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PITINN 大友良英 4デイズ8連続コンサート を聞きました(27日昼の部)!

2024年12月27日(金)、ピットイン昼の部で、大友良英さん、須川崇志さん、石若駿さんのトリオを聴きました。

「ピットイン年末恒例4デイズ8連続コンサート Old and New Dreams」という壮大な8回のライブから、たった1回のみの参加、大友さんのプロジェクトの全容を聴くことができなかったことは残念ですが、ジャズの魅力と幅広さを感じることのできる、記憶に残る時間になりました。

Old and New Dreams

ピットインのHPに、大友さんはこんな風に記しておられました。

70年代後半、福島のジャズ喫茶で流れていた「Old and New Dreams」のことを当時の景色とともに最近よく思い出す。当時高校生だったオレはこれを聴きながらどんな未来を想像していたのかな。今は過去の集積かもしれないけど、未来への意志の塊でもある。「Old and New Dreams」にはそんな意味が込められているような気がしているけど、違うかな。
今年の8連続コンサートは「Old and New Dreams」がテーマ。と言ってもこのアルバムの音楽を素材にするわけではない。初日の26日と最終日の29日は今現在やっているレギュラーな活動を未来に向けて開く試み。27日はタイトルそのまま、過去と未来とが大きく繋がっている二つのセットをいずれも初顔合わせのトリオで。

http://pit-inn.com/artist_live_info/241227hiruotomo/

高校生だった大友さんが聴いていたという「Old and New Dreams」は、1976年にトランペットのドン・チェリー、テナーサックスのデューイ・レッドマン、ベースのチャーリー・ヘイデン、ドラムのエド・ブラックウェルにより結成された同名のカルテットによる曲。みなオーネット・コールマンのグループのメンバーでした。

70年代以降、フュージョンが主流となっていた時代に、オーネット・コ―ルマンのアコースティックなスタイルを再創造するこころみ、そして、コールマンのフリージャズの方法論を継承しつつも、アフリカ音楽を導入することで、アバンギャルドジャズをワールドミュージックの文脈へと位置付けたことでも知られています。

大友さんの演奏を聴きながら―2024の年末を無事に迎える

大友良英さんのトリオは、Old and New Dreamsらしい響きもありつつ、元祖のアコースティックサウンドを、エレキギターにより新しい世界へと拓いていくような演奏だと感じました。

ときに大友さんのギターからは、コールマンの "Lonely Woman"や アイラ―の"Spiritual Unity"の断片的なメロディーが聴こえてきます。とはいえ、メロディとノイズとを行き来するようなギターは、ジャズの伝統だけではなく、ウッドストックでのジミ・ヘンドリックスの「星条旗よ永遠なれ」をも彷彿させました。

ジミヘンのノイズがベトナム戦争の砲弾の音をメタフォリカルに表現していたということを考えながら、私は一人勝手に、大友さんのギターのなかに、紛争や戦争が同時並行するいまを思いました。

ギター、ベース、ドラムの3人がベースの弓を使ってそれぞれノイズを出していくのも、楽器の奏で方の常識を覆すようで面白かったです。楽器の奏で方に正解なんてないんだと、聴き手の常識の枠を揺るがす感じが、なんともフリージャズっぽい。

フリーインプロヴィゼーション(という表現であっているのかわからないのですが)、その場で奏者が互いの音を聴き合って即興演奏していくプロセスを生で聴けるところが、こういった演奏の醍醐味だと思います。

前もって予測できるコードやリズムがないので、聴き手は一瞬たりとも耳を離さずに聴くことになる。そういった独特の集中力と緊張感を要するところ、私は結構好きでした。なんというか、その一瞬に集中するがあまり、だんだんと余計な雑念が消えていって、没我というか、瞑想的な感覚になっていくというか。

フリーインプロヴィゼーションは、次の瞬間がどんな音になるかが分からない、即興がどこに行くかが分からないという、リスクとかヒヤヒヤと隣り合わせではあるけれど、大友さん、須川さん、石若さんのトリオに限っていえば、どんなに即興が深く遠くへ行っても、絶対に最後はみんなで戻ってこれるという、絶対なる安心感がありました。

3名の絶対的な演奏技巧の安定感に裏打ちされたフリージャズ。無事にコンクルージョンやクロージャ―を迎えることができるという感覚が、12月27日にふさわしい年末感、「ああ、今年ももうじき終わるんだ、いろいろあったけど、無事に終わるんだなー」という私の気持ちとぴったり呼応した瞬間でした。

ジャズって、どの時期に聴いてももちろん良いけれど、年末に聴くジャズも格別です。

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