となり町戦争
主人公の男性(北原)の家に街からの広報が届き、
戦争宣言の記載を北原が目にする。
ほんとに小さく何気なくとなり町と戦争しますと書いてあるので、
北原は本当に戦争が起こるのかとあまり実感が持てずにいる。
という序盤。
役所の役員香西さんと偵察任務に向かうも、全く戦争の雰囲気を感じさせない。
普通の日常が流れている。
ただ、情報としてだけ、戦死者が報道される。
実感がない。
という全体の流れは、とても納得したし、現代(ちょっと前だが)の感覚を表していてこういうテーマなのだろうと思った。
役所の体質というか、個人の感情は無視され続け、ただ、書類やルールを守り、行動し続けていく役人たち。
何か大きなものに巻かれるというか、全く意思のない模様が苛立つ。
重要な事や、何故となり町と戦争事業として承認されたかなどの説明も何もなく、ただ、反対する人を黙らせ、登場人物達はボードゲームの駒のようになっているのではないかと北原は思う。
何か抵抗するという事をしないまま、ただ流れに沿って香西さんと任務をする。
香西さんは何故、北原と関係を持つのかもよくわからないし、結局、結ばれることはなかった(関係はもつが)。
香西さんが幻影のように消えていくという、北原の言葉は、その様になってしまった人たちが戦争の犠牲者なのかと。
偵察中に逃げる所は展開があって、読みやすかったけど、なんか、北原の香西さんに対する心理描写がうじうじしてて、嫌だった笑
終わり方がちょっとスッキリしなくて、そのまま終わってしまって、濁りがある。
戦争ってどういうものなのかというより、役所の仕事って機械的なんだなぁとか、意志を持たない人になってしまうのだなぁとかそっちの印象が強く残る小説だった。
となり町と戦争するという題材は斬新で面白いと思った。