物流DX第5回 現場にドローンが飛んだ日
こんにちは。
今年の4月より中堅物流会社の情報システム部ヘ異動したAndyと申します。
物流業界に来て三か月。
前職がお世辞にも就労環境が良いと言えなかった中で、新しい職場は
・歴史のある中堅の物流会社だけに雰囲気が良く働きやすい
・皆、親切(←これ重要)
・しかし、新しいものへの対応は遅れている
という環境です。
「働きやすいな」と思う良い雰囲気の会社なんですが、業界全体が昭和の臭いを残す古い体質なので儲からないんですよね。
そこで、店舗デジタル化やECサイト構築などデジタル畑が長かった私の経験を活用して「物流DX」へ取り組み、新人でもできることで貢献しようと考えました。
このお話は着任して三か月の新米システム部員が物流DXへ取り組むお話です。
今回はここまでの試行錯誤と実際に「積載率判定・ドローン飛行実験」へ取組んだお話となります。
テストの技術的なお話はこちら↓
1.物流DXとここまでの試行錯誤
さて、DXやデジタル化に取る組むにしても、いきなり、現場に突撃したら皆が困るだけです。
ですので、まずは順序だてて物事を進めることにしました。
進め方は、「職場の雰囲気の確認」「取り組み事項の決定」「根回し」「実行」の4段階。
会社の中で誰も取り組んだことのない内容だったのでかなり慎重に進めました。
Phase1.物流DXスタート みんなの反応は?
狙っていたこと)
物流DXに取組めそうか、情報の収集と実際に試作品を作って周囲の反応を確認。新しいものや理解できないものをとにかく排除する人もいるんですよね。
結果)
ヒアリングをした結果、老朽化したシステム群の処遇・「MaaS」に代表される新技術への対応遅れなど様々な取組が必要だという結論に。お金が無いのはわかっているので内製化で対応!
周囲の反応)
「貨物列車の時刻表アプリ」を試作品として作成した所、かなり好評。
「こーいうのが欲しかった」と現場作業をアレンジする責任者から言われ、「新しいもの」へアレルギーが無い事にまず安心!
Phase2.物流DX開始 貨物積載率見える化へ取組決定
狙っていたこと)
「物流DX」だと用語が大きすぎるので「実際に何へ取り組むのか」決定。
結果)
上司である経営職や実務責任者などへヒアリングした結果、①貨物積載率見える化、②情報の見える化の二つに決定。情報の見える化については「新人でもわかる内容に」との意図から後に「新人用教育サイト」へ改称。
Phase3.実働開始 周囲へのインタビューとフィードバックにより取組の方向性を微調整
狙っていたこと)
周囲へのインタビューやどのような取り組みなら皆が関心を持ってくれるか確認しようと動きました。
結果と反省)
しかし!インタビュー自体は実施できたが、グループインタビューのはずなのに発言しているのは「ほぼ一人」という状況に。
ただ、私も含め内部の人だけだと客観的に判断できないため、関係者以外からフィードバックをもらうのも同時期に開始。
Phase4.積載率判定テスト実施日決定。もう一つの取り組みである「新人用教育サイト」作成スタート
.狙っていたこと)
・貨物積載率判定に関する具体的なテスト日程と内容の決定。
・「物流DX」は貨物積載率把握だけでなく、システムを支える「バックオフィスで困っていること」も対象に入る為、「新人用教育サイト」作成も始動!
