が自然界で生きていくために不可欠な機能を担っている部分である。0~5歳の間に盛んに育つ。②は、言葉を使う能力であったり、計算する、記憶する、手先を動かすといった私たちが一般的にイメージする脳の働きを担う部分である。小学生の時期に大きく伸びるといわれている。そして③は、想像力を働かせること、判断すること、感情のコントロールをすることといった人間らしい能力をつかさどる部位である。この脳は、10歳から18歳にかけて発達し続けるといわれる。
 このような脳の育ちを考えていくと、小学校低学年における感情のコントロールができないとか、場にあった行動ができないといった気になる行動も、「脳の未発達」ということができるのではないか。脳の成長には個人差があるものの、確実に成長を続けるのが脳である。
 そのため、皆と違うから「発達障害」と決めつけるのはあまりに安易である。「脳が成長途中」という認識に立てば変わった接し方ができるはずである。
 また、この脳の発達に飛び級はない。つまり、人間として一番大切な部分である「からだの脳」が育ち切ってないのに、「おりこうさんの脳」や「こころの脳」が育つことはないのだ。とすると、幼少期の家庭生活が子どもたちの健やかな育ちにとって、かなり重要になる。
 そして、「からだの脳」が育ち切ってなく、不適応を起こしていると考えるならば、生活改善によって、不適応行動が収まっていくだろう。本書には、そのような事例がたくさん挙げられていた。
 生活改善に欠かせない3つのポイントとしては、①朝日を浴びる②睡眠を十分にとる③規則正しい時間に食べるということが書かれてあった。
 どうやら、立派な「からだの脳」をつくるためにも、生活改善をするためにも睡眠がとくに大切なようだ。
 

睡眠について

 小学生の理想の睡眠時間は10時間だそうだ。これは、寝ている間にレム睡眠とノンレム睡眠という2種類の睡眠のサイクルを4回繰り返すと、理想の睡眠になるためだという。しかし、日本の全国の小学生の平均睡眠時間は8時間であり、約2時間ほど、足りないのである。
 自閉傾向で人とのコミュニケーションが皆無だった幼児のお子さんが、「1週間、毎朝7時に起きる」ということを繰り返した(朝型にした)ことで、正しい睡眠リズムがつき、問題も改善されたという事例があった。このように朝型の正しい生活リズムにすることで、夜の寝付く時間も早まり、良質な睡眠の確保につながる。泣ている間に、セロトニンや成長ホルモンの分泌もなされ、すっきりとした精神状態で翌朝を迎えられるそうだ。
 このようなことで、集団への不適応やコミュニケーションの問題も改善されていくようである。

子ども達の身近な存在である大人が変わること

 私は、この本を読み進めていく中で、自分の夜型かつ不規則なライフスタイルに見直しが必要かとひしひしと感じた。大人も規則正しい生活習慣で、十分な睡眠をとることで、心に余裕がもてたり、それを見ている子どもたちの姿、行動も変わってきたりする。
 かく言う私のライフスタイルも見直していきたいと思えた書であった。
 また、このような脳の仕組みや生活改善の可能性について、子ども達にも分かるように伝えていきたいと感じた。



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