僕と怖いおじさん(芋けんぴ達の独り言) 第40話 怖い顔のおじさんと女子大生(1)
#創作大賞2023
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第40話 怖い顔のおじさんと女子大生(1)
「ほら。こい。こいと言うちょぉろうが」と。
いつものように彼は、機嫌が良いのか?
それとも悪いのか?
わからない顔をしながら。
まあ、不愛想と言う顔でね、
それもさ、必死さがよくわかる顔をしながら。
自身の売り場──。
そう家の怖い顔のおじさんは、店舗からお借りした。
この販売ブースから。
自身の売り場の近くを通るお客様達に対して。
家の怖い顔のおじさんは、自身の大きく分厚い。
そう彼の、ごつごつとした手で握る食品トングで。
俺【紫芋けんぴ】を摘まみながら、手招きをし、声をかけ──。
お客様達を誘うのだ。
でもお客様達は、家の怖い顔のおじさんの顔を見て──。
『クスクス』と笑うか?
「おじさん、うちはえぇよ」
「おじさん、悪い。今日はいらんわぁ」
「また今度ね、おじさん」と。
家の怖い顔のおじさんが切なくなる言葉告げ、漏らし。
お客様達、各自各々が、家の怖い顔のおじさんへと。
『バイバイ』と手を振り──。
家の怖い顔のおじさんの視界から逃げるように去っていくら。
家の怖い顔のおじさんはね、今度は。
「ほら! ほら! こい! こっちにこい! えぇから、こいと言ぅちょぉるんじゃろぅが。これを食べたら目はよぅなるし。頭もよぅなる。それに女性は見肌にえぇから。美人になるけぇ。早ぅ。こいやぁ。今直ぐに。えぇ、からぁ~」と。
アントシアニンを多く含む、俺【紫芋けんぴ】を試食しろと。
家の怖い顔のおじさんは更に手招きを続けながら、お客様達を誘うから。
「仕方がないの。おじさんは……」と。
「もう、おじさんは。本当に致し方がない男性だね」と。
家の怖い顔のおじさんへと苦笑いを浮かべつつ。
何人かのお客様達は。
【芋かりんとう】の奴ではなく。
俺【紫芋けんぴ】をめがけて、Uターンをしてくれる。