たんぽぽの憧れ③
「じゃーんけんでほーい。」
負けたのは、冬真君。勝ったのは渚ちゃんと千秋ちゃん。
「私たちがたんぽぽさんを隠すから、冬真君は目をつぶって、百数えてね。」
「うん。」
冬真君が目を閉じると、二人は場所を探します。
「ここにしよう。」
千秋ちゃんが、土を掘っている間に、渚ちゃんは、手提げ袋から何やら取り出しました。
透明のセロハンにキャンディの包み紙。真っ白の綿。色とりどりのビーズもあります。
たんぽぽのドキドキはもうとまりません。
二人はたんぽぽに近づきました。千秋ちゃんが指で、たんぽぽをひっぱります。
「い、痛い。」
「あ、ごめんなさい。どうしよう。」
「こうすればいいわ。」
と、渚ちゃんは、スコップでタンポポを土の中から根っこごと丁寧に取り出しました。
ちっとも痛くありません。
たんぽぽは、二人の可愛らしい手できれいに飾り付けられ、土をかけられました。
「ひゃーく。もういいかい。」
冬真君です。
「もういいよ。」
渚ちゃんと、千秋ちゃんが答えます。それを合図に探し出す冬真君。
「どこかな。どこだろう。」
中々見つけることが出来ません。
「あ、冷たい。」
雨です。雨が降ってきました。
「冬真君、帰ろう。濡れちゃうよ。」
冬真君は、まだ探しています。
「早く帰らないと、ビショビショになって、お母さんに怒られるよ。
「え、でもお。」
「雨がやんだら、また探しにこよお。」
冬真君は渚ちゃんと千秋ちゃんに手を繋がれ、三人は帰っていきました。
桜を見に来ていた大人たちも帰っていき、急に静かになりました。
たんぽぽは、不安でいっぱいです。音もない真っ暗な世界で、ひとりぼっちです。
「誰か、僕を見つけて。」
つづく
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