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夫にブチ切れて家出した話。息子生後5ヵ月。③

前回の記事は↓こちらから。

そういえば書き忘れていたのだが、この週も夫は木金土日の4連休をとっていた。夫は当時グループ会社へ出向しており、ちょうど2年間の出向が完了する月だったため、出向先でとっておかねばならない休暇がたまっていたのである。つまり、夫は4連休だー!と思って家に帰ったらもぬけの殻だったというわけだ。

この夫の4連休の存在は私にとっては脅威であった。こんな気持ちで4日間も終日顔を合わせるなんて耐えられない!絶対に出て行ってやる!という意思を強固なものにする一つの要因になった。

しかし、この4日間の家出は、裏を返せば夫にとってはまるっと家事育児から解放された余暇となる。その点については癪だったが、顔を合わせたくないという気持ちが勝ったのだ。

さて、自宅を出発してラグーナテンボスまでは車で1時間ほどである。息子は比較的車の中でもおとなしいため、到着10分前くらいにちょっとぐずぐずした程度で無事にラグーナテンボスへ到着した。
そして、変なホテルへ入る。せっかくなのでいい思いをしてやる!と思い、一番いい部屋をとっていた。こんなちっちゃな息子と2人旅なのに、50㎡弱のデラックスツインをとったのだ。あ、ちなみにうちは完全財布別なのでちゃんと自分の蓄えから払っている。

ラグーナテンボスの外観を眺めていただけでも相当テンションが上がっていたが、部屋に入った瞬間さらにテンション爆上げ、え、夫も呼んであげようか?なんて思ってしまうくらい喧嘩したことなどどうでもよくなってしまった。
環境を変えることで、こんなにも気持ちが変わるものかと感動したことを覚えている。ぜひ皆さんももやもやした気持ちを抱えたときは、ちょっといつもと違う環境に身を置くことを試してみてほしい。

ひとしきりいい気分に浸ったあと、いやいや、夫を呼ぶのはさすがに違うだろうと思い直し、息子との二人旅を満喫することに決めた。
ラグーナテンボスにはフェスティバルマーケットというショッピングモールの中に、おさかな市場という新鮮な魚介・海鮮が食べられるお店がたくさんある。テイクアウトも可能だ。ショッピングモールの中にも100均や服屋などがそろっている。ちょっと行けば薬局もコンビニもある。そういった環境のよさも家出先をラグーナテンボスに決めた理由だった。

実は学生時代の親友の実家がラグーナテンボスのすぐそばにあり、学生時代から何度も訪れたことがあるのだ。そして当時ここで初めて食べて感動した食べ物がある。
イカの一夜干しである。これが本っっっ当においしい。そもそも私は大のイカ好きであり、刺身、焼き、干物、スルメ…などなどイカには目がないのだが、ここの一夜干しは本当においしい。

右下のパックのもの。マヨネーズがまた良い。
姿焼きの状態で真空パックされて売っているものもある。
行く機会があればぜひ食べてみてほしい。

ちなみにこんなボリューム満点のネギトロなんかも売っている。他にも新鮮な海鮮をつかった逸品が思う存分楽しめる。気分転換の家出先に最高の場所だった。初日は天気も良くただただ楽しい旅行気分だった。

そして夜になり、夫からLINEが届いた。「出ていっちゃったの?💦」と。
なんだかもう怒りも遠のいていたため、怒りの感情をもう一度呼び起こして対応するのが面倒だったため、一晩寝かせた。
翌日になり、「顔を合わせると負の感情がわいてくるので、気持ちが落ち着くまでしばらく出ていきます。家事育児のない4連休をお楽しみください。」と嫌味ったらしく返信した。

そして、家出旅の雲行きが怪しくなってきたのは2日目だった。息子の日中の咳が増えてきて、さらに夜中にひどく咳き込むようになったのだ。家出前から少し咳をすることがあったのだが、そんなに激しい咳き込みではなかったため病院にも行っていなかった。時を同じくして夫も少し咳をしていたため、夫よ息子に変な風邪うつすなよ…と思っていたのだ。

