ポリアモリー
わたしの両親は昔からとても変わり者だった。
それは一般常識的にという視点で捉えたらという意味でだ。
2人は出逢いからとても変わっていた。
当時、母には恋人がいて結婚を強く望んでいたが、相手はまだ結婚を望んでいなかった為、母は2人の関係性にとてもヤキモキしていた。
そんな母の目の前に突然現れた父。
いきなり母に結婚を申し込み、母も恋人をすぐに捨て、あっさり父との結婚を受け入れてしまったという、お付き合い期間ゼロの超電撃結婚スタイルだった。
母は自由奔放で友達も多く、とにかく自分の好きを優先させ大事にする人だった。
父は母とは正反対で、友達は一人も作らずに自分の世界を大事にし、とにかく自分の好きを貫き通す人だった。
自分の好きに従うという点ではよく似ていたが、それ以外は何から何まで違っていた。
まさしく水と油だった。
夫婦喧嘩は日常化していた。
それなのに家族に暗い雰囲気がなかったのは基本が明るい家族だったからだ。
特に母と姉は底抜けに明るくて、いつもいつも面白かった。
父はおとなしい人だったが、天然のユーモアでいつも笑わせてくれた。
それはお腹が痛くなるほど笑ってしまうようなミラクルな出来事が毎日のように起きていた。
たぶん陰と陽がうまく混在していたから、そういう意味でバランスのとれた家族だったのだと思う。
時を経て、今から20年くらい前に家族に大問題がおきた。
それは
母の浮気だ。
父が洗濯をする際に、母のズボンのポケットから証拠をみつけてしまったのだ。
どうやら三角関係だったみたいで、知らない女性から「あなたの奥さんは浮気してますよ。」と
告げ口のような電話もかかってきていたと父は悲しそうな顔をして教えてくれた。
本当なら修羅場になるはずなのに、その時の父は見て見ぬ振りをしたのだ。
「お母さんには感謝している。子供たちを産んでくれたから本当に感謝している。」とだけわたしに言って。
母を責めることもなく、問いただすこともせずに許したのだ。
わたしはそんな父から無償の愛を学んだ気がした。
その出来事からさらに15年くらいの月日が経ち、またまた家族に問題が起きた。
今度は父の浮気だ。
しかも隠さないのだ。
あたかも彼女がいるのは当然のように、デートの際も、何か彼女にプレゼントする際も、いちいち母やわたしに嬉しそうに報告してから出かけていた。
めちゃくちゃオープンな浮気だった。
母はそんな父を責めることも問いただすこともせずに、彼女がいることは当たり前のことのように接していた。
ある意味、母は父への愛が完全になくなっていることに振り切っていたからそういう態度ができたのかもしれないし、母には常に数人の恋人がいたから認めざるを得ないことだったのかもしれない。
そしてそれは、結婚状態を続けたままでお互いの好きな人を容認している、いわゆるポリアモリーのような状態が揉めることも一切なく、ごくごく自然にできあがっていたのだ。
過去のわたしはそんな二人を見て、はずかしいとか、自分はそんな風に絶対にならないってずっと思っていたけれど、魂レベルで物事を見られるようになった時に、どんなことでも好きを貫いて自由でいる二人の姿に尊敬しかなかった。そんな二人の生き方に共感しかなかった。
いま、わたしは自分の好きを貫いている。
私の好きな私がやることは好きなことでしかなくて。
それは
ただ
食べている。
景色を見ている。
話している。
会いたい人に会っている。
パートをしている。
ごくごく日常の小さなことだったりするのだが、なんでか楽しくて仕方がないのだ。
こうしてないと好きな私じゃないというカテゴリーは全くなくて、何をしてても何をやっててもとにかく楽しくてすぐに満ち足りてしまうのだ。
そして、そんな自分のことをどんどん好きになっていっている。
もしかしてこの性格は両親譲りなのか?
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