僕と怖いおじさん(芋けんぴ達の独り言) 第54話 怖い顔のおじさんと女子大生(14)
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第48話 怖い顔のおじさんと女子大生(14)
晴れてこの俺【紫芋けんぴ】のマドンナ様へと襲名した眼鏡の姉ちゃんなのだが。
今でこそ家の怖い顔のおじさんへと気さくに。
「おじさん?」
「何じゃ、お姉さん?」
「これも試食して良い?」
「ああ、えぇぞぉっ! 今日は無礼講じゃから。好きなだけ食べて。気に入れば買うてくれぇ。まけちゃるぅけぇ」
「本当におじさん?」
「ああ、ほんとうじゃ。お姉さんは、儂好みの女性じゃけぇ、貴方好みでぇ~♪ まけちゃるわぁ」
「マジで本当に~?」
「ああ、本当じゃぁとも。まけちゃるぅ。まけちゃるぅ、けぇ。食え、食え。そして気が向けば買うてぇ~、くれぇ~」と。
家の怖い顔のおじさんがリズム良く奏で、歌うように告げる。
このイタイ姉ちゃん、ではなくて。
この眼鏡の麗しい女子大生の姉ちゃんは……。
俺【紫芋けんぴ】が思うに。
【ヲタク】だと思うぞ。
この眼鏡の姉ちゃんは。
まあ、そんな感じに見える眼鏡の女子大生の姉ちゃんも。
家の怖い顔のおじさん……。
顔は怖いが心は晴れ晴れして優しいおじさんにリズム良く。
自分の好みだから、好きなだけ試食をしていいぞ、と告げられ。
上機嫌となり。
「本当に~。やった~!」と。
自身の両腕を天空へと掲げながら歓喜──。
「おじさん大好き~!」と。
ノリ良く。
リズム良く。
テンポ良く。
家の怖い顔のおじさんへと告げるようになった。
だから家の怖い顔のおじさんも。
ケラケラと笑いつつ。
ノリ良く。
麗しい眼鏡の女子大生のお嬢様へと冗談を合わせで。
「ああ、儂も愛しちょぉるぞ。お姉さん。儂の嫁さんになってくれぇ~。わっ、はははっ」と。
家の怖い顔のおじさんが、笑い誤魔化しながら言えるぐらい。
彼女は気さくになってはいるけれど。
先程も俺【紫芋けんぴ】が説明をした通りで。
この眼鏡の女子大生のお嬢様のお連れ様達は。
このノリの良い眼鏡のお嬢さまが。
「……私食べてみたい」と呟き。
家の怖い顔のおじさんからの試食──。
そう、この俺【紫芋けんぴ】の試食をトング越しに。
あのしなやかな指先で受け取り。
俺【紫芋けんぴ】の試食を、自身の艶やかな唇を開き。
お口へとポン! ポイ! と放り込み。
ガリッ! と。
あの真っ白い前歯で噛み、折り。
ムシャ、ムシャする。