本屋さんのにおい
本屋さんに入ったときの
あたらしい本のにおいがすき。
小学生の頃は、暇さえあれば学校の図書室に通う少女だった。
江戸川乱歩の「少年探偵」や「名たんていカメラちゃん」などの探偵シリーズものがとくにすきでよく借りていた。
何か事件がおきて、謎が少しずつ解かれ最後の最後に意外な角度からの急展開や、大どんでん返しにハラハラドキドキドキしながら読んでいたのを覚えている。
そういえば、当時の週末の家族のお出かけは、近所の図書館と公園へ行くことが定番化していたし、母は日販でパートをしていたから、欲しい本はすぐに手に入る環境だったり、日販主催の児童図書フェアは毎年楽しみにしている恒例行事のひとつになっていたので、本は幼い頃から身近な存在だったように思う。
大人になってからも本はよく読んでいた。
小説やノンフィクション、精神世界の本など、気になるものがあるとすぐに手に入れては読んでいた。
絶版などで、どんなに探しても手に入らない本は図書館へ行ってまで読んでいた。
ところが、ある時、
とくに文字ばかりの本が読めなくなってしまったのだ。
占星術で有名なマドモアゼル愛さんの月の欠損の話を知ってからだった。
私の月の欠損は射手座が作用してて、それは「理解力がない」だった。
それを知ったとき、今まで張り詰めていた緊張の糸が切れたかのようにまるで本が読めなくなった。
読んでも全く頭に入ってきていないことに気がついたのだ。
欠損を知るまでは、頭で理解する世界に身を置くことが安心だと思い込んでいて、必死に虚勢を張って理解する世界に執着していたように思う。
頭で理解することが欠損だと知ったら、急に心が解放されて、本当の自由を感じたのだ。
家の本棚にたくさんあった難しそうな本はぜんぶ手放した。
月の引力からようやく解放された気がした。
まぁ、そんなこんなで、気になる本を買っても途中読みで終わってしまうから、よほど読みたいと思った本か、感覚で読める本しか買わなくなった。
それでも、本屋さんに行くと、あたらしい本のにおいには心底癒される。
表紙のデザインを見るのもとっても楽しくてすきだけど、本のにおいが一番すきだ。
茶色の紙袋のにおいもすきだから、紙のにおいに惹かれているだけなのかもしれないし、本好きな少女だった頃のわたしにタイムスリップできるからなのかもしれない。
とにかくすき
とってもすき
本を読むのは苦手だけど
本屋さんにひろがる
あたらしい本のにおいがすき