夜中の咳き込みがだんだん激しくなり、見ているのもつらいし心配だった。病院に連れて行こうと思い、かの親友に助けを求めた。蒲郡で人気の小児科を教えてもらい、Web予約争奪戦を勝ち抜き、雨の中なんとか病院に連れて行った。
問診で書いた自宅住所が離れていたため、「あれ?帰省?」と先生に聞かれたが、さすがに家出中とはいえず。「あーいえ、ちょっと、、出先で…」と伝えると「そうか。それは大変だな…。」と先生。
隣で心配そうな顔をしている看護師さんが目に入った。ただならぬ雰囲気を醸し出していたのかもしれない。

幸い息子は胸の音やのどの腫れなどもとくに問題はなく、咳止めのテープと飲み薬を処方してもらった。
診察室を出てお会計を待っているときに、さきほどの看護師さんが来てくれた。「いつまでこっちにいるの?」と。あと3日ほど滞在する予定だと伝えた。「まだ小さいから心配だよね。もし症状が悪くなったらまたすぐにきてね!あとこのあたりで夜間救急があるのはどこどこの病院だからね!」と救急のある病院の連絡先なども教えてくれた。家出先で人のやさしさに触れた瞬間だった。

薬のおかげか息子の咳は少し落ち着いてきた。家出4日目の土曜日は快晴で
息子の調子もよくなってきたため、ラグーナテンボス周辺をベビーカーでお散歩した。その時、やけにコスプレイヤーが多いことに気が付いた。週末のラグーナはいつもこんな感じなのか…?と思ったが、女性キャラのコスプレをしたおじさんなどもたくさんおり、いや、これは絶対何かのイベントだと確信した。

調べたところ、ラグコス2024というラグーナテンボスのコスプレイベントの日であることが判明した。その日の午後から続々とホテルにもコスプレイヤーや到着していた。コスプレのまま廊下をうろうろする人やコインランドリーで洗濯をする人、カツラの具合をチェックする人など、この日はなんともシュールなホテルになっていた。土曜日だけやけに宿泊料金が高いなと思っていたが、こういうことだったのか。

そしてやはりイベントの日だけあって、夜になっても人の話し声や音楽がなりやまず、騒がしいのだ。息子もぐずぐずしている。いったい何時までやるのかと思い、再度調べた。
開催時間【6/29(土)10:00~6/30(日)6:00】。んん??初見では理解できなかった。もういちどよくよく見てみる。
昼の部:6/29(土)10:00~20:00、夜の部:6/29(土)21:00~翌日6:00。
なんと、オールナイトのイベントだったのだ。

なんて日にかぶってしまったのだと嘆いた。でもどうすることもできない。窓からラグーナテンボスの中がちらっと見えるが、コスプレイヤーが楽しそうに写真を撮ったりしている。
仕方ないか。この日の睡眠はあきらめたつもりでいたが、深夜になるにつれ騒ぐ声はそれほど聞こえなくなり、いつの間にか眠りについた。

…はずだった。

少しすると今度はホテルの廊下から聞こえるある音で目を覚ますのだ。それは、あの、幼稚園くらいの子供がはく、ぷっぷっぷっぷと音が鳴るサンダルの足音である。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ……遠のいたかと思ったら、また近づいてくる。ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ………ぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷっぷ………。エンドレスだ。寝かけるとぷっぷっぷっ、寝かけるとぷっぷっぷっである。

さすがにいらいらしてきてフロントに文句を言いに行こうかとさえ思ったが、息子は寝ているし、動くのも面倒だし、やはりこの日の睡眠はあきらめてただじっと耐えることになった。

しかし、いま思えばあんな深夜にそんなこどもが歩き回るのか‥?まさかあれもおとなのコスプレイヤーの仕業か‥?いやしかしあのリズミカルなステップはこどもの歩幅のそれであった。
まさかそこさえも再現していたのか?

真実は闇のなかである。

では今回はこのへんで。次回、完結。

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