結果)
・テスト内容を「積載率判定」とし、防犯カメラ、ドローンカメラ等を使用することを決定。
・新人用教育サイトを作成開始。当初は音声対応システムを「アレッピー」と名付けQAサイトにしようとしたが、「Notion」というアプリだと新人でも情報の追加や更新が容易であった為、音声対応システムは作成中止。途中から「Notion」を教え内容の作りこみ開始。無謀な「二本同時開発」体制スタート。
・音声対応システムは数度改良したが、不完全な状態でフィードバックを貰いに行った2回目は、「フィードバックするほう」「される方」両方ともきつかった・・・・・。
2.現場にドローンが飛んだ日
さて、Phase1~Phase4で無事に社内調整が終了。ついに!テスト内容と日程が決定しました。
テスト内容
・カメラを使用した貨物積載率見える化。
・情報取得手段は「PCカメラ」「スマホカメラ」「ドローンカメラ」「防犯カメラ」の4種類
テスト期間・回数
・テスト期間は一か月。テスト回数は4-5回
テスト場所
・事務所近辺(第一回、第二回)
・関東の物流センター(第三回、第四回)
2-1.テスト前日まで
関係部署の根回しや合意形成を一層強化しました。また当初はデジタル関係者しかわからない用語を気づかずに使用して、調整が不調に終わったこともありました。
この会社で働き始めてようやく三か月。初見の知らない相手や物流センターに「テストさせてくれ」とお願いするのは「ひと工夫以上の工夫」が必要でした。
2-2. テスト開始
そしていよいよ現場でテスト開始。
まずはそもそも「きちんと分析データを取得できるか」からスタート
そして、実際に積載率判定を実施!
「おおっ、本当に飛んでいる」
テストに立ち会った現場の人も大興奮です。
しかし結果は、防犯カメラ、ドローンカメラが低い結果に。
これは、PCカメラを基準に測定をしたから当然といえば当然の結果なんですよね。
ただ、実際にテストするまではわからなかったです。
また、テスト三回目で「不良品を検知したら教えてくれる仕組みが欲しい」と現場から要望が出たため、「不良品を発見したらLINEで教えてくれる」仕組みを緊急実装。
3.周囲の反応
新しい技術への期待感から、どんなことができるか?実用化までどれぐらいかかりそうか?という質問が多かったです。
未来の話をするのは楽しいなぁ。
フィードバック(一部)
・画像解析でできることはかなり増えており、皆でアイデアを出し合ってほしい。前回は営業会議へ提出できなかったが時機を見て提出しましょう!(50代 執行役 上司)
・不良品検知機能をお願いしたら作ってくれてすごい!数年後にはドローンがすべてをやってくれてるかもしれない!でも、送られてくるLINEの意味が分かりづらいので修正してほしい(40代 倉庫作業リーダー)
・在庫の確認などまだまだ色々、試してほしいことがある。是非、今後もウチのセンターで実験を続けてほしい(50代 配送センター社員)
4.エヴァンジェリスト(伝道師)
そしてこの話、「ドローンが飛んで終了」の話ではありません。
この事実をどのように伝え、会社が変わるきっかけへつなげていけるか?
実はここからが本番です。
皆に興味を持ってもらうため、Filmoraという動画編集ソフトの無料機能を活用し「かっこいい」PV風の30秒動画を作成。
「画像解析」でなく「ドローン」を前面に打ち出したのも、動画を作ったのも皆に関心を持ってもらい、DXを成功させてもっとよい会社にするため。
いよいよ「伝道師」として「布教」開始です。
関係者フィードバック
・今回の知見は「勉強会」という形で共有していきたい。毎週1分ほどのミニマムな形で勉強会をできないだろうか(システム責任者)
・デジタルリテラシーを上げるためにこの内容を共有して、勉強会を開きたい。相談させてほしい(人事部担当者)
非関係者フィードバック
・そもそも動画っている?やりたい事ならパワーポイントで十分では?(データサイエンティスト)
・面白そうなことをやってる。最初は「ドローン」と聞いて結びつかなかったがようやくわかった(ECサイト運営担当者)
5.まとめ
この会社に来て三か月。全力疾走でした。
また、ここまでの取り組みで気づいたのは
・「多くの人は危機感を持っているがどうしてよいかわからない」
・「多くの人は最先端の設備と技術がそろう職場で働きたい」
・「多くの人は未来へつながる手ごたえを感じて働きたい」
という事でした。
技術的な事はあくまできっかけで、人の心をいかに変えていけるか?次はこの仕組みづくりへ挑戦するつもりです。
引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。
6.後日譚
最終テストがおわりお礼メールを書いたりしたところお世話になった現場の方からメールが。
内容
「不良品検知の文面がわかりにくいです。改修をお願いします」
ちょっと感動的なメールを期待していたのに現実はこんなもんだよなぁ、と思いつつ改修を実施しました。
以上