友達の結婚式③
式は和風のものだった。和装をした本日の主役たちが背後から姿を現した。13歳の頃からお互いの身体的特徴を罵り合い、お互いの低い歌唱力に目を瞑ったカラオケを放課後の恒例行事とし、大人になってからは飛田新地の感想をまるで輪入道のMCバトルのような熱量で語り合った彼とは思えないほど落ち着いた大人の男性に見えた。あ、アジャパ、、忘れた事にしていたが思い出してしまった。俺も彼ももう28歳だった。しっかりとした大人になっていた彼は28歳として正しい姿をしていたのだ。そんな考え事をしながら股間をササッと掻きむしり、昔からいつも一緒にいた本日の主役に熱視線を送っていた。
しかし、人の集中力とはちっぽけなもので周りを見渡すとあることに気づいた。新婦側の友人が揃いも揃って可愛いのだ。思わずバルセロナに在籍したシャビくらい首を振って周りを見渡してしまった。友人と共に前乗りした手前、自慰行為の時間を確保できなかったことがこの奇行へ繋がったことは否めない。みんな毎日シコろうね。いや、ちがうか。
その後、集合写真を撮ることになり、シャッターの直前で軽度のイナバウアーを披露し、小顔の友人と写真の中では対等に渡り合った。最近、あまりいいことがなくうまく笑えていた自信が無かったのだが、左右の口角が自然と自分のマックスまで上がっていた。いい日だな。とても口に出してしまうと寒い感想を持った。これは綺麗事でもなくただの本心だ。
披露宴に移ると心臓のバクバクが止まらなかった。そうだ忘れていた。乾杯の音頭をせねばならないのだ。正直、仲のいい友達の前では基本的にふざけている。ジョークも面白いかは、さておき言う。しかし、根本は授業中の音読で声が震えるタイプだ。(ちなみに震は私が働かせて頂いている店です。急な宣伝)これはやばい。ガタイのいい漢たちと中高と関わることが出来なかったかわい子ちゃん達で視界がパンパンだ。それも少し勃起してるし。(それは私の過失でした)なんせ、震えが止まらなくなった。そして時が来た。司会の方が僕の紹介を読み上げる。「新郎の中学高校のご友人、内村さん。(もうええわ本名)新郎によりますと独特の感性を持ち、打ち解けるとお茶目な一面も〜」とのことだった。なんということだ。どう振る舞えばいいか全くわからなかった。ラッドウィンプスの野田洋次郎のような振る舞いをすれば良かったのか。その答えは現世では見つけられそうもない。
頭が真っ白になった30秒後、ガタイのいい漢も可愛子ちゃんも笑顔だった。しかし俺はきちんと理解していた。笑わせたのではなく、笑われたのだ。「ごめんね、今日もちゃんとできなかった。」新郎新婦にぺこりと頭を下げた後、テーブルに戻り、壊れたおもちゃのように酒を飲んだ。そして、ご機嫌に下品な会話を繰り広げ続けた。噛みまくった乾杯の音頭の事などすぐに忘れていた。酔いが覚めた後、祝福と謝罪の入り混じった連絡を新郎へ向けて送ったのは内緒の話だ。席に戻るとチーターも乳輪番長も「よかったよ」と言ってくれた。こんなに心優しい人間なのにこんな酷いあだ名をつけられるなんてと、世の中は不公平だと心から思った。
まだ続く。
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