僕と怖いおじさん(芋けんぴ達の独り言) 第45話 怖い顔のおじさんと女子大生(6)
#創作大賞2023
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第45話 怖い顔のおじさんと女子大生(6)
家の怖い顔のおじさんが、自身の販売ブース、売り場へと集う。
お客様達へと演説、説くようにヒラリ~と。
家の怖い顔のおじさんの、この顔にい合わないような、澄んだ高らかな声音で。
お客様達へとお釈迦様のように。
俺【紫芋けんぴ】が、目に良いとされている《《アントシアニン》》を多く含む食品だと説明。
それも家の怖い顔の俺【紫芋けんぴ】のことを褒め称える言葉と行為はね。
これだけでは終わらずに。
「それものぅ、お客さん達。この【紫芋けんぴ】の原料となっている紫芋に含まれるアントシアニンの量はのぅ。あのブルーベリーよりも多く含んじょぉるから身体にはえぇし。女性は美肌にもえぇから、今よりももっと美しゅなれるしのぉ。血圧にもえぇんじゃよ」とも。
家の怖い顔のおじさんが、俺【紫芋けんぴ】が入った袋をお客達へと魅せながら。
己の手振りを魅せつつ、ジェスチャーも加えながらお客様達へと説明をすれば。
「ほうか、ほうか」
「凄いな、紫芋」
「そんなに身体に良いのだね。この紫芋は……」と。
家の怖い顔のおじさんの、自身の顔に似合わないような笑みと。
お釈迦様のような尊い口調の演説染みたお話しを聴き──。
家の怖い顔のおじさんの周りにいるお客様達……老若男女問わず。
今のように。
『ほう、ほう』
『なるほど』
『凄いな』と頷く人達や。
自身の腕を組み、首肯をする人達も出れば。
「お前知っていたか?」と。
誰ともなく声を漏らせば。
「私は知らんわ」
「儂もしらん」
「うちも紫色した芋があること自体知らなかったわ」
「ああ、僕も、そんな種類のさつま芋があること自体知らなかったね」と。
まあ、何処にでもある。
ありふれた台詞が。
家の怖い顔のおじさんや俺【紫芋けんぴ】の耳へと聞こえくれば。
「私、以前テレビで見た事あるわ」
「ああ、うちは雑誌で見た事がある」
「僕はスマートフォンのSNSの中で見たことがあるね。大変に身体に良い野菜だからと……」
まあ、中には、この俺【紫芋けんぴ】の原料となっている紫芋の事を知っていると呟く人もいるし。
紫芋が大変に身体に良い野菜だと褒め称えてはくれるのだが。
「ただ、余り美味しくない野菜、芋だと記載しているのも見た事がある」と。
自身の頬をポリポリとかき、笑って誤魔化しながら呟くお客様達も多々いる。